塩田さんは2002年とその12年後の14年の2度にわたって「大丈夫」の「本来とは異なる意味での使用法」についてアンケート調査を行っていた。

驚くことが2点ある。1つは今から15年も前の02年に、飲食店の従業員が客に「水のおかわりはいかがですか」と言うべきところを「水のおかわりは大丈夫ですか」と声がけするのがすでに相当程度進んでいたという事実だ(6割以上の人がその言い方はおかしいと返答)。

もう1つはその12年後である14年の調査では「大丈夫のその使い方」は「おかしい」という人の割合が5割を切ったということ。すなわち世の中の半分以上の人は「水のおかわり、大丈夫ですか」に違和感を抱かないということだった。

こういう世の中の実態を受けて、国語辞書も(俗)との断りを入れながらも「大丈夫」の用法拡大を受け入れつつある。「お皿をお下げしても大丈夫ですか?」という問いかけに「よろしい」「結構」と応じるパターンに加え、「レジ袋は大丈夫ですか(必要ですか)?」「大丈夫です(いりません、不要です)」というやりとりも載せて、「必要」「不必要」などを表す言葉としても「大丈夫」を認めるようになった。バリエーションや使用範囲はさらに拡大を続けていて、味のおいしい、まずいまでカバーしつつあるようだ。

肉をおごった部下に感想を聞き「大丈夫です」と言われショックを受けた上司や、いまだに喫茶店で「当店のコーヒー、大丈夫ですか?」と聞かれるたび、「店のコーヒー豆で病人でも出したのか?」と不安に駆られる私は単なる「時代遅れ」と言われても仕方のない時代が、とっくの昔に始まっていたらしい。

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ソフトな断り方にも使える「大丈夫」