「善処します」は要注意 トラブル起こすぼかし表現

「善処する」のようなあいまい表現は誤解やいさかいの種になりがち PIXTA
「善処する」のようなあいまい表現は誤解やいさかいの種になりがち PIXTA

私たちが日々発する言葉には、相手とのあつれきを避けたり、トラブルを防いだりするための「大人の物言い」ともいえるあいまいな表現があります。その代表格ともいえるのが、「善処します」でしょう。

 「善処します」とは、物事の状況に応じて適切に処理をすること。その場に適した正しい対処をするという意味です。前向きな印象を受ける人もいると思いますが、ビジネスシーンでは「何とか頑張ってみます」というようなニュアンスで、使われることが多いといえます。

  ビジネスシーンで生じた事態を収拾したり改善を求められたりしたときには、何らかの行動をとる必要が生じます。そんな場合に役立つのが「善処する」という言葉です。

 ただし、「前向きに検討する」という意味で使うだけでなく、「一旦保留する」という意味で使うこともありますから、「善処します」を使うときは、目先のことだけを考えず、将来を見据える必要があります。「善処します」で安易に保留するのではなく、また、その後の結果についてもしっかりと相手に報告しなければいけないのです。

「善処する」は意図を読み取りにくい

 しかし、「善処します」を時間稼ぎの逃げ口上にしているようなケースも見受けられます。そういう使い方をする人は「善処します」で相手を放置して、何のアクションも起こしませんから、「善処するといったのに返事がない」とか「礼儀知らずの奴だ」と、人間関係に亀裂が入る可能性も生まれます。

 「善処する」とは、物事の状況に応じて適切に処理をすることであり、このひと言で事が済むわけではないことを改めて認識したほうがいいですね。私の場合、「善処する」が相手から出たら「断られた」「脈がない」と受け取ります。百パーセントではありませんが、「善処する」の先、物事がうまく進んだためしがないからです。しかし、世の中には「善処するといってくれたのだから」と期待感を抱く人もいますから、このひと言には注意が必要ですね。

 用事を頼まれたり、指示や連絡を受けたときなどに「了解です」「了解しました」と返答することがあると思いますが、この表現は、相手を選びます。「了解」を目上の方に使うのは失礼と受け取られるおそれがあります。ですから、上司や取引先、お客様に対しては用いないのが賢明です。

 「了解しました」や「了解致しました」は、丁寧な表現のようにも見えますが、「かしこまりました」や「承りました」「承知しました」などと言うべきでしょう。言葉遣いは急には変えにくいものですから、普段からぞんざいではない言い方に慣れておきましょうね。

 親しい間柄だからと「了解!」「了解で~す」という人もいますが、ふざけた印象がありませんか? それに、ぶっきらぼうなイメージもありますよね。

「忙しい」「はっきり言って」は耳障り

 相手が不快になるとは気づかずに使っている「ひと言」も、想像以上に多いといえます。「最近、忙しくって」「休む暇がない」という趣旨の発言をする人がいますが、それは愚痴でも不満でもなく「頑張っているアピール」。いわば、自慢話です。そんなことを言われても、どう対応したらいいのか正直、困ってしまいます。

 私でしたら「それだけ人気者という証しでしょう」とか「その忙しさを私に分けてほしい」などと切り返しますが、発言が度重なれば、周りが見えていない人だと受け取り、距離を置いて付き合うようになります。「忙しい」が口ぐせの人は「頑張っているアピール」をする傾向にありますから、要注意です。

「はっきり言って」という割に、意味不明な物言いが多い PIXTA

 言いにくいことを切り出すときに、「はっきり言って……」というフレーズを使う人もいますが、意味不明なことが多いですね。「はっきり言って、厳しいです」「はっきり言って可能性ゼロです」などと、言われても何が言いにくいのかが分かりません。

 「はっきり言って……」が頻繁に出てくるのは耳障りに感じられます。大人の物言いでしたら「いいにくいことをあえて言う」というスタンスで「恐れ入りますが」「まことに恐縮ですが」「申し上げにくいのですが……」と、クッション言葉を前置きにして、何が言いにくいのかを明確にするほうが相手の理解も得やすくなるでしょう。

 たったひと言、されどひと言。ひと言で、相手の気分を良くも悪くも変えるのです。

 次回は「会話のきっかけは目の前にあふれている」です。うまく話しかけられないという人向けに、すぐ効くコツを解説します。お楽しみに!

「臼井流最高の話し方」は水曜更新です。次回は10月4日の予定です。

臼井由妃
ビジネス作家、エッセイスト、講演家、経営者。熱海市観光宣伝大使としても活動中。著作は60冊を超える。最新刊は「今日からできる最高の話し方」(PHP文庫) 公式サイト http://www.usuiyuki.com/
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