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「食品の利益ゼロでいい」 強烈な安さ、客呼ぶ目玉に ドン・キホーテ 布施晋太郎さん

2017/9/27

「MEGAドン・キホーテ立川店」(東京都立川市)の布施店長は、1日2回売り場を巡回する

 小売り各社の新店がもっとも苦労する固定客づくり。2016年2月に開業したドン・キホーテ(東京・目黒)のディスカウントストア(DS)「MEGAドン・キホーテ立川店」(東京都立川市)は客数が前年同月比2割増のペースで推移する。「求められている売り場作りに徹する」。こんな方針で成果を上げているのが店長の布施晋太郎さん(38)だ。

 ユニクロから転職した布施さんがドン・キホーテを選んだ理由は「自由な社風」。売り場担当者に仕入れや価格決定の権限が与えられている点に魅力を感じたという。06年に入社し、2カ月後には店長に抜てきされた。MEGAドンキ立川店は7店目の店長となる。

 布施さんは最低でも1日2回、売り場の巡回を日課とする。目的は売り場の担当者と話すだけではない。買い物客の様子を観察し、時には声もかける。「何が求められているのかを感じ取る」ためだ。店長として売り上げなどのデータのチェックは欠かさない。その上で「現場の肌感覚」を大事にする。

 オープンから2カ月が過ぎたころ、「客数が足りない」と感じるようになった。新店特需が一巡し、にぎわいに欠けた売り場。「もっと安いと思っていた」。巡回の際、こんな買い物客のつぶやきが聞こえてきた。

 「DSに求められるのは安さ」と痛感した布施さんは買い物頻度の高い食品で勝負に出た。

 開店当初の布施さんは値付けをする際、「近隣のスーパーを意識しすぎていた」という。競合店より安くしただけでは来店客が期待する安さとは開きがあった。「誰が見ても安いとわかる値段」と基準を変えた布施さんは例えば、相場高のために競合スーパーでは1玉300円のキャベツを1玉98円という破格の安値で販売した。

 強烈な安さが奏功し、17年2月の青果類の売上高は16年12月を3割上回った。小売店の売り上げは通常、日数の少ない2月に落ち込みやすく、年末年始向けの需要が膨らむ12月は最も伸びる。安さが販売数量を6割押し上げ、2月の売り上げが12月を上回るという常識外の結果につながった。

 ただ、安売りは利益を削る。店長として店全体での利益確保が求められる布施さんは「客数がもっとも多いエリアにもうかる商品を置いた」。1階の入り口を入ってすぐのところにある「驚安コーナー」には歯ブラシや制汗シートなど様々な商品が段ボール箱に大量に入っている。同様の段ボール箱が地下1階の食品売り場のレジ前にもずらりと並ぶ。

 この「驚安コーナー」こそが利益の源泉だ。扱う商品はメーカーや卸が出荷できずに抱えている在庫を安値で買い付けた「スポット品」。安売りしても、利益率はいい。商品分野にこだわらず、その時点で仕入れたスポット品を並べるため、売り場に日々の変化をもたらすことにもなる。

 「食品は利益ゼロでいい」と割り切り、まずは客数を増やす。スポット品のついで買いにつなげて、利益を確保。「店全体の利益が計画を上回った分はすべて食品に投資する」。布施さんが目指すのは「確固たる人気店になること」。徹底した安さの実現へ迷いはない。

(今井拓也)

[日経MJ2017年5月29日付]

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