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会話を気持ちよく続けるには、発言量が偏らないバランスが肝心 PIXTA

会話を気持ちよく続けるには、発言量が偏らないバランスが肝心 PIXTA

言葉のキャッチボールが円滑にできない人にしばしば出会います。よくあるケースは、こちらの投げたボールをうまく返せないというパターン。こちらに発言する余裕を与えないほど、話が止まらない人がいます。

たとえば、「最近、読んだ●●という本に感動した」と、私が発言したとしましょう。それに対して「私はまだ読んでいないけれど、臼井さんがそんなに感動する本なんて興味があるな」「臼井さんは読書家だね。毎月、何冊ぐらい読むの?」などと、1発言に対して1返答であれば、「ヒロインの生き方に感銘できるから」「30冊は読むと思う」などと、スムーズにこちらも気持ちよく言葉を返すことができます。

でも、「そんな本よりも、△△の方がいい。有名人もこぞって勧めているからね。それに、著者と僕は懇意なんだ。彼の出す本は軒並みベストセラーになっていて、仕事の依頼が切れない。断るのに大変だと言っていたよ。そうだ、臼井さんに今度彼を会わせよう。絶対会っていた方が得だよ……」という感じで5返答以上も畳みかけてくる人がいます。こちらが投げかけた話題を、自分に都合よくかすめ取って、自分の強みをアピールしたり、自分が語りたい話題にすり替えたりする人も結構いるものです。

私が投げたボールとは違う方向で話を展開したり、口をはさむ余地がないほど自慢や自己PRのような発言が続いたりしたら、その先も会話を続ける気持ちにはなりにくいでしょう。好ましいリズムで会話を重ねるうえで第一に求められる要素は「相手の投げたボールにふさわしい返答をする」です。仮に自分は興味を覚えないような内容であっても、「そうなんだ」「なるほど」と応じて、「あなたの話をきちんと聞いていますよ」という姿勢を示すことが大切です。

次に大切なのは、「相手の発言量と同じくらいの量を返す」です。たとえば、10秒話しかけられたら、10秒で収まる内容で返すこと。先の例のように返答量が格段に多いのは、相手をあきれさせるだけです。

会話相手の表情を曇らせてしまう「しゃべりすぎ」

話を始めると止まらないという人は意外なほど多いようです。人は基本的に聞くよりも話すことが好きであり、「話下手」を自認している人であっても、本当は自分から話をしたい、会話の主導権を握りたいと思っているのでしょう。だから、相手から話題を振られたら、「チャンス到来」と感じてしまい、悪気はなくても、自分が話したい事柄へとシフトしがちなのです。

必要以上に自説を展開したり、話の流れに合わない知識・知恵を披露したり。こんな振る舞いで相手を閉口させてしまう人は珍しくありません。そのこと自体がすべて悪いとは言いませんが、こちらの質問を反故(ほご)にして、延々と自分勝手な話をされたら、誰しも嫌気がさすでしょう。

1人がしゃべりすぎるときは、話題を変える必要が出てくる PIXTA

1人がしゃべりすぎるときは、話題を変える必要が出てくる PIXTA

相手が聞いてもいないことを話し出す段階で、会話の約束事は破られています。相手が発した直前の言葉を受け止めて、さらにつながりのある話題に広げていくのは会話の奥行きを深くします。でも、相手の発言を棚上げてしたり、テーマをすり替えたりしてしまうと、キャッチボールが成り立たなくなります。誰しもつい犯してしまいがちなルール違反ですから、普段から自分のしゃべりを第三者的な目でチェックしておきたいものです。

「そういえば」「ところで」「なるほど」で話題をスイッチ

「私はおしゃべりではないから、そんな振る舞いはしない」というあなたも振り返ってみましょう。得意な仕事や好きな趣味の話になると、おしゃべりになり、相手のことを忘れて夢中に語ってしまったことはありませんか? 日ごろから注意していないと、相手不在の会話をしかねません。まずは「1発言1返答」の基本からはずれないよう、あらためて心がけましょう。

会話が止まらない相手を不快にさせずに黙らせるテクニックも身につけておくといいですね。キーワードは「そういえば」「なるほど」「ところで」です。これらはいきなり、相手の会話をさえぎるように使うのではなく、軽く受け流しつつ、自然な形での方向転換を導くように使います。

「そんな本よりも、△△の方がいい」と言い出した先の例でいえば、「そうですか」と、とりあえず受け入れながら会話に入り込み、「そういえば最近、●●がブームですよね」と話題を変えるという使い方になります。もしくはさらりと「ところで、先日のパーテイーは楽しかったですね」と、共通の話題を振って、相手の会話の筋道を変えさせる手もあります。「なるほど」と相手の発言を一応は敬うポーズを示しながらも、「ところで先日の企画ですが……」と、相手の話題とは別のことを持ち出してもいいでしょう。

「そういえば」「なるほど」「ところで」というひと言が出れば、大概の人は「しゃべりすぎている自分」に気づきます。先方から「しゃべりすぎたみたいだね」「悪かった」というような言葉が出たら、「気にしないでくださいね。楽しかったです」「たくさんの情報をいただきましたから」とフォローすれば、相手との仲が気まずくなることはないでしょう。

おしゃべりさんは別に意地悪なわけではなく、知っていることは黙っていられないというだけのことです。でも、おしゃべりに付き合うにも限界がありますから、「そういえば」「なるほど」「ところで」を味方につけて、会話の流れを上手にコントロールしていきましょう。

次回は、こんなはずではなかった「誤解が生じやすいひと言」です。お楽しみに!

「臼井流最高の話し方」は水曜更新です。次回は9月27日の予定です。

臼井由妃
 ビジネス作家、エッセイスト、講演家、経営者。熱海市観光宣伝大使としても活動中。著作は60冊を超える。最新刊は「今日からできる最高の話し方」(PHP文庫) 公式サイト http://www.usuiyuki.com/

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