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臼井流最高の話し方

穏やかな話し方のコツ 3つの「り」で説得力増す

2017/8/30

穏やかに話してもらえると、相手も落ち着いて聞きやすい PIXTA

「この人ともっと一緒に話していたい」と思うのは、どんなときでしょうか。話題が豊富で飽きさせない、仕事に役立つ話をしてくれるといった、明確な理由がある場合はもちろんですが、「居心地が良い」「安心感を覚える」というように、理屈抜きにその人と時間を共有することがうれしいと感じる場合も少なくありません。

私は月に500人を超える人たちと新たに出会い、会話をしますが、その際、「もっと話がしたい」と思うかどうかの決め手は、話の中身ではありません。むしろ、相手の「話し方」に心を動かされることが多いのです。

極端な話ですが、相手への警戒心があると、物言いが高圧的になったり語気が強くなったりします。すると、相手はそのとげとげしい口調に張り合おうと、躍起になります。こちら側にそんな意図がなくても「けんか腰」だとか、「偉そうな人」と、受け取られる可能性があります。

ある講演会に参加した折のことです。「そんなことを口にしていいの?」と思えるような、講師の不用意なひと言で、その場に居合わせた聴衆の顔つきが険しくなりました。最後尾に座っていた私からは、聞き手の背中が「帰りたい」「(講演会に)参加しなければよかった」と言いたそうにすら見えました。

それまでどんなにためになる講演をしていたとしても、話し方を少し間違えただけで、「残念な人」「関わりたくない人」になってしまいかねません。ちなみに、講師のひと言とは「●●業界は使えない人材ばかり」でした。

講演中に異論を唱える人などいませんから、発言はさらにヒートアップ。「まともな●●に出会いたいものだ」とまで言い始める始末。不平不満のはけ口に使われているような気がして私は閉口しました。

誰しもこうした発言を耳にすれば「もっと話をしたい」とか、「お近づきになりたい」とは思わないでしょう。誤解を招かないためにも、話し方や言葉選びには細部に至るまで気を配りましょう。反対に、誰もが引き付けられるのは、「穏やかな話し方」です。

■穏やかに話せば、いさかいに発展しにくくなる

何かの拍子に相手が厳しい口調で居丈高な発言をしても、こちらは動じてはいけません。相手のペースに巻き込まれて、同じように語気を荒げてしまうと、人間関係は悪化するばかりです。落ち着いて対処しましょう。

相手のペースに乗らないで、穏やかに接するうちに、相手も少しずつ落ち着いてきて、「何とくだらないことに怒っているのだ」「自分だけ熱くなって恥ずかしい」と、独り相撲のような立場の自分に気づきます。だから、高圧的な相手にこそ穏やかに話すべきなのです。

もちろん、プライドを傷つけられるようなことを言われたら、黙っていることはありません。ただ、その場合でも穏やかに反論するのが得策です。ゆっくりと冷静に言葉を選ぶと、勢いに任せた言い過ぎを防ぐことができます。筋の通った、声を張り上げない反論は第三者の目にこちらの正しさと相手の理不尽さをはっきりと印象づけてくれます。

穏やかに話すための基本的な注意点は「ゆっくり、すっきり、はっきり」です。この3つの「り」が話しぶりに落ち着きや誠実さをもたらします。

まずは「ゆっくり」から意識しましょう。人は自分が思う以上に早口で話をしているものです。苦手な人や初対面の人などを前にすると、普段はゆとりを持って話をしている人でも、焦って余計なことや妙なことを口走りがちです。こういうときは大抵、早口になっています。

しゃべるペースが速いと、「おしゃべり」とか「こびる人」「うわべばかりの人」といった印象を与えやすくなります。相手が誰であっても、意識してゆっくり話をしましょう。

人前であがりやすい人は話を始める前に深呼吸し、口角を上げた笑顔を作る習慣をつけると、落ち着きを保てます。このツーステップだけでも、ゆとりや穏やかさを演出できます。

やわらかい語り口は議論の場でも共感を引き出す PIXTA

■話すテーマを絞って、しゃべりすぎを防ぐ

ゆっくり話すことが身についたら、次はすっきり話すことに意識を向けましょう。伝えたいことが10あったとしても、1つに絞るのです。「伝えたいことをすべて伝える」という姿勢では、言葉数が増えすぎて、相手に飽きられてしまいます。伝えたいことを伝えるのではなく、「伝えるべきこと」だけを伝えるつもりで優先順位を付けてテーマを絞りましょう。「もう少し話がしたかった」と、相手が物足りなさを抱くぐらいでいいのです。

余計なことは話さないというのも、話をすっきりまとめるポイントです。寡黙な人は信用されやすいものです。会話のところどころに適切な「間(ま)」を置くと、説得力が増します。相手の話の腰を折らないことも大切です。相手の言葉にじっくり耳を傾ける態度は余裕や包容力を感じさせます。

穏やかな話し方の仕上げは「はっきりと話す」です。その際に注意してほしいのが日本語特有のあいまいな表現です。「善処する」「視野に入れて」「考えておきます」「また今度」など、あいまいな表現はたくさんあります。

その場で明確に返答できないケースが多いのはよく分かりますが、あいまいな発言はその場しのぎにはなっても、ビジネスの場では相手をイラつかせるだけ損です。ビジネスのスピードが落ちる理由にもなります。

「分かりました」の「まし」あたりが聞き取りにくい感じで声を出す人がいます。肝心の部分がはっきりしていないと、「分かりませんでした」のか、「分かりました」のか、相手には区別がつきません。こうしたぼやけた発言は信頼感を損ないかねません。

しばしば誤解されがちですが、「はっきり」というのは「語気を強める」のとは違います。掛け声や号令、街頭演説のように声を張り上げたり、強いアクセントを重ねたりするのも、「はっきり」とは別物です。

大事な点は、「発声を明確にする」ということ。相手が聞き取りやすいクリアな響きを生むには、短めでシンプルな物言いが肝心。誤解を生じにくい言葉を優先するのも効果があります。穏やかな話し方は説得力を増し、味方を増やす効果が期待できるから、身につけて損はありません。

次回は、うそも方便。人間関係を円満にする「うそ」についてお話しします。お楽しみに!

「臼井流最高の話し方」は水曜更新です。次回は9月6日の予定です。

臼井由妃
ビジネス作家、エッセイスト、講演家、経営者。熱海市観光宣伝大使としても活動中。著作は60冊を超える。最新刊は「今日からできる最高の話し方」(PHP文庫) 公式サイト http://www.usuiyuki.com/

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