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日経実力病院調査

肝硬変、新薬でウイルス排除 合併症には内視鏡活用 実力病院調査

2017/8/28

肝硬変は文字通り肝臓が硬くなり、機能が低下する病気だ。悪化すれば、根本的な治療法は肝臓移植に限られる。日本経済新聞社が実施した実力病院調査では、肝炎ウイルスや合併症に対する新薬や内視鏡による手術などを活用し、地道に進行を食い止める取り組みが浮かび上がった。

今回の調査で内科的な治療を中心とする「手術なし」が113例、「手術あり」が222例でともに2位だった札幌厚生病院(札幌市)。髭修平副院長は「肝硬変の治療は総合力が問われるチーム戦だ」と強調する。肝硬変に至る肝障害には様々な原因があり、合併症も幅広い。患者に適した治療を選ぶことが重要になる。

■肝臓がんの原因に

食道静脈瘤の患者を内視鏡で検査(札幌市の札幌厚生病院)

肝硬変はウイルスの感染や酒の飲み過ぎなどで肝臓に慢性の炎症が続き、線維が増えて硬くなる病気だ。有毒成分の分解など肝臓の働きが損なわれるだけでなく、硬くなった肝臓に血が流れにくくなって体内の血流が変化し、様々な症状を引き起こす。悪化すれば肝臓がんの原因にもなる。

肝硬変の治療の第一歩は肝障害の原因を断つことにある。中でもウイルス性肝炎は近年、新しい抗ウイルス薬が相次いで登場し、進行を食い止められるようになってきた。札幌厚生病院の髭副院長は「薬の効果が劇的に上がり、予後も改善している」と語る。

同病院ではC型肝炎に「ハーボニー」「ソバルディ」などの新薬を用い、肝炎ウイルスを排除できる奏効率が95%程度まで高まった。インターフェロンの投与を中心とする従来の治療法に比べて副作用が小さいため、70歳代以上の高齢患者でも治療しやすくなったという。B型肝炎ではウイルスの増殖を抑える薬を活用している。

肝硬変の合併症では食道や胃の静脈が太くなり、静脈瘤(りゅう)というこぶができることが多い。静脈瘤が破れると出血による死亡のリスクも高まる。同病院では内視鏡で静脈瘤に硬化剤を注入し、血流を遮断する「硬化療法」を2016年だけで400件ほど実施。最近では食道や胃のほか、直腸の静脈瘤を硬化療法で治すことも多くなっているという。

今回の調査で「手術あり」が246例と1位だった飯塚病院(福岡県飯塚市)も食道や胃の静脈瘤など合併症の対症療法を多く手掛ける。静脈瘤は通常3~4本あり、2~3回に分けて入院して治療するという。肝臓内科の本村健太部長は「アルコール性肝硬変の患者は太い食道静脈瘤ができやすい」と話す。

■腹水には新療法

肝硬変が進行すると、腹の中に水がたまる腹水という症状が現れる。当初は利尿剤で水を尿として体外に出す治療をする。しかし、利尿剤が効かなくなり、水がたまりっぱなしになる「難治性腹水」という状態になる人も多い。

腹水は針で抜くことができるが、繰り返すと血液中のアルブミンなどのたんぱく質が腹水を経由して体外に失われ、体はみるみる弱っていく。飯塚病院では抜いた腹水から水分や塩分などを取り除き、たんぱく質を濃縮し点滴で患者に戻す「腹水ろ過濃縮再静注法(CART)」に積極的に取り組んでいる。抗ウイルス薬や禁酒で肝機能が回復すれば、こうした療法で治ることもあるという。

今回の調査で「手術なし」が105例で3位の東京女子医大病院(東京・新宿)では合併症の治療に新薬を積極的に導入している。

腹水に対しては「トルバプタン」という新型の利尿剤を活用。従来の利尿剤と異なり、水だけの排出を促して体内の電解質(イオン)のバランスを変えにくく、腎機能の悪化も招きにくいという。アンモニアなどの有毒成分が血中に増えることで意識障害などが起こる肝性脳症にも抗生物質が新薬として登場している。

また、静脈瘤の治療では内視鏡に加え、カテーテルを用いる「B―RTO」という手法を得意とする。バルーンカテーテルを胃の静脈へと挿入し、静脈瘤に硬化剤を注入する。

同病院では内科や外科が一体となった消化器病センターを設けている。内科の徳重克年教授は「内科医と外科医がスムーズに連携し、積極的に協力できる」と説明する。肝硬変の治療で最終手段となる肝臓移植は年15~20例ほど実施している。徳重教授は「肝硬変患者の予後は年々良くなっており、決して治療を諦めないことが大事だ」と話す。

■非アルコール性、増加傾向

肝炎が慢性化して起こる肝硬変。抗ウイルス薬の進歩により、C型やB型の肝炎ウイルスによるウイルス性肝硬変が大きく減る一方、食べ過ぎ、運動不足などが原因の非アルコール性肝硬変は増える傾向にある。

札幌厚生病院では1990年代はウイルス性が8割前後を占めたが、今では5割程度まで減った。

非ウイルス性肝硬変は中性脂肪が肝臓にたまる脂肪肝から肝炎に至り、発症するものが多い。脂肪肝から肝硬変や肝臓がんまで進む人は一部だが、国内の成人の3人に1人が脂肪肝を患っているとの推定もある。

特に近年心配されているのは酒を飲まない人でも起こる「非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)」だ。東京女子医大病院の徳重教授は「治療が必要なNASHの患者をどう見つけ出すかが課題」と話す。腹に針を刺して肝臓の一部を取り出す肝生検ならば状態を確実に知ることができるが、患者の負担が大きい。

ウイルス性ならば抗ウイルス薬、アルコール性ならば禁酒と、肝炎の原因を断つ手段がある。だがNASHは食事や運動習慣の改善などの方法はあるが、なかなか効果が表れにくい。現状、NASHには効果的な薬もない。製薬企業や大学などはNASHの治療薬や患者の負担が軽い検査法の開発に力を入れている。

調査の概要 調査は、症例数(診療実績)、医療の質や患者サービス(運営体制)、医療従事者の配置や医療機器などの設備(施設体制)の3つの視点で、病院選びの際に参考となる情報を、日経リサーチに依頼してインターネット上の公開データから抽出して実施した。
診療実績 厚生労働省が2017年2月に公開した15年4月~16年3月の退院患者数を症例数とした。対象は病名や手術方式で医療費を定額とするDPC制度を導入した1667病院のほか、導入準備中などを含め計3191病院。症例数の後の*は0~9例の誤差あり。「-」は0~9例。
運営体制 公益財団法人「日本医療機能評価機構」(東京)が病院の依頼で医療の質や安全管理、患者サービスなどの項目を審査した結果を100点満点で換算。点数の後に*があるのは13年4月以降の評価方法「3rdG」で審査された病院で、各項目をS=4点、A=3点、B=2点、C=1点として合算、100点満点に換算した。
施設体制 医療従事者の配置や医療機器などについて、厚労省が定めた診療報酬施設基準を満たしたとして各病院が届け出た項目を比べた。16年10~12月時点での届出受理医療機関名簿を集計した。

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