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九州旅客鉄道(JR九州)の唐池恒二(からいけ・こうじ)会長の「仕事人秘録」。第1回は柔道に明け暮れた京都大学時代について語ります。

――柔道一直線の青春時代だった。

大阪府立三国丘高校で柔道に目覚め、浪人時代も予備校には行かずに昼は後輩の練習に付き合っていました。京都大学に入学してもすぐに柔道部に入部。柔道経験者としてアメリカンフットボール部から下宿先に何度も勧誘が来ましたがこう断りました。「2つの遅刻ですよ」。4年前に柔道の道に進んだうえ、10日も前に大学で柔道部に入ると決めていましたから。

入部後すぐに大きな失敗をしました。10日目に新人戦がありました。その前日に高校の同窓会で深夜1時まで柔道着を持ち、何軒もはしご酒。酒のにおいをぷんぷん漂わせながら試合に挑みましたが、もうろうとして払巻込(はらいまきこみ)をかけられた際に脱臼してしまいました。

畳にあおむけになった私は審判に「気分が悪いんです」と水を頼みました。二日酔いがひどかったからですが、頭を強く打ったのかと心配されましたね。それで複雑脱臼で手術して1年を棒に振りました。実質的な練習は2年半だけ。京大伝統の寝技も覚えずじまい。「試合前に酒を飲むな」と「寝技を身につけろ」は後輩にささげた教訓です。

大学4年生の時に主将。同期は猛者ぞろいで何も言わなくても練習に打ち込むので楽でした。旧帝大が集まる大会で3連覇を達成。全日本学生柔道選手権大会では関西の代表として挑み、早稲田大に勝ちました。翌日の全国紙に「京大、早稲田大を下す」の見出し。全国でも強豪だった早大は悔しかったでしょうね。

――柔道が縁で国鉄へのレールが敷かれる。

大学時代は柔道に打ち込んだ(中央左が本人)

大学時代は柔道に打ち込んだ(中央左が本人)

大学4年の夏まで柔道三昧でした。就職活動を一切していなかった時に、国鉄にいた柔道部の先輩から来ないかと誘われました。大阪鉄道管理局の人事課長に会ってこいと言われたので伺うと、丁寧に説明してくれました。国鉄は財政破綻の状況で誰も希望者がいなかったからでしょう。

大学最後の大会は北海道でした。宿舎として道警の寮を借りていたら、ギョーザ300人前が届きました。その先輩の同期がたまたま道警に出向していて、差し入れてくれたのでした。借りができたなと、そのまま就職活動をせずに入社を決めてしまいました。国鉄は公務員に似た採用制度だったので、就任したばかりの国鉄の高木文雄総裁が風土を変えるために、学歴だけでなくスポーツなど部活経験者を優先して採る方針にしたことにも恵まれました。同期であるJR東海(東海旅客鉄道)の柘植(康英)社長は東大の応援部ですから。

部活経験者は当時の採用の目玉でした。それだけに、入社式の集合時刻に遅れそうになって駆け込むと、即座にテレビや新聞のカメラに囲まれ、まばゆいばかりのフラッシュの嵐に包まれました。丸刈りでしたから絵になりやすかったんでしょう。読売新聞には「柔道部の主将、国鉄に入社。赤字を立て直せるか」の見出しが躍りました。

唐池恒二
 九州旅客鉄道(JR九州)会長。1953年生まれ。77年京大法卒、日本国有鉄道入社。87年、国鉄分割民営化に伴い九州旅客鉄道(JR九州)へ。2009年社長。14年から現職。大阪府出身。
[日経産業新聞2016年4月13日付]

仕事人秘録セレクションは金曜更新です。次回は2017年9月8日の予定です。

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