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つながる農で、おいしい野菜 土から始めた小諸の挑戦

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NIKKEI STYLE

軽井沢や嬬恋に近い高原の城下町、長野県小諸市。新幹線、高速道路を通じた都心とのアクセスは良好で、夏には多くの観光客が避暑に訪れる。そんな小諸で農業活性化のための新たな取り組みが始まった。

とれたて野菜をすぐ調理

軽井沢町から小諸市を経て、上田市までを結ぶ浅間山麓広域農道は、市街地よりも高い高原地帯を走ることから眺めが良く「浅間サンライン」と呼ばれ、観光客にも人気が高い。そんな通り沿いに建つ、しゃれたカフェ風の店が「自然の恵みそばと、カフェ 凱(とき)」だ。

「信州の四季菜を食す、そばカフェ。」のキャッチフレーズ通り、同店の自慢は店の畑でとれる季節の野菜とそばだ。普段は11時半からの営業だが、今回は特別に、農家の日常的な朝食を作っていただいた。

まずは、畑を案内していただく。農業用ではなく、料理素材を調達するための、見るからに「自家菜園」だ。限られた畑で様々な野菜を育てる。

今の季節ならナスやトマト、オクラなど夏野菜が並ぶ。産直野菜を売り物にする直売所が人気だが、店頭に並ぶことすらなく畑からキッチンへと直行するのだから、この上ない鮮度の良さだ。

ご飯と味噌汁に添えられるおかずは、ナスの南蛮味噌、キュウリのぬか漬け、オクラ入りの納豆、ポテトサラダ、そしてベーコンエッグだ。

朝の和定食というと卵料理に加えて、アジの干物か塩鮭かなにかがほしいところだが、旬の夏野菜があれば、魚は不要だ。特にナスの南蛮味噌。地元ではよくある味付けという、南蛮、つまりトウガラシが加えられたナスはしっかりと辛みがあり、これだけでもじゅうぶんにご飯が進む。

そして、本来は捨ててしまう、奈良漬けに付いていた酒粕をぬかみそに入れたというぬか漬けは、まるでうまみ調味料を加えたかのような味の豊かさだ。

卵を除くと「一汁四菜」のメニューは、肉や魚がなくても、ごちそう感満載だ。サラダには適度な油が使われていて、コクもある。

ナスの南蛮味噌に、これまた味にパンチのある納豆も加わり、久々に朝からご飯をおかわりしてしまったほどだ。

皮ごと食べるリンゴ

いったん店を離れ、自家菜園ではない、本格的な農園を見に行く。最初に訪れたのは、リンゴを手がける松澤農園だ。

昭和初期、世界恐慌で養蚕が衰退する中で、小諸の桑畑をリンゴ園に転換することからその歴史はスタートした。収穫までに10年はかかるというリンゴを辛抱強く育てた初代農園主が初めて出荷に至ったとき「大地への感謝の思い」を強く抱いたという。それは2代目にも受け継がれていった。

しかし、時代は戦後の経済成長期。周囲では化学肥料を使った高効率のリンゴづくりが広がっていく。そんな中で2代目が取り組んだのは「自然に逆らわず、自然とともに」育む農法だ。

剪定(せんてい)した枝は細かく粉砕して土に戻す。鳥につつかれてしまった実も同様だ。地面にはテングサやカキの貝殻を撒いたり、ワラを敷いたり…。農薬を減らし、化学肥料や除草剤は使わない。それによって土の中の微生物が活性化、リンゴの木も自ら積極的に栄養分を吸収しようと根を広く張り巡らしていく。

そうしてできあがったリンゴ園では安定しておいしいリンゴが育つようになったという。

自然の力を取り入れた農法だけに、同園のパンフレットには「皮ごと食べてください。」の文字が躍る。子どものころ、リンゴの皮の食感を知り、まるごとかぶりつくことを覚えると、母に「危ないから皮をむきなさい」とたしなめられたのを思い出した。

残留農薬を懸念してのことだ。

松澤農園の「皮ごと食べてください。」は「安心」「安全」への自信の裏返しでもある。

自然の力を生かす考え方は、リンゴジュースにも生かされていた。「アップルファイバー入りりんごオリジナルジュース」は絞りかすである皮や果肉を乾燥・微粉末化してジュースに戻している。飲みやすさはそのままに、食物繊維を摂取しやすくする工夫だ。

つながる農~「土づくり」から「人づくり」へ

小諸市では、ほかの地域にはない特色を確立することで、農業と地域の活性化をめざす取り組み「小諸アグリシフト・プロジェクト」をスタートさせた。

プロジェクトのキャッチフレーズは「『つくる農』から『つながる農』へ」。

始まりは農作物の直販だった。消費者から直接「おいしかった」と言われることに喜びを覚え、農家自身も野菜に自分の顔写真を張るなど、消費者とのつながりを意識し始めたという。

「作りっぱなし売りっぱなし」の一方的な農業ではなく、農家同士、農家と消費者がつながることで、より付加価値の高い農作物を提供できるはず。小諸で末永く農業を続けていくためには、そうした積極的な「ファン」作りが重要、と考えたという。

プロジェクトのテーマは、まず「元気な生命をつなぐ」から始まる。

土壌の中の微生物が活性化することで、作物が元気になり、それを食べる人も元気になれる…。2018年度を目標に、土づくりの「小諸基準」を設け、農業のブランド化を進める。

「農家の思いをつなぐ」。とれたての食材をベースにした料理レシピを提案。農家の思いとともに消費者に味わってもらう。

そして「農が持つ力をつなぐ」。就農や農作業体験で、小諸の農の魅力を身をもって知ってもらう。

各農家が定期的に集まって戦略を練り、10年後には小諸を「地元野菜を食べて元気な、顔なじみのファンたちが集う賑やかなまちにしよう」という計画だ。

そんな「つながる農」をすでに実践している農家もある。農業法人のアマリファームを訪ねた。

化学肥料や農薬などを多用して生産効率を高める農法から脱却、牛や豚・鶏のふん、食べ残し、竹炭、コーヒー豆の皮なとに腐葉土を加えた堆肥で野菜作りに取り組む。

生産効率を高める農法は、一方で土壌を疲弊させる。「畑を次世代につないでいくのも我々の役割」と甘利崇雄社長は語る。

そんな言葉にも表れているように、取り組みは、おいしい野菜づくりにとどまらない。経営も刷新。農業法人を設立して、社員とともに農作業に取り組む。

「雇用を守る」という考え方から「お天気次第、相場次第」の農業から「受注生産」の契約栽培と自らリスクをとる野菜作りとをバランス良く組み合わせることで、経営の安定化と収益向上の「二兎」を追う。社員には開業コストのかかる独立よりも、法人の傘下で経営を委ねる「グループ会社化」を進める。

農家の高齢化と後継者不足で手が回らなくなった畑を引き受けては、若い社員たちに任せている。かつては「家業を手伝わされる」ことに反発し、農業から離れていった人たちが多くなった反省もふまえ、前向きに農業に取り組める環境作りを心がけているという。

社員には「ぜひ農業で家を建ててほしい」と語る甘利社長の言葉には「土づくり」だけでなく「人づくり」も垣間見えた。

和風出しのトマトソースでそばを食べる

アマリファームを後にし、再び「自然の恵みそばと、カフェ 凱」へ。昼食は、同店の看板メニューであり、長野県を代表する味でもあるそばだ。

いただいたのは「夏の『凱』Tokiそば」。同店人気のオリジナルメニューの夏バージョンだ。

ざるそばには、そばつゆの他に、和風出しをベースにした冷たいトマトソースが付く。そばつゆの要領で、そばを浸して食べる。しっかりとした出しの味とトマトの酸味が、意外なコンビネーションを発揮する。キュウリやオクラは、トマトソースにはいい「薬味」になる。

店の片隅には、夏野菜のサラダバー。ゆでたトウモロコシとキュウリが食べ放題だ。朝食のご飯おかわりからさほど時間がたっていなかったが、今が旬の夏野菜。食べ逃せない。

従来の「そば屋」のスタイルにとらわれず、それでいて、そばや野菜などの食材をどうおいしく提供するかには真正面からこだわる。これもまた小諸ならではのスタイルなのだろう。

お腹いっぱいで店を出れば、店のリヤカーにはとれたての野菜が。備え付けの料金箱に100円玉を入れ、朝の味を思い出しながらナスの袋を手にした。

わずか半日にして、すっかり小諸の野菜のとりこになった。

「小諸アグリシフト・プロジェクト」はまだ始まったばかり。小諸の野菜がさらにおいしくなることに期待したい。

(渡辺智哉)

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