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安く見せるだけじゃない 値札に「99円」が多い理由

2017/8/10

米国で「99セント」式の値付けが広がった背景には、機械式レジの登場があったという PIXTA

 コンサルティングファームに所属する経営コンサルタントと、クライアント企業に所属する優秀な社員。常識で考えれば、その業界に精通し知識や経験が豊富なクライアント企業の方が、よりよい戦略をより早く立案できるはずです。

 ところが実際には、よく訓練されたコンサルタントは、クライアント企業の社員よりもずっと早く、しかもポイントを押さえた戦略を立案することができます。

 このように外部のコンサルタントが、驚くほど早く戦略を立案できる背景には「仮説思考」という方法論が役立っています。

 コンサルタントがたとえば半年かけてクライアント企業の事業戦略を構築するプロジェクトを請け負ったとすると、まずその初日に最終提言、つまりプロジェクトの答えを議論して決めます。

 ただし、決めるといっても仮決めです。

 「このクライアントを取り巻く最大の課題はナニナニにあって、それを克服し成長するためのドライバーはコレコレのはずだ。だからそのコレコレに経営資源を集中する戦略が、クライアントに最大の成長をもたらすはずだ」というような仮説を初日に立てるのです。

 そしてその後の作業でも、半年間という限られた期間ですべての問題や課題を洗い出すことはせず、仮説を軸にそれが正しいのかそうではないのかを集中して検証していくのです。

■よい仮説を立てる能力が重要

 このクライアントにとって最大の課題は本当にナニナニなのか?

 それを克服するためのドライバーは本当にコレコレなのか?

 そこに経営資源を集中することが本当に正しいのか?

 「一番重要な論点は何か」ということを最初に議論して、そこから順番に本当にそうかどうかをつぶしていく。

 これが仮説思考で、このようなアプローチを採るからこそ、コンサルタントは普通のビジネスマンよりもより早く問題解決や戦略立案の答えにたどり着くことができるのです。

 この「仮説思考」では、よい仮説を立てられるかどうかの能力が重要になります。

 そこで今回は、よい仮説を立てる訓練になるような問題を選んでみました。いったいなぜそんなことが起きているのだろう? それを考えるにあたっては、より発想を飛躍させ、より常識を取り払った思考をしなければ正解にたどり着けない。やや難易度の高い問題です。

 その前提で、問題に取り組む際には、可能性をいろいろと考えながら取り組んでみてください。

 正解にたどり着くことができたか? 正解に近い発想に考えが及んでいたか? そのような問題数が多い方ほど、仮説思考の能力が高い人だといえるはずです。

■レジ導入と「99セント」価格の因果関係とは

問題
 スーパーの価格は298円とか399円というような価格設定になっています。値札が300円だと顧客はそのまま300円だと思うけれど、298円だと顧客は200円と勘違いして買っていくからだと一般的には言われています。実はこのような価格設定が広がったのは19世紀終わりのアメリカで、最初の導入の理由はそれとは違う理由でした。この時代、小売店にはレジが導入され始めた時代だったのですが、アメリカで2ドル99セントといった価格設定が広がった最初の理由は何だったのでしょうか?

【ヒント】
レジが導入される前と後で、小売店で何が変わったのか、仮説をたくさん立ててみてください。

・正解 店員が売り上げをポケットに入れるのを防ぐため

 レジが発明されたおかげで、お店のオーナーは1日中お店にいなくても自動的にその日の売り上げがいくらかがわかるようになりました。そして1日の終わりにレジの中にいくらお金が残っているかも。ですからレジの発明をきっかけに、お店を店員に任せるオーナーが増えたのです。

 ところが、レジには一つだけ弱点があります。店員が売り上げをレジに打ち込まずにポケットに入れてしまってもお店にはそれを把握できないのです。そこで商品の価格を3ドルではなく2ドル99セントにする方法が発明されました。この値づけなら1セントおつりが必要になります。おつりを渡すためにレジを開ける必要が出てきますから、店員が自分で売り上げをポケットに入れるのが少しだけだけど難しくなったのです。

▼レジ導入前後で「誰にとってどのような変化が起きたのか?」を考えることができましたか? オーナーの利害に思い至ることができた人は合格です。

[「日経Bizアカデミー」で2013年10月11日に公開した記事を転載]

「戦略思考トレーニング」は木曜更新です。

鈴木貴博
 百年コンサルティング代表取締役。東京大学工学部物理工学科卒。ボストンコンサルティンググループ、ネットイヤーグループを経て2003年に独立。持ち前の分析力と洞察力を武器に企業間の複雑な競争原理を解明する競争戦略の専門家として活躍。

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