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自信がなくて、1人で決めかねるケースは珍しくない PIXTA

自信がなくて、1人で決めかねるケースは珍しくない PIXTA

「決断」という行為はビジネスシーンでは避けて通れません。言葉だけ見ると、「決断」は大げさに思えるかもしれませんが、上司に意見を求めるタイミングを図るような、ささいな行動も一種の決断です。ビジネス上のトラブルや交渉で相手方と合意するか、そのまま決裂させるか。もちろん、そうした大きな決断もあります。ビジネスに携わる以上、「決断」から逃げては仕事にならないのです。

そうはいっても、あなたは決断できなかったことで、後悔した経験はないでしょうか? 今でこそ「決断力」というテーマを人前で語る私ですが、病身の夫に代わって33歳で経営者になるまで、幼いころから割と優柔不断な人間でした。自分が下した「決断」が正しいのかどうかに自信が持てず、万事において、すぐに行動をとることができなかったのです。

しかし、経営者として「決断せざるを得ない」という場面に追い込まれ、失敗や成功を経験し、反省と分析を繰り返すうち、自分なりの方法論を身につけました。みなさんにまず知ってほしいのは、「決断はタイミングが肝心」ということです。

決断に迷った場合、先延ばしにしてしまうことがあります。「いずれ」「そのうち」「折りをみて」と、先送りしてしまうと、その場は気が楽になります。決断につきものの「変化」がない状態でいられるのですから、心の安定は保たれます。

でも、ビジネス社会で生き残るには、変化に対応していかなければいけません。しかも素早くです。「経営環境の悪化」や、「社内の人間関係のあつれき」などは兆しが見えたならば、すぐに手を打たないと、傷口は広がる一方です。決断を避け、現状維持を続けていては、会社の将来やあなたの未来は危うくなるでしょう。

自信を持てない人が「決断力」を高めるには

「私は先延ばしなんてしない」と、胸を張る人にも考えてほしいことがあります。たとえば、必要な情報や条件が与えているのに、「検討させていただきます」「善処いたします」などと、お茶を濁すことがありませんか? 「検討する」「善処する」という言葉を使わないように努めるだけでも、あなたの決断力は高まります。

失敗を恐れて決断できない人もいれば、自信がなくて決断できない人、内心ではほぼ決断できているのに、最善の策が見つかるまで決められないという人もいます。最も多いのは、自信がなくて決断できないという人でしょう。私もその一人でした。

「自分の決断が間違っているのではないか?」「今は決断を下すタイミングではないのかもしれない?」と考えがちでした。マイナス思考でくよくよ悩み、決断のタイミングを逸してしまったあげく、「あの瞬間に決断していたら、こんな事態にはならなかったのに」と後悔したのは一度や二度では、ありません。

自信がないのは、「自己評価が低い」からです。そんな人でも劇的に変身できる方法があります。それは、あたかも自信があるように行動してみるということです。全く自信がなくても構わないから、そう振る舞ってみましょう。人の心と体はつながっていて、一貫して動こうとする傾向がありますから、それを利用して、体の動きを先行させ、心をコントロールするのです。

たとえば悔しくてやりきれないときには、小躍りしながら「やった! うれしい」と笑顔で叫ぶ。失敗続きでめげているときには、拳を振り上げながら「私はできる人、私には自信がある!」と声にする。やる気が起きないときには、拍手しながら「私の決断は正しい!」と宣言する。一見、思い上がった不遜な態度のようにも思える、こういった振る舞いを繰り返しているうちに、次第に体の底からやる気がわいてきて、自信を持って決断できるようになります。

選択肢が多すぎると、かえって決断を鈍らせてしまう PIXTA

選択肢が多すぎると、かえって決断を鈍らせてしまう PIXTA

多すぎる選択肢を絞り込む「3ステップ」

誰しも、選択肢が多すぎると、決断が難しくなります。たとえば、エアコンを買い替えようと、家電量販店を訪れたとしましょう。売り場には有名家電メーカーのエアコンがたくさん並んでいます。あらかじめ予算を決め、店を訪れたとしても、その範囲で選べるものが、10機種以上もあったら、どうでしょうか?

店員に各商品の特徴を尋ねたり、自分のライフスタイルを話したりしながら、購入すべきエアコンを選ぶ、つまり「選択肢のふるいにかける」ということになると思います。その場合、選択の基準は「はじめは大胆に、次第に繊細に、最後は直感勝負」という流れが好ましいでしょう。

エアコンのケースでいえば、部屋の広さや必要な機能といった大まかな条件に照らして絞り込み、10機種が半分の5機種程度になったら、「さわやかな本体色がいい」「アフターケアが行き届いている」など、さらに細部の違いを比較して3つに絞る。そして、3つに絞れたら、最後は主観的な「好み」で1台に決める。こういう段階を踏んで絞り込めば、後悔を避けやすくなるでしょう。

最後の選択で大事なのは、「これだ!」と直感を働かせて選び、いったん決めたら、後戻りをしないことです。いつまでも未練を残していると、自分の決断を疑い始めてしまうので、引きずらないようにしましょう。「はじめは大胆に、次第に繊細に、最後は直感勝負」。これは決断力を磨くうえで生かしてほしい考え方です。

決断できなかったことでする後悔のほうが、決断して失敗した後悔よりもはるかに大きいと経験上、感じられます。決断して失敗しても「経験」という宝物を得ることができるのですから、「決断」を渋るのは損です。

次回は、人間関係を豊かにする「相手を許す話し方」です。お楽しみに!

「臼井流最高の話し方」は水曜更新です。次回は8月16日の予定です。

臼井由妃
 ビジネス作家、エッセイスト、講演家、経営者。熱海市観光宣伝大使としても活動中。著作は60冊を超える。最新刊は「今日からできる最高の話し方」(PHP文庫)
 公式サイト http://www.usuiyuki.com/

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