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数字をきっかけにした議論は意識がぶれにくい PIXTA

数字をきっかけにした議論は意識がぶれにくい PIXTA

ビジネスの現場は数字であふれています。会社の業績、給与、営業企画、目標設定、進捗状況など、ビジネスの現場は数字が基本になっています。「数字は苦手」という人もいますが、誰もがそれらの数字を意識しながら、仕事をしているのです。

そして、「数字に強くなる」のは、仕事ができるビジネスパーソンの必要条件ですが、「話し上手」になる道でもあるのです。数字を示しながら、会話をすれば見えないものが見え、普通では伝わらないことが、明確に相手に伝わります。今回は「数字」を味方にする話し方について解説していきます。

むき出しの数字自体には大した説得力がありません。だから、全体の中でどれぐらいの割合を示すのかを意識しながら話を進めましょう。その数字が属する全体の数字はどれぐらいなのかを考えることが必要です。

たとえば「売り上げが不振で困っている」「大変だ」では、世間話のレベルです。こういう漠然とした議論では「とにかく数字を上げよう」と気合が入る人や、「営業は何をやっているんだ」と責任転嫁をする人、「販促チームには任せられない」と不平不満を語る人などが現れがちです。数字を示さない会話では、事態を打開してプラスに転じる発言が、なかなか出てこないのです。

一方、数字を示すと、「トップシェアを握っているS社の売り上げが前年に比べて10%落ちています。わが社は5%ダウンです。ライバルのD社の売り上げも5%ほど落ちています。これは業界全体を活性化させる策を講じなければいけないということを意味しているのではないでしょうか?」「同感です。では、こんな案はどうでしょうか?」と、言葉のキャッチボールが始まります。数字の持つ具体性がリアルな提案を呼び込むのです。

あるいは「3カ月以内の売り上げアップを死守しますが、3年、5年先を見据えて営業計画を見直すべきです」「そうだ。もっとスピーデイーに動かないといけない」などという議論が進むかもしれません。先の会話とは異なり、愚痴や責任転嫁、不平不満のたぐいが消えています。それは数字が問題点をクリアにしてくれるからでしょう。はっきりした課題に議論が集中するのです。そこにいる人たち全員が課題について真剣に考え、知恵を絞り、共感や協調を得ながら、団結心も生まれる。数字をきっかけに、そんな実のある会話が展開されます。

ぼんやりした数量表現はかえって話を混乱させる

「おおよそ」「だいたい」「いくぶん」「少々」など、曖昧な表現を使わないのもビジネス会話の基本です。こうした曖昧な表現は、受け取る相手によって言葉が持つ概念が異なりますから、意図が伝わりにくく、誤解を招きやすくなります。せっかくためになる話をしていても、「曖昧なひと言」のために、台なしになるリスクを秘めています。

だから、「おおよそ」→「80%ほど」、「だいたい」→「明後日には」、「いくぶん」→「5%程度」、「少々」→「1%に満たないですが」のように、数字に置き換えて話をする癖を日ごろからつけるようにしましょう。もちろんその数字は根拠のあるものであることが求められます。話が伝わりやすくなるというメリットのほかに、具体的な目標達成へ近づくというプラスの効果も期待できます。

プレゼンテーションでも数字は説得力を発揮する PIXTA

プレゼンテーションでも数字は説得力を発揮する PIXTA

曖昧な表現で、先の見えない会話に終始するか、数字を示して筋道を明確にし、やる気を高め成功へと導くか。数字が持つ力は大きいのです。

もっと話を聞きたい。思わず注目してしまう。そんな人の話には共通点があります。それは1、2、3といった、単純な数字を使い、聞き手の感心を集めるのがうまいということです。話自体が特別に面白いとか、新鮮な内容でなくても、数字を使うことによって、メリハリの効いた会話ができるのです。

数字を使って焦点を絞るテクニック

数字を使うなら、話の冒頭が効果的です。自分が伝えたいことに関連付けて数字を明示するのです。たとえば、「この企画の売りは3つあります」と切り出すパターン。続けて、「1つはA、2つめはB、そして3つめのCが業界初のシステムなのです」と、本題に持っていく手法です。

話の途中で数字を示し、相手に考えさせる方法もあります。「これまで、キーワードを2つお話ししましたが、何だと思いますか?」といった語り口です。話の途中で数字を示し強烈な印象を与えることも可能です。「今から3つお話しすることは、極秘事項です」といった使い方です。

数字を使うと、だらけた雰囲気を変えやすくなります。講義や会議などで話し手が一方通行の場合、どうしても聞き手の神経が散漫になってきます。そこで、「時計を見ないで1分を感じてみましょう。1分たったと思った人は挙手してください、ではスタート!」などと、「1分」を明示して、気持ちを切り替えてもらうのです。話の本筋とは関係ありませんが、こうしたインターバルを置くと、聞き手をいい意味で巻き込めます。途切れていた集中力も回復して、また聞く耳を持ってくれます。

ただし、経験則ですが、数字は「3」が限界です。それ以上に増えると、インパクトが失せ、数字を羅列しただけの会話になるから、注意してくださいね。「4つのポイントがあります」「5人の力添えがありました」など、3を超えた数字はかえって興味をそいでしまいます。

次回は、「決断力」のある人の話し方です。いつも迷ってばかりの人に読んでもらいたい内容です。お楽しみに!

「臼井流最高の話し方」は水曜更新です。次回は8月9日の予定です。

臼井由妃
 ビジネス作家、エッセイスト、講演家、経営者。熱海市観光宣伝大使としても活動中。著作は60冊を超える。最新刊は「今日からできる最高の話し方」(PHP文庫) 公式サイト http://www.usuiyuki.com/

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