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万引き対策が逆効果 日本人の「常識」に落とし穴

2017/7/27

万引きの裏に潜む「事情」を見極めないと、小手先の対策は効果が出にくい PIXTA

前回はビジネスモデルの話を取り上げました。新しいビジネスモデルの秘密に気づくためには常識を捨て去る必要がありますが、いつも常識を捨て去ってばかりいるのでは、それはそれで問題です。普通の状況下では、当然のことながらビジネス常識の方がはるかに大切なものです。

さて、物事がそうなっているのには、必ず何らかの理由があるものです。今回はビジネス常識が豊富にある人に有利な問題かも知れません。

ここでは、二つの観点での戦略思考のトレーニングをしていただきたいと思います。一つは常識の範囲内の事柄でもいくつかの前提を組み合わせると新しい発見ができるということです。

夏に暑さをしのぐための商品が売れ、冬は寒さを乗り切るための物が売れます。富裕層は高価な商品を買うことができますし、大衆市場では普及品が一番売れます。

■常識の「遠近法」を意識する

どのようなビジネスでも、そのビジネスのメカニズムの裏には一定の常識があるのですが、その常識がどのように組み合わさって物事が起きているのかを見抜く能力は重要です。

ある常識のメガネでとらえた問題は、一歩引いて別の常識のメガネでとらえると全然違ったものに見えるかもしれない。そんな経験を味わっていただくのが、この分野の問題の意図するところです。

そしてもう一つ考えていただきたいことは、それがわかっているのに、会社はそれを避けることができないケースがあるということです。

この分野の問題は、ただ解くのではなく、解いた後に、なぜこういったことが経営の現場で即座に対応できないのかという点について考えてみることは、意味のあることだと思います。

この二つ目のポイントについて思いを馳せることができるようになれば、戦略思考力はさらに実用的なレベルに近づくことができると言えるでしょう。

問題
これは本当にあった話です。中国に進出したある化粧品メーカーのお店では、万引きの多さに頭を悩ませていました。万引きされた商品が回りまわってオークションで出回っている様子すらあるのです。ところが店員たちはいくら注意しても万引きに無頓着なまま。そこで会社は対策として万引きの数量に応じて店員の給料からペナルティを差し引くことにしました。その結果、いったいどうなったでしょうか?

【ヒント】
「たぶん悪い結果になったんだろう」ということは文脈から想像できますね。でも、なぜでしょう?それを考えてみてください。

正解「万引きが激増した」

それまでの万引きは店員の知り合いがやってきて商品をくすねていくのを店員が黙認していたことが問題でした。ところが新しいルールでは万引きが起きた分、店員の給料が減ることになります。そこで店員は知り合いと話し合って、知り合いから万引きの数量に応じたキックバックをもらうことにしたのです。お店からの了承が得られたと考えた知り合いは、さらに大手を振って万引きをするようになったのでした。

[「日経Bizアカデミー」で2013年9月27日に公開した記事を転載]

「戦略思考トレーニング」は木曜更新です。

鈴木貴博
百年コンサルティング代表取締役。東京大学工学部物理工学科卒。ボストンコンサルティンググループ、ネットイヤーグループを経て2003年に独立。持ち前の分析力と洞察力を武器に企業間の複雑な競争原理を解明する競争戦略の専門家として活躍。クイズマニアとしても『パネルクイズアタック25』『カルトQ』などクイズ番組出演歴多数。

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