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社会現象になった「たまごっち」

社会現象になった「たまごっち」

米アップルと開発したゲーム機事業が頓挫(前回「アップルと開発、ゲーム機で大失敗」参照)。失意のうちに、子会社からバンダイ本社に戻った。

営業推進課課長となりました。日本トイザらスなど大口顧客への売り込みを仕切る『花形』でした。会社を潰しかねない大失敗をしでかした私に、再び活躍の場を与えてくれたのです。

配属前の人事評価は『Dダッシュ』。人事制度上の最低評価の『Cダッシュ』よりも下のランク外です。それでも働かせてもらえるだけで幸せで、救ってくれたバンダイに報いたい気持ちでいっぱいでした。

1997年、電子玩具「たまごっち」が社会現象になっていた。

社会現象になる玩具は、新人時代に売り歩いた『機動戦士ガンダム』のプラモデル「ガンプラ」以来です。玩具販売は大ヒットの目安が100万個ですが、たまごっちは99年までに累計で4000万個と桁違いの売れ行きでした。

製品を持たずに営業先に出向くと、「何で(製品を)寄越さないのか」と怒鳴られたり、「どうにか回してほしい」と懇願されたりしました。販売店の入荷予定が出回ると、開店前に長蛇の列ができました。混乱を避けようと、まだ珍しかった抽選販売も試しました。

当時、生産が追いつかなかったのは部品不足に陥ったためでした。携帯電話機の普及期と重なり、電子部品を奪い合ったのです。品不足が続くと、次第にニセ物が流通し始めました。警察の協力まで仰ぎ、ニセ物たたきを徹底しました。

品不足は一向に解消せず、海外工場から製品を空輸する事態に。採算は度外視です。社会問題にまで発展した商品の供給にどこまで責任を持つか。企業の姿勢が問われました。

ブームが沈静化すると、一転して大量の在庫が積み上がった。

育成を楽しむ玩具の需要は必ずあり、ブームは7~8年周期で循環します。たまごっちも数年後、再び人気に火が付きました。最近は「ウルトラマン」や「仮面ライダー」などの長寿作品が増え、おじいちゃんから孫まで3世代がキャラクターに親しんでいます。子どもだけにとどまらないキャラクタービジネスの可能性を感じていますね。

営業部門の課長時代、事業部が売れそうな新商品を持ち込んでも、長期で見て既存商品と食い合う恐れがあると思えば突き返すこともありました。ピピンの失敗から救われて以来、個別部門よりも会社全体の利益や将来を考えるようになりました。その癖が、今も役立っていると思います。

<あのころ>
 「たまごっち」の発売は1996年。若者の憧れだった歌手の安室奈美恵さんがブームの火付け役に。特に白色のたまごっちは人気が高く、ニセ物が出回るなど社会問題にもなった。魅力の一つは育てたペットが死んでしまう「おきて破り」(川口社長)にあった。型破りのアイデアでユニークな商品を生む玩具業界のお手本の一つになった。
[日本経済新聞朝刊2017年6月13日付]

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