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「土用の丑の日」にうどん? つるり爽快、食べやすく

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NIKKEI STYLE

暑い暑い暑い暑い。

こうも暑いと食べたいものなんてだいぶ絞られてくる。朝は冷たいコーヒーでパンを飲み下す。夜は何は無くともまずビール、あとは枝豆、漬物などでしばらく涼んでからやっと胃が動き出す。最も太陽にうんざりしている昼は、その日の体調に合わせ「カレーで挑む」か「つるつる麺で逃げる」かの二択となる。

「つるつる麺で逃げる」と言っても私の場合、とことん逃げたい日は汁なし坦々麺ではない。ウニとキャビアの冷製カッペリーニや、手打ちの十割蕎麦もちょっと違う。うどん、それも何の変哲もない、色気もないうどんが望ましい。

それが近所であれば最高だ。ネットで話題の新規店に電車を乗り継いで行くなんて、暑さで弱っている人間のすることではない。近所のありふれた店で、何ということもないうどんを、さして高揚することなくつるつるとおさめる。それが暑さと世間に負けそうな自分をリラックスさせる、最高の夏昼ごはんなのだ。

しかしこの「何ということもないうどん」が、私の今の生活だと実に得難い。

都心にお勤めなら問題ない。弊社や御社の近くのビルにはたいてい地下街があるし、そこには昔っから「うどん蕎麦どんぶり定食何でもありの店」が一軒はあるものだ。

新入社員のときに課長から教えてもらった「店名を冠した特製うどん」は、自分が課長になっても変わらぬお気に入りだったりするだろう。メニューも見ずに「日替わりうどん定食」しか頼まない上司のもとについたこともあったろう。大手町や神田は言うに及ばず、たいていのオフィス街であれば昼にうどんを食べるのは容易なことだ。

西の地方にお勤めであれば、なおさら問題ない。会社や客先から数分の位置に、うどんを食べさせる店が何軒あることか。

私の名古屋支社時代を鑑みても、ビルの目の前に2軒、日土地ビルの地下に1軒、その一本裏手の道に3軒、御園座方面へ信号を渡ればさらに選択肢がうんと広がる。

その日の気分でカレーうどんならそっち、かつお節がそよぐきしめんならあっち、もう二日酔いでなんともならんけど何かお腹に入れたい時はここで卵とじうどん、などと使い分けていた。今思えばなんと贅沢な日々だったろう。

ところが現状はどうか。

世田谷の中途半端な住宅街に住む居職の私が、昼に「何ということもないうどん」を食べるのはちょっとハードルが高い。バスに乗るか、電車で移動するか、もしくは20分ほど歩くか。しかもいちばん近い「徒歩20分のうどん屋」は事もあろうに、おしゃれカフェ風のこだわりとウンチクの店なのだ。

こだわりやウンチクが悪いというのではない。ただ、それでは「何ということもないうどん」ではなくなってしまうのだ。涼しくなったら20分歩くのは問題ないし、涼しければウンチクに目を向ける余裕も出てくる。だがうだるような真夏日にはもっと、さらっとスルッと優しいうどんが欲しいのだ。

そもそも自分がうどんに目覚めたのは、名古屋へ引っ越してからだ。東京に住んでいた20代前半は、たかが千葉育ちのくせに江戸っ子を気取りたくて仕方ない暗黒時代。うどんなんてとんでもない、江戸っ子は蕎麦だ蕎麦だ、てやんでえ、べらぼうめえ。蕎麦をどうやったらかっこよくすすれるか、わさびの所作は何が正解か、そんなことばかり考えて生きていた。

うどんと比べ蕎麦がないがしろにされがちだった名古屋に引っ越した当初は、ひとりイキって蕎麦党を立ち上げたこともあった。

あのころはなぜあんなに頑なだったのだろう。気づくとうどんは自然と私に寄り添い、日常のものとなっていった。

美容院でも、居酒屋でも、雑談の中にうまいうどん屋の情報がするりと入り込む。ノーアイデアで出かけても、どこかでうどんが待っている。私の毎日は次第に、名古屋の何でもないうどんで埋め尽くされていった。

ところで「うまいうどん」というと、東京の人なら「讃岐」と答えるのではないだろうか。実際、東京の街でうまいと評判のうどん屋は、讃岐を標榜する店が多い。もちろん讃岐うどんはうまい。小麦粉をこねて作ったものの最高峰と言っても過言ではない。しかし全国には他にも数え切れないほどご当地うどんがあることを、忘れてはいけない。北から南まで、それぞれの土地に素晴らしき「何ということもないうどん」は存在する。

麺の太いの、細いの、長いの、短いの、硬いの、柔らかいの。レシートのように幅広いきしめんも、1時間以上茹でるやわやわの伊勢うどんも、腰を通り越してゴツゴツと無骨なかみごたえの武蔵野うどんも、ぜ~んぶうどんだ。

つゆも一筋縄では行かない。昆布が主体のもの、カツオやサバ、イワシなどの様々な節類がぷんと香るもの、いりこやアゴなどの煮干しがコクを出すもの。伊勢うどんのようにたれだけで食べさせるものもある。

肉うどんと言ったって同じではない。牛肉、豚肉、鶏肉、なんと馬肉をのせる店もある。

天ぷらにしても同様。地元の野菜しか使わないところ、山菜が山盛りのところ、目の前の海で取れた小海老を山のようにかき揚げにしてのせるところと色々だ。

他にもネギしか乗せない、かつお節が不可欠、七味ではなく必ず一味、など同じうどんとひとくくりにするのは怖いほどだ。

名古屋にいたころ大好きだったのは、うどんもきしめんも蕎麦も中華麺も全部製造している製麺所が、同じ敷地内でやっていた飲食スペースだ。「うちの爺さんが子供のころから常連」というくらい古い店もあり、常連さんのわがままにとことん寄り添うスタイルが多かった。

面白かったのは、うどんと蕎麦、きしめんと中華など、麺のミックスが可能なこと。それらを「うそ」「きちゅう」などと隠語で注文すること。別々に2杯頼むよりお値打ちという、いかにも名古屋らしい逸品。

「うちゅう特大!」と大声で注文すれば、アストロノーツになった気がしたものだ。

さて来週7月25日は土用の丑。ウのつく物を食べる日だ。ここまでお話ししたからには、何を食べたらいいのか、もうわかるだろう。

ウはうどんのウ。うまいうどんのウ。牛肉(うし)や梅干し(うめ)をのせてもいい。さあ何でもないうどんを食べよう。真夏をツルッと回避しよう。

(食ライター じろまるいずみ)

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