卵とじなのにソース味!? ソースカツ丼王国・長野県カツ丼礼賛(4)

ソースカツ丼といえば、「ヨーロッパ軒」のある福井県に、福島県の会津若松、群馬県の両毛エリアに存在が知られているが、全国的な知名度で言えばやはり長野県だろう。

長野県は南北に長い県で、ソースカツ丼は県の南部、南信地方の歴史が古く、中でも聖地といえるのが駒ヶ根・伊那に代表される伊那谷(いなだに)地域。特に駒ヶ根ソースかつ丼は昭和の初期に誕生しており、全国的にも歴史あるソースカツ丼として知られている。

今は閉店した駒ヶ根市「精養軒」のソースカツ丼

そんな長野県で昨年、地元の放送局が個性的なカツ丼を取り上げ、注目を集めている。南信地域の飯田市のカツ丼だ。飯田市は2027年にリニア中央新幹線の長野県駅(リニアは各県一駅の原則)として開業が予定されており、現在東京からはバスで4時間ほどかかるところが、40分で行けるようになるという。

では飯田のカツ丼とはどのようなものか。写真をご覧いただきたい。

一見ごく普通の卵とじカツ丼

一見、ごく普通の卵とじカツ丼のように見えるが、実はこのカツ丼、ソースを使っているのだ。

昭和20年代からカツ丼を出している老舗の「満津田(まつだ)食堂」。こちらのカツ丼は通常の卵とじカツ丼を作るのと同じように、まずタマネギを甘辛いだしで煮てカツを乗せる。普通はここにすぐ溶き卵をかけるのだが、この溶き卵を流し込む前に、カツにソースをかけ、そのあと上から溶き卵、という工程なのである。

満津田食堂のカツとじ

ソースはトンカツ全体にしっかりかけるようだが、完成した卵とじカツ丼からはほのかなソースの香りが漂い、そしてコクのある奥深い味わいになっている。言われなければ多くの人はソースの存在に気付かないかもしれないほど一体化している。

実は3年ほど前に、ここ満津田で居酒屋的にお酒を飲み、その時ご一緒した飯田の方から「ここのカツとじ美味いんですよ!」と紹介され、肴としてカツとじはいただいていた。

ほのかなソースの香りが漂う

確かにかなり美味しかったと記憶しているのだが、恥ずかしながらソースが使われていることには気づかなかった。紹介された番組によると、飯田市民も卵とじカツ丼にソースが使われている事実をご存知な方はあまりいないようだ。