きよし 中華料理店でもソースカツ丼

駒ヶ根にはソースカツ丼の美味しい店が数多くあるが、昭和36年創業、中華料理の老舗「きよし」のカツ丼も地元で人気だ。肉厚だが軟らかいカツにあっさり目の特製ソースがよく絡んでいる。中華料理店でも当然のようにカツ丼がソースカツ丼としてあり、そのクオリティーが高いことが、駒ケ根のソースカツ丼文化の奥深さを物語っているような気がする。

長野と松本の間に位置する千曲市戸倉上山田温泉では、ほかにあまり見たことのないソースカツ丼を2種発見した。1軒目は「大黒食堂」。ソースで炒めたであろうキャベツの細切りがのっている。

大黒食堂 ソース色のキャベツが目を引く

「大黒食堂」にはニンタレカツライスという人気メニューもある。ニンニクとニラをしょうゆに漬け込んだ特製だれでトンカツを食べる、それは人気になるだろう!というメニュー。

もう一軒は「白藤食堂」。前回岐阜編で紹介したソースで炒めたタマネギがのる「かわい」と見た目は似ている。しかしあちらが洋風なら、こちらは和風。そばの和風だしがかなり効いていて、ごはんには海苔を敷いている。

白藤食堂 ソースで炒めたタマネギがのる

この大黒と白藤の2店は徒歩3分ほどの距離にある。どちらも個性的で美味く、かなり違ったテイストのカツ丼がこのように近くに存在することが不思議でならない。

ちなみにソースカツ丼を自宅で作る、レシピサイトなどをよく見ている方々はあまり驚かないかもしれないが、各地のソースカツ丼のソースにはしょうゆが使われていることが多い。私が初めて知ったのはここ駒ケ根のソースカツ丼用ソースの原材料表記からだ。

駒ケ根のソースかつ丼用ソース 「原材料名 本醸造醤油」

「ソースにしょうゆが入っている…」個人的には衝撃的だった。なぜなら以前しょうゆと間違えて中濃ソースを混ぜてしまい、試しになめたらとても食べられたものではなかったからだ。ところがみりんや砂糖、酒などと煮合わせると不思議に日本人好みのカツに合うソースになる。

西洋料理を「洋食」にし、中国料理を「中華」にして、日本料理にしてしまう。トンカツもソースもキャベツだって日本のものではなかったのに、まるごとお米に合わせてどんぶりにして日本食にしてしまう日本人は味覚への探求心は実に凄いものだ。

(一般社団法人日本食文化観光推進機構 俵慎一)

「食の達人コラム」の記事一覧はこちら