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「チャーハン道」を極める 安くて簡単、でも奥深い

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NIKKEI STYLE

ゆうべの酒がズンと体の奥底に残っている土曜日の朝。ベッドから起きられない私の耳に、隣の家から毎週恒例の音がしてくる。

シャー! カンカン! ジュワー! ザッザッザッ…

隣家の音の正体は、チャーハン。どうやらお隣さんは、平日の残り物を刻んで具にしたチャーハンを、土曜日の朝食にするのが習慣になっているのだ。どうして残り物とわかるのかって? なぜなら炒めるときの音も香りも毎回違うからだ。

キャベツの甘い香りがする日もあれば、ピーマンとタマネギの刺激に飛び起きる日もある。ショウガと豚肉を感じればおそらく生姜焼きの残りだし、ひなびたしょうゆの香りはきっとヒジキに違いない。ハムもソーセージもベーコンも全部入れたな?という贅沢な気配の朝もあれば、ちくわとネギとカレーというハッとする組み合わせの日もある。

さらに「ママ、肉じゃがはチャーハンに合わないよー」「またかまぼこが入ってるー」など寸評を加える子供たちの声が、私の推理を裏付けてくれる。香りと音に悶えながら「今週のチャーハン」を推理するのは、土曜の朝のひそかなお楽しみであった。

炒飯とは読んで字のごとく「飯を炒めたもの」である。調理工程は炒めるだけ、というごく単純な料理だ。だがショートショートや、たった17文字で表現する俳句が単純に見えてひどく難しいように、飯を炒めるだけのチャーハンほど奥が深いものはない。

米の炊き方や種類、具材のチョイスに分量、火加減に塩加減、どれもほんの少しずれるだけでまったく違うものができてしまう。逆に言えば、ほんの一工夫でまったく新しい味になるあらゆる可能性があるということでもある。

手っ取り早い料理として、また残り物をうまく食べる方法として、チャーハンほど合理的で経済的なものはないだろう。

自炊を始めたばかりの初心者でも見よう見まねでなんとか作れるし、どんなに米がまずくても、炒めればそれなりに食べられる味にはなる。今月はお金がピンチというときでも、米と少々の具さえあれば大丈夫。ネギと卵だけのシンプルバージョンの良さは他に代え難いものがあるし、物足りなかったら、梅干しでも納豆でもカレーでも、冷蔵庫にある好きなものを足せばいい。

飲食店のチャーハンには、家庭とはまた違った魅力が満載だ。

ラーメンスープが一緒についてくるのが嬉しいのは街の中華。定食屋ならスープでなく味噌汁か。どこの家の冷蔵庫にも常備されているとは言い難い老抽(中国のたまり醤油)や咸魚(塩漬けの魚)を使ったチャーハンは、ちょっと高級な中国料理店でお目にかかれるだろう。

バターがふんわり香る、ピラフという名の喫茶店チャーハンにもずいぶんお世話になったものだ。

オーセンティックなバーなのに焼き飯がうまい店もあれば、先代から受け継いだというシジミチャーハンを出すライブハウスもあった。カレーチャーハンやキムチチャーハンはもう当たり前だし、そうそう、ステーキ店のガーリックライスもたまらない。

お茶で炊いたご飯をお茶と炒める「茶飯(チャーハン)」を出す日本茶のカフェや、老舗漬物屋の漬物チャーハンなどの和風もいい。ニラとひき肉で辛い味付けの台湾チャーハンを出すのは、もちろん名古屋だ。

あらゆる場所で、あらゆる業態で、チャーハンは作られてきた。すべての料理にチャーハンをつけられる仕組みになっているため、チャーハンにチャーハンをつけることもできるチャーハン愛にあふれすぎた店すらある。作る工程が単純というだけではない、作る人も食べる人もみんなチャーハンが大好きなのだ。

ところでチャーハンについて、私にはどうにも我慢できないことがある。

それは「チャーハンパラパラ至上主義」のことだ。いったいパラパラだけがチャーハンの値打ちなのか。ふんわりではダメなのか。しっとりではダメなのか。あんかけチャーハンや、スープチャーハンの気持ちを考えたことがあるのか。

パラパラを追求するあまり、パサパサになったチャーハンに出合ったこともある。パラパラだけども、味がぼんやり決まってない本末転倒チャーハンもあった。もっとパラパラ以外のテクスチャーにも目を向けようではないか。チャーハンの本懐は、パラパラだけではないのだ。

実家の母も、残り物チャーハンはよく作っていた。練り物屋の娘だった母は、つい冷蔵庫を練り物だらけにしてしまう癖があり、チャーハンにもよくさつま揚げやかまぼこが入っていたものだ。一方、長野の義母が作る残り物チャーハンは信州だけあってやはり、野沢菜などの漬物チャーハンがデフォだった。

偶然にも昨日、ネットの友人が「なんでオカンは焼き飯にカマボコを入れてしまうのか問題」を語っていた。私の答えはこうだ。「冷蔵庫にかまぼこを余らせるオカンだったから」。余らせるということは、よく購入するか、よくもらうかのいずれかだ。何が余るのかは、オカンによって違う。生まれ育った環境もあるだろう。好き好んで買いまくった歴史もあっただろう。

それぞれの人に、それぞれの人生を反映した残り物チャーハンがある。残り物には福があり、残り物チャーハンには愛がある。北海道ではとうもろこしチャーハン、浜松ではうなぎチャーハン、房総ではサザエチャーハン…なんてのもあながち間違いではないかもしれない。

さらにチャーハンは主食であると同時に、酒の肴にもなる。なんならチャーハンをおかずに白飯を食べたっていい。どんな具でも、どんな味つけでも受け止めてくれるチャーハンは、なんとも器の大きなやつである。

(食ライター じろまるいずみ)

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