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弁当、焼酎、シメにお茶漬け… 梅干しは「元気の源」

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NIKKEI STYLE

あなたの風邪はどこから?

私は鼻から。幼いころからどうにも鼻回りが弱く、季節の変わり目にはすぐハックション! ハックション! ズルズルズルと、くしゃみ鼻水が止まらない。けたたましい音がするため親にはすぐ気づかれ「お腹出して寝てるから!」とひとしきり怒られたあと、マスクと体温計、そして「これ飲んで早く寝なさい」と熱々のドリンクを渡されるのが常だった。

熱々のドリンクの正体は、梅干しを入れたお茶。時に生姜やはちみつも入っているそれは、ともかくおいしいホットドリンクであったため、薬という感じもなくゴクゴク飲めた。体の中からあったまって布団に入れば、翌朝はケロリとしていたものだ。

私の梅干しへの信頼は、そりゃあもう並大抵ではない。

風邪のひき始めも梅干しなら、治りかけのお粥も梅干し絶対主義。料理に使えば間違いなくおいしいし、焼酎に入れれば「二日酔いなし」という根拠のない確信が湧いてくる。梅おにぎりは好きをはるかに超えた殿堂入りだし、梅干しの入ってないお弁当など考えられない。

梅干しなら大丈夫。梅干しはやってくれる。強い思いがプラシーボ(偽薬)効果となって、本当に元気になる。

いや、訂正しよう。プラシーボ効果なんかではない。本当に体にいいのだ。

もともと梅干しは薬として、中国からやってきた。ひとつは黒い梅干し。遣唐使が持ち帰ったと言われる「烏梅(うばい)」だ。未熟な果実を真っ黒になるまでスモークしたもので、鎮痛、解熱作用があるという。烏梅の中国語読みの「ウーメイ」が、日本語の「うめ」になったという説もある。

もうひとつは白い梅干し。「10日間ほど夜は塩水に浸し、昼は太陽に干すことを繰り返す」というレシピは現代とは少々違うものの、烏梅よりは今の梅干しに近い味がしただろう。日本人が初めて出合ったのは、この黒と白の梅干しであった。

赤ジソで色と香りをつけた赤い梅干しが作られるようになったのは、ずっと遅れて江戸時代に入ってから。赤い梅干しが最初に文献に現れたのは寛文(1661~1673年)のころの、金閣寺の僧侶による日記だが「紅色之梅干珍敷成」と書かれているくらいだ。相当にびっくりしたんだろう。

ところで梅の名産地といえば、どこを思い浮かべるだろうか。

もちろん和歌山と答える人がほとんどだろう。生産量は圧倒的。ダントツと言っていいほど他県を引き離し、南高梅という天下にとどろくブランド梅もある。梅そのものだけでなく、梅干しを始めとする数多くの加工品や、梅を食べさせて育てた鶏や豚をブランド化もしている。江戸時代から梅の栽培を推奨してきた紀州藩の努力が、大きな花を咲かせたといえよう。

しかし全国には隠れた名産地が他にもたくさんある。

例えば小田原もそのひとつだ。北条氏に始まるという小田原の梅づくりは、江戸時代を経て今もなお盛ん。駅ビルをざっと見ただけでも、梅干し、梅ジャム、梅味噌、梅ジャーキーなどの加工品が、所狭しと並んでいる。

かつて横浜がまだ海辺の小さな集落に過ぎなかったころ、小田原は街道の拠点として大いに栄えていた。特に箱根越えの宿場町としての役割は重要で、今から箱根を越えるものも、今箱根を越えてきたものも、みんな小田原で一息入れたのだ。そんな旅人に欠かせなかったものが、梅干しである。

箱根の山がどんなに険しいか、箱根駅伝を見ている人なら想像がつくだろう。険しい山を越えるには体力がいる。力を出すには、食わねばならぬ。小田原で飯を食い、道中の弁当を仕入れる。梅干しは弁当の防腐剤でもあり、おかずでもあり、食欲増進剤でもあった。箱根八里を越えるには、梅干しの力が必須だったのだ。

また箱根を越えて帰ってきたものにも、梅干しはありがたかった。箱根越えで限りなくゼロに近くなった「ライフ」を、梅干しに含まれているクエン酸がみるみる回復してくれるからだ。

小田原を行き交う旅人が増えるにつれ、梅干しの需要も増え続けていったが、幸いにして近くに塩田があり、塩をふんだんに使うことができた小田原は、その需要に応えることが可能だった。こうして小田原の梅干しは名産となっていった。

意外なかたちで梅栽培が盛んなのは、山形市や奈良県の月ヶ瀬村である。

このふたつの土地に共通するのは「紅花」。化学染料のなかった時代に、美しい紅色に染まる紅花はとても貴重なものだった。ただ紅花は、そのままでは紅色にはならない。紅花の色素が赤くなるには、酸と出合うことが必須なのである。そこで使われたのが梅だった。

今では酸を梅に頼ることはほとんどないが、紅花のある土地には、同じくらい梅があったのだ。山形銘菓「のし梅」を食べながら、こんな背景に思いを巡らせてみるのも楽しいものだ。

梅はそのままでは食べられない。完熟したときの甘く危険な香りからは、とてもそうとは思えないのだが、甘いのは香りだけ。酸味は強烈だし、アクもある。しかし諦めるにはもったいなさすぎる薬効が、梅の実の様々な利用法を生んだ。もちろん最も多いのが梅干しである。

梅干しは、梅の漬物としてだけでなく「塩を山へ届ける」意味合いもあったという。流通の良くなかった時代、山間部では塩はとても貴重なものだった。かつて梅干しは「梅1升、塩3合」のレシピだったそうだ。溶けきらない塩がガチガチに固まっているような梅干しは、山の民の塩分補給として大いに役立ったことだろう。

私は今でも風邪の予感がした朝は、梅干しに熱いお茶をさし、つぶしながら飲むのが習慣だ。いや、どちらかというと風邪より二日酔いの朝の方が多いか。まあそれは仕方ない。いずれにせよそんなときは、昔ながらのしょっぱーい、酸っぱーい梅干しが最高だと思っていた。

しかし先日、実家からもらってきたトマト味の梅干しを使ってみたところ、上等なスープのような、意外にオツなものができてしまった。これはイケる。今は「りんご味」「キムチ味」など変り種の梅干しが次々と出てきている。なんと和歌山県みなべ町には塩分0パーセントの梅干しなるものまである。梅干し茶の世界はまだまだ広がりそうだ。

(食ライター じろまるいずみ)

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