スイーツ食べたい、でも… 「スローカロリー倶楽部」
魅惑のスイーツ。でも、痩せたいから我慢しなきゃ。医師から控えるよう助言されていて、食べるのに気が引ける…。そんな人たちに、ちょっと気になるスイーツのシリーズが登場した。
高島屋の和洋菓子のコレクション「スローカロリー倶楽部」だ。
高島屋と三井製糖が共同開発、高島屋のテナントが、砂糖のおいしさはそのままに糖の吸収を穏やかにするという三井製糖の「パラチノース」を使ったスイーツを高島屋各店で販売する。
今回ラインアップされるのは、全部で21ブランド。和菓子では、東京の老舗・栄太楼総本舗が新たに立ち上げた「からだにえいたろう」から「よもぎ黒豆大福」と「スローカロリーどら焼き」が登場。
他にも、金時米菓が「水ようかん」を、吉村和菓子店は「焼き鳳瑞 種まき」を、両口屋是清は「彩がさね」を販売する。
洋菓子では、人気店のアンリ・シャルパンティエから「ムース ペシェ」、ブールミッシュから「苺のショートケーキ」などが店頭に並んだ。
試食してみると、すっきりとした甘さのものが多い。パラチノースは甘さが砂糖の約半分とのことで、製品化に当たっては、普通の砂糖と合わせるなどして甘味を調整して使用するという。これまでの人工甘味料では、甘味が強すぎると感じるようなものもあるが、パラチノースを使ったこのシリーズはそれとは対照的な印象だ。
発表会では、パティシエや和菓子職人も参加して、商品化に際してのエピソードを披露してくれた。
いずれも砂糖との違いに苦労したとのこと。色味や食感が、従来の砂糖だけで作るものとはどうしても違ってしまうという。砂糖との配合や材料を見直すなどしながら、より良い味わい、食感、見た目に仕上げたそうだ。
パラチノースは、1984年に三井製糖が商品化した砂糖と同じ二糖類で、一般名称はイソマルツロース。テンサイ糖を原料に、酵素を使って製造する。天然にはハチミツの中に微量存在するという。
パラチノースのカロリーは砂糖と同じだが、小腸での分解速度が砂糖に比べて5分の1と遅く、ゆっくりと消化吸収される性質を持つ。これが「スローカロリー」の名前の由来だ。
同時に食べた糖質の吸収も遅くすることが報告されており、全糖質中にパラチノースが15%以上配合されることで、全体の消化吸収を遅らせる効果が出るという。
血中の糖分が急に上昇したり、あるいは上昇したままの状態が続くのは健康上好ましくないことはよく知られている。糖尿病の治療では、血糖値を下げることと同時に、血糖値の上昇をゆるやかにすることも必要とされる。
「ゼロカロリー」「ローカロリー」とは違い「スローカロリー倶楽部」のスイーツは、カロリーはそのままで、糖質の吸収をゆっくりにすることで体への負荷を低減しようという発想だ。
ただし、カロリーは砂糖と変わらないので、食べ過ぎればオーバーカロリーになる。そこは要注意。
三井製糖では「糖質を極端に敬遠する傾向から、食生活が偏り、不健康になる例が問題になっている」という。
受験勉強をしていたころ「甘い物を食べると頭がすっきりする」と言われた経験はあるだろう。「適切な糖質の摂取」は必要だという。
では、健康な人なら従来の砂糖を適量使ったスイーツでいいだろう、「スローカロリー」は必要ない、という考え方もできる。もちろんその通りだ。
空腹は血糖値が下がることで感じるものだ。糖の吸収が穏やかになると言うことはつまり「腹持ちがいい」ということになる。おなかがすくとついついお菓子をつまんでしまうような人は気になるところだろう。
もちろん、健康な人にとって、お菓子は見た目の美しさやおいしさが何より重要だ。「スローカロリー倶楽部」のラインアップは老舗や人気店など、いずれもおいしさが魅力のお店のスイーツばかりだ。
「すっきりした甘さをいつでも、より多くの人に、『デパ地下クオリティー』で」と高島屋はアピールする。
今後は焼き菓子や半生菓子など品揃えを広げていく予定だ。
(渡辺智哉)
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