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質問する際の表情も答えを左右する PIXTA

質問する際の表情も答えを左右する PIXTA

質問はその人の「問題意識」を表します。たとえば、新しくプロジェクトに携わることになったあなたが何か疑問を感じたとき、上司や周囲の人に上手な質問ができれば、的確な答えがもらえて、疑問は解消されるだけでなく、その後の行動も早くなるでしょう。上手に質問できれば、仕事ができる人になれるわけです。

私は質問のレベルと仕事のレベルは比例するととらえています。それだけ大きなパワーが質問にはあるのです。

先日、参加した勉強会でのことです。すべての講義が終わり、講演を行った複数の講師に質問をする時間がありました。会場を使用できる時間は限られています。それは当日配布された「プログラム」を見れば、誰でもわかることです。

こういう場合、司会者から「質問は1人1問にお願いします」「質問内容は本日の講演内容に限ってください」などという指示がなかったとしても、きちんとした質問をするのが常識だと私は思っていたのですが、講演内容からずれた質問をする人や、1人で複数の質問をする人、質問と称して自分の仕事をPRする人などが続出して、同席した参加者は「問題意識」の乏しい質問につきあわされる羽目になりました。

頭のよい質問とは、問題意識の高さを物語っています。そういう質問には共通点があります。それは「目的」をきちんと把握しているということです。

相手からどんなことを聞き出したいのかが明確でなければ、質問とはいえません。ひとり言をつぶやいたり、自説を語ったりするのと変わらないでしょう。

質問の目的が自分の中で整理できていれば、それを相手に伝えることができて、期待した答えが返ってきやすくなります。しかし、「目的」があいまいならば、おのずと答えも的外れになりがちです。

二者択一式の質問ははっきりした答えを得やすい PIXTA

二者択一式の質問ははっきりした答えを得やすい PIXTA

その問いかけは本来の「質問」になっていますか

私が質問をする際、心がけているのは次の3点です。

(1)感情的な質問をしない
(2)「二者択一の質問」と「選択肢が多い質問」を使い分ける
(3)聞かれてうれしい質問をする

あなたが情熱を傾け時間・労力を費やしてきた仕事が会社の方針で中止になったとしましょう。このような場合、誰しも悔しさやむなしさで感情的になるものです。会社の方針で中止になったとはいえ、納得ができず、上司に問いただす人もいるはずです。

あなた「部長、会社の方針で中止になるなんて、納得できません。なぜですか?」

部長「……」

これは「文句」であって、質問ではありません。部長は黙り込むか、「会社の方針を理解できないなんて生意気だ」と、感情的なあなたに嫌気が差すかもしれません。

あなた「スケジュールに無理があったのでしょうか?」

部長「いいや、予算がオーバーして採算が合わないおそれがあるんだ」

これは事態を把握した冷静な質問です。「もしかしたら●●が原因かもしれない」「●●を改善すれば、続けられるかもしれない」。こういったあなたなりの仮説を立てて質問すれば、前向きな話し合いができたり、解決策が導けたりという期待が高まり、状況が好転する可能性もあります。

二者択一の質問は相手の頭を整理する働きがある

すぐに答えがもらえる質問が「二者択一の質問」です。「次回の打ち合わせは、●日にしますか? それとも●日がよろしいでしょうか?」と質問すれば、どちらかを答えざるを得ません。この質問は相手がその問題についてあまり興味がないケースや、深く考えていないような場合に威力を発揮します。

一方、相手から多くの情報を引き出すことを目的にしている場合には、「選択肢が多い質問」を使います。

あなた「次回の打ち合わせでは、何を準備したらよろしいでしょうか?」

相手「●●があると、進行がスムーズになりますが」

あなた「それは、△△に役立つということですね」

相手「△△だけでなく○○にも活用できると思います」

多くの情報を引き出す基本は「(相手の頭の中に)何かがある」という視点です。相手の側には、伝えたい「何か」があるはずだという気持ちを持てば、より多くの情報を引き出すことが可能になります。

「この人と一緒に仕事がしたい」「仲よくなりたい」と、あなたが思うのは、どんなきっかけからでしょうか? 自分の得意なことに共感を示してもらえたり、見識の広さを認めてもらえるような質問を受けたりすることは好感を抱くきっかけになります。自分が尋ねられてうれしくなるような質問を受けたことを通じて、相手に好感を抱くのは珍しくないことです。

「臼井さんは読書がお好きなのですよね。最近読んだ本の中でおすすめを教えていただけませんか?」。こう尋ねられたのならば、喜んで話しだすと思います。

一方、「読書って、面倒くさいですよね。飽きませんか?」と質問を受けたならば、積極的に答えようという気持ちがわきません。そこから会話が広がり、話が盛り上がることはないでしょう。ましてや好感を抱くことなどありえません。悪気がないのは分かりますが、こうした質問は慎むべきでしょう。先に挙げた、「3つの質問ルール」を参考に、あなたの「質問力」に磨きをかけてくださいね。

次回は、無意識に使っている?「間違い言葉」です。お楽しみに!

「臼井流最高の話し方」は水曜更新です。次回は6月28日の予定です。

臼井由妃
 ビジネス作家、エッセイスト、講演家、経営者。熱海市観光宣伝大使としても活動中。著作は60冊を超える。最新刊は「今日からできる最高の話し方」(PHP文庫) 公式サイト http://www.usuiyuki.com/

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