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「初夏の宝石」サクランボ 味も育ちもデリケート

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NIKKEI STYLE

初夏の味、サクランボ。4月からハウスものの出荷が始まり、6月上旬から半ばにかけて露地ものに切り替わり7月まで、これからがまさに旬になる。

サクランボといえば山形。都道府県別生産量で圧倒的なシェアを誇る山形県を訪れ、その魅力を探った。

サクランボの原産地はトルコ。そこからヨーロッパ各地に広がり、特に英国・フランス・ドイツで普及する。英国から米国へと渡り、それが日本に入ってきたのは明治の初めだった。当初は北海道で育てられていたが、やがて霜と台風の被害が少ない山形県に定着していく。

山形新幹線で福島県との県境を越えて山形県に入ると、車窓には木をすっぽりと覆う背の高い鉄パイプ製の構造物が目につくようになる。これがサクランボの木だ。

山形県内でもサクランボ栽培が盛んな河北町のくさかべかつみ農園を訪れてお話をうかがう。

農園に着いて、間近に見ると、鉄パイプの背の高さに改めて驚かされる。ナシやブドウなどの果樹は人の背の高さに棚を作り、そこに枝を這わせるようにするが、サクランボの場合は、枝が横に伸びるように剪定はするものの、棚は作らない。そのため、温室はかなり背の高いビニールハウスになる。

鉄パイプがやたらと目につくのは、実はハウスものだけでなく、露地ものの果樹も鉄パイプで囲まれているからだ。

皮と果肉の軟らかいサクランボは、雨に弱い。しかも、収穫期は梅雨。雨ざらしの木を見せていただくと、多くの実が割れてしまっていた。そのため、雨よけのための屋根を、露地ものの果樹にもかぶせているのだ。さらに鳥に食べられないよう、側面にもネットを張る。

こうしたメンテナンスは、もちろん農家の仕事。後継者難から高齢化が進むというさくらんぼ農家だが、高所作業は必須で、収穫時期には、落下によるけが人が後を絶たないという。

「現地価格」でさえ、小さな化粧箱入りで1パック6000円、7000円の値が付く高級フルーツだけに、さぞかしいい儲けになるのだろうと思っていたのだが、高所作業も含め、栽培には非常に手間がかかり、決して割のいいビジネスではないという。近年では、廃業に追い込まれる農家も多いという。

山形は雪国。雪が積もると、重さでサクランボの枝が折れてしまう。大雪に見舞われれば、枝1本1本の雪を払いのける。

春になると剪定。枝にまんべんなく太陽光が届くよう、余分な枝を切り落とす。そして受粉。サクランボは1種類の品種だけでは受粉できない品種がほとんどで、他の果物に比べて受粉が難しい。受粉を媒介するのはハチだが、ハチは寒さや風、雨に弱いため、毛ばたきによる人工授粉がどうしても必要になる。また、実にじゅうぶんに太陽光が届くよう、葉の剪定も欠かせない。

ハウスものが出始める時期は、露地もののビニールがけの作業も重なる。ハウスものは、贈答用の高級品が多いため、出荷の作業も手間がかかる。一粒ひと粒、ていねいに化粧箱に詰めてゆく。

出荷が終わっても、仕事は終わらない。夏は雑草が伸びるため、こまめな草刈りが必須だ。秋になると病害虫対策。雪の前には、エサがなくなった野ネズミが木の皮を食べてしまうため、その対策も必要になる。

もちろん果樹にも寿命がある。実りが悪くなった木、枯れてしまった木は切り、土を入れ替えるなどして別の若木に植え替える。離れた畑では、いつ出番が来てもいいように、若木の育成にも余念がない。とくかく休む間がない。

サクランボが高いのは、それだけ手間のかかる、デリケートな作物だからだ。

人気ブランドの佐藤錦は、味の良さはもちろん、そんなサクランボの弱さを克服したことで人気銘柄になった。明治のころは、せっかく収穫したサクランボを出荷の途上で腐らせてしまうなど、日持ちの悪さが悩みの種だった。

大正に入ると、東根市の農家、佐藤栄助氏が品種改良に着手する。日持ちはよくないが味のいい「黄玉」と酸味は強いが硬くて日持ちのいい「ナポレオン」をかけ合わせる。種を取って植えるを繰り返して10年、やっと味も日持ちも良く、何より育てやすい品種の原木が完成する。佐藤錦として市場に出るまで、実に16年もの歳月がかかったという。

さっそく採りたてのサクランボをいただこう。私たちの口に入るのは「選ばれしさくらんぼの精鋭」たちだ。雨よけしてもなお、割れてしまう実はでてしまう。これは選別の段階ではじかれる。

よく見かける「双子のサクランボ」も除外される。かわいらしいのにと思うのだが、やはり粒のそろったものが好まれるという。

つやつやと光った宝石のようなサクランボを一粒、つまんで口に入れてみる。薄い皮を歯が突き破るとジューシーな果汁があふれ出る。ほんのりと軟らかい甘さ。食感も味も「柔らか」がサクランボの魅力だ。

しっかり冷えたサクランボを部屋で食べるのもいいが、実は、木に実ったサクランボを摘みながら食べるのがたまらない。赤く熟した実を選んで採り、そのままほおばる。痛みの早いサクランボだけに、この上ない新鮮さだ。

口の中に残った種は、その場ではき出す。土の上だからこその食べ方だ。

今の時期、山形県内のあちこちでサクランボの種飛ばし大会が開催される。摘みたてを食べて種をその場ではき出すのは、決してお行儀の悪い食べ方ではないと言うことだ。

くさかべかつみ農園はじめ県内各地で、摘み取ったサクランボをその場で食べる「サクランボ狩り」も行われる。

この週末、6月17日(土)18日(日)には、山形市の中心市街地で「第6回日本一さくらんぼ祭り」も開催される。

さくらんぼ種飛ばし大会はもちろんのこと、流しそうめんならぬ「流しサクランボ」など楽しいイベントが多数用意されている。

さくらんぼ以外にも、暑い山形の夏には欠かせない「冷やしシャンプー」の体験コーナーやかほく冷たい肉そば、山形芋煮カレーうどんなどのご当地グルメを一堂に集めたコーナーもある。

山形新幹線に臨時列車が運行されたり、県内随所で「サクランボ渋滞」が発生するなど、梅雨の6月は、山形の観光トップシーズンだ。この機会に山形を訪れて、とれたてのサクランボを味わってみるのもいいだろう。

(渡辺智哉)

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