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いい水が無色透明とは限らない ウイスキー育む仕込水

世界5大ウイスキーの一角・ジャパニーズ(2)

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NIKKEI STYLE

スコットランドに留学したのは今から30年近く前、1989年10月のことだった。ロンドンからブリテッシュ・エアウェーズのシャトル便でスコットランドの首都エディンバラに到着、市内中心部のホテルで最初の夜を過ごした。評価が高まる国産ウイスキーへと至るウイスキーの歴史と魅力をひもとく本連載、今回は仕込み水の物語から……。

疲れ切った私はバーへ行く元気がなく、部屋にあったミニチュアボトルを空けた。飲んだのはスペイサイドのシングルモルト。チェイサーはハイランドウォーターと書かれた無色透明のミネラルウォーターだった。

ホテルの水が茶色がかっているのに気付いたのは湯船に水を張りはじめた時だった。水道管の錆が出てきたのではないかと、ホテルのフロントに下手な英語で連絡する。5つ星ホテルなのに水道管のメンテもやっていないのかと憤りを感じた。

そしてドアのノック。

入ってきたボーイが風呂を見てニヤッとした。そして、これはナチュラルカラーだと言う。飲んで構わないと。

この町で暮らすのだから仕方がない。水は無色透明なものという日本人の常識もあって気持ち悪さがこみ上げてきたが、蛇口から水を汲んだ。水の冷たさが心地良かった。飲んだ。そして気付いた。

金気臭くない。それどころかマッタリ感と甘味があり、飲んだことがないタイプの水だと。

先ほど空けたミニチュアボトルのウイスキーに注いで飲んでみた。ハイランドウォーターとは明らかに違う味わいだった。中々いける!

この茶褐色の水はスコットランドじゅうでめぐり逢った。もちろん無色透明の水もあったが、蒸溜所で出合うことは稀だった。

蒸溜所を訪問すると、工場長が仕込水の水源の小川に連れて行ってくれることが多かった。つるべで汲んだ小川の水でその蒸溜所のモルトを割って試飲させてくれた。なんともおいしかった。そして蒸溜所ごとに水の味が微妙に違うのを感じた。

数あるスコットランドの蒸溜所の中で一番印象的だったのはアイラ島インダール湾に面した蒸溜所の仕込水だ。やはり色が付いている。ふくよかな旨味を感じた。

アメリカ合衆国ケンタッキー州クレアモントはケンタッキー州ルイヴィル空港から40分のところにあるウイスキーの町だ。ここにある蒸溜所の水は、無色透明だが厚みを感じた。

カナダでは、デトロイトからデトロイト川の川底を通るデトロイト・ウインザー・トンネルでわずか15分、オンタリオ州ウィンザーの全米有数の巨大蒸溜所を訪れる機会があった。ここの水は軽快でニュートラル、サッパリ感があった。

アイルランドのコーク近郊の町ミドルトンへは首都ダブリンから車で3時間。そこにある巨大蒸溜所。アイリッシュウイスキーの復活を担ったその蒸溜所の水は伸びがあり、端正な感じだった。

私が働いていた日本の2蒸溜所でも仕込水の味わいは明らかに異なる。水はその土地の記憶を持っているのではないか思う。そして、その記憶を受け継いだウイスキーを生む。

仕込水と同じくらい大切なのが蒸溜所を取り巻く気象環境だ。樽貯蔵するからである。

何年もの間樽に入った原酒は貯蔵庫の温・湿度変化の中で熟成して行く。自然に任せるだけかというと、例外もある。バーボンだ。

冬になると貯蔵庫内を暖房する蒸溜所がある。積極的に樽の成分抽出を早めるためだが、却って気象環境の寄与、重要性を示している。

ウイスキーの製造工程では、仕込水、気象環境など、蒸溜所の所在する土地の影響を受けることを忘れてはならない。蒸溜所の設備、設備を動かす匠の技はとても大切なことは言うに及ばない。

しかし人間の力は限られているのも事実だ。

蒸溜所見学の楽しみの一つが、仕込水を飲み、気象環境を体感し、それが生み出したウイスキーを味わうこと。「マザーネイチャー」を実感し、自然と一体になることである。

自然の影響を受けたウイスキーがその出合いを媒介してくれる。この自然との一体化体験こそ蒸溜所とそこで生まれたウイスキーがもたらす贈物である、心地良い酔いと共に。

ちなみに仕込水を味わった上記の蒸溜所名は「ボウモア(スコッチ)」「ジムビーム(アメリカン)」「ハイラムウォーカー(カナディアン)」「ミドルトン(アイリッシュ)」そして日本の「山崎」「白州」である。

(サントリースピリッツ社専任シニアスペシャリスト=ウイスキー 三鍋昌春)

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