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旬のひんやりキュウリ 江戸の武士にはご法度だった?

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NIKKEI STYLE

昨年、うだるような暑さの真夏に小江戸川越を訪れると、一番街に行列ができていた。一体なんだ?と野次馬してみると、行列の先で売られていたのはよく冷えたキュウリの一本漬け。串にさされた冷え冷えのキュウリは、暑さにバテ気味の身にはなんともおいしそう。

ハウス栽培のおかげで1年じゅう食べられるキュウリだが、元々は夏野菜。旬は6~8月。これから露地ものがおいしくなる季節を迎える。

キュウリは水分やカリウムを多く含み体を冷やす働きがある。人々が涼を求めてキュウリにむらがるのはきっと本能だ。

キュウリは6世紀後半に中国から伝来し、江戸時代には野菜として広く栽培されるようになった。漢字で書くと「胡瓜」だが、元々は「黄瓜」だ。

私たちがよく目にするキュウリは深緑色のものがほとんど。緑色なのになぜ黄瓜?と思われるかもしれないが、元々キュウリは熟すと黄色くなるもので、昔は黄色いものを食用としていた。味も今よりもずっと苦かったらしい。

家庭菜園をやっている人なら、緑のキュウリをほおっておくと、だんだん黄色く熟していくのを見たことがあるかもしれない。黄色い瓜だから「黄瓜」が語源と知れば、納得できるだろう。

現代、市場に出回る青々しいキュウリは未熟果で、ほっそり緑色であるのは長年の交配のたまものだ。

一方で、各地に残る伝統野菜、いわゆる地キュウリには昔ながらのキュウリの姿が残っている。たとえば、青森の糠塚キュウリなどは全体的にずんぐりと太く色も白っぽい。加賀太キュウリなど太くて煮物に使われるものもある。

キュウリを使った料理といえば、サラダや酢の物がまず頭に浮かぶが、生食に飽きたら炒めてもいい。キュウリチャンプルーにすれば炒めキュウリのポクポク食感が意外にいける。ぬか漬けもおいしい。

ほとんどが水分で栄養分が乏しいキュウリだが、ぬか漬けにすればぬかのビタミンB1を一緒に摂ることができる。いわば昔の生活の知恵だろう。

宮崎県に伝わる郷土料理の「冷や汁」は、アジなどの魚を焼いてほぐし、焼き味噌と一緒にのばし、豆腐や青じそ、キュウリなどを入れて汁にしたもの。これを麦飯にかけて食べる。

農繁期に農作業の合間に食べられ、ぶっかけ飯ながら栄養もしっかりとれるアイディア料理だ。キュウリが味のアクセントになっている。食欲ダウンしがちな梅雨から夏場には嬉しい一品だ。

ところでキュウリを輪切りにした時の切り口は何に見えるだろうか? 私は昔から「あ、アイスのパナップだ!」と思ってしまうのだが、時代が違えば見え方も違うものと思わされるエピソードがある。

というのも、江戸時代の武士にはこれが徳川家の葵の御紋に見えたのだそう。

葵の御紋といえは時代劇の水戸黄門でもおなじみの印籠に描かれていたもの。「頭が高い、控えおろう」とひれ伏すアレだ。だから武士たちは畏れ多いといってキュウリを口にせず、食べれば打ち首や切腹になるとおそれた。江戸時代の武士にとってキュウリはご法度だったのだ。

同じような理由が京都にも伝わる。祇園信仰が盛んだった京都においては、キュウリの切り口は八坂神社の「木瓜紋」と似ているということ、キュウリが神饌にも使われる特別な食材であるということもあり、禁忌作物となった歴史があった。祇園祭のある7月にはキュウリを食べないというしきたりも受け継がれている。

8月になるとお盆の準備にもキュウリが登場する。お盆に帰ってくる仏様の乗り物として作られるキュウリの馬とナスの牛。芋がらで足をつけ、トウモロコシのひげで馬の尾を作る。精霊馬と呼ばれるキュウリの馬は、脚の早い馬にかけ、仏様が浄土から早く帰ってきてくれるように願って作られ、帰りは牛に乗ってゆっくりとお帰りくださいの意味が込められる。

キュウリは水分が多いためいたみやすい野菜だが、この特性ゆえに驚きの風習にも使われる。

全国で行われる「キュウリ封じ」という行事は、体の悪いところをなぞることでキュウリに病魔を移し、これを土に埋め、無病息災を祈るというもの。土に埋めることで、キュウリが病もろとも土に還り、ひいては病気が治ると信じられている。水分が多いキュウリは分解されて土に還るのも早い。そこがキュウリ大抜擢の理由だったようだ。

キュウリの出番はサラダだけじゃない。目立たない存在ながらも、煮ても、炒めてもおいしい。ぶっかけ飯のアクセントにもなり、病の身代わりにまでなってくれる。

キュウリは夏の食卓を彩る健気な野菜なのだ。

(日本の旅ライター 吉野りり花)

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