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シューマイ、横浜の味 「何でもあり」で日本人を魅了

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「よく来たね。あれ買っといたよ」

私には「横浜のおじちゃん」と呼ぶ人がいた。おじちゃん、と言っても血縁関係はなく、父の学生時代からの友人だ。父とは学校も違えば住むところも違い「いつ、どこで友達になったかわからない」という間柄だったという。だが私は妙にこのおじちゃんになつき、またおじちゃんも妙に私を可愛がってくれた。

彼の魅力のひとつに「私の好物をよく覚えていて、それをわざわざ用意してくれる」というところがあった。好物をくれる人に悪い人はいない。

近所の肉屋の胡椒が効いた丸いコロッケ、元町で買ってくるスイスのミントチョコレート、中華街の蒸しカステラや月餅、どれも横浜で知った好物だ。中でも「博雅亭のシューマイ」は、私もおじちゃんも大好物。「これが本物のシューマイなんだよ」と得意げに笑う顔を、今でも思い出す。

シューマイといえば横浜、横浜といえばシューマイである。

いったい横浜市には「駅にはシューマイの売店を置くこと」という条例でもあるのだろうか?と勘ぐりたくなるほど、どの駅で降りてもシューマイの熱い歓迎が止まらない。特に本丸の横浜駅周辺は、なんと崎陽軒だけで14店舗もある凄まじさ。街を歩けばシューマイに当たるといっても過言ではない。

だがそれもそのはず。実はシューマイは、横浜から全国へと広がっていった食べ物なのだ。

外国文化は、港から入って来る。横浜港が開港したのは、1859年。明治に入るころには、欧米人より中国人居留者の方が多くなったという。

中国人の出身地でイチバン多かったのは広東で、彼らは山下町に固まって住んでいた。「中国人が3人集まれば中華料理店ができる」と言われるように、横浜にも中華料理店ができる。そう、日本最大の中華街の始まりである。

広東出身者がシューマイを作るのは自然な流れであったろう。中国には「北方的餃子、南方的焼売(北の餃子、南のシューマイ)」ということばがあり、特に広東のシューマイは有名である。日本での呼び名「シューマイ」も、広東語の読み方が元になったものだ。シューマイは横浜中華街が栄えるとともに、その名を全国に知られるようになっていった。

さらに「横浜=シューマイ」を決定づけたのが昭和25年、崎陽軒が横浜駅のホームに送り込んだ「シウマイ娘」である。チャイナドレス風の赤い制服を身にまとった、あでやかなシウマイ娘は、世の中にさぞかしインパクトを与えたことだろう。「横浜にシウマイ娘あり」「同じ買うならシウマイ娘から」と言われたのも無理はない。私だってそうする。

ところでみなさんは、餃子とシューマイのどちらが好きだろうか。

同じような位置付けに見えて、餃子とシューマイの実態は明らかに違う。庶民派の代表である街の中華屋さんで餃子を置いてない店はほとんどないが、シューマイはない店も多い。蒸すという作業は手間だし、コンロをひとつ余分に使う。ほとんどの場合、餃子より原価が高いのも否めない。

家庭でも扱いは微妙だ。餃子を手作りする家はいくらでもあるのに、シューマイを手作りする人は少ない。包むのが難しそう、蒸すのが面倒、いやそもそも今どき蒸し器のある家がどれほどあることか。

では人気がないかというと、そうではない。家庭でイチから作ることはなくとも、チルドや冷凍食品ではむしろ餃子を凌駕する。フライパンを出して洗い物が増える餃子より「レンチン」ですむシューマイは、忙しい現代人にはありがたい存在だ。

特に餃子の出番がほとんどないお弁当分野では、シューマイの一人勝ち。アレンジも多彩で、カレーのトッピング、中華まんの中身、コッペパンに挟んでシューマイドッグ、なんとランチパックの中身になったこともある。

みんなが大好きなシューマイ。だがひとつ、気になることがある。

いったいシューマイをシューマイたらしめている要素は何なのか。

肉?

それは違う。確かに肉シューマイが多勢ではあるが、海老、かに、ホタテ、シイタケ、ホウレンソウなど、シューマイには変り種がごまんとある。

イカ100パーセントの呼子のイカシューマイ、ジャガイモとタマネギとデンプンだけで作った群馬の「コロリンシュウマイ」、もはやおかずではなく主食と呼びたいおこわシューマイ。

最近は焼きそばシューマイという「ちょっと何言ってるかわからないですねシューマイ」も食べた。中身だけでシューマイを定義づけることはできないのだ。

では皮はどうか?

それも違う。いわゆるシューマイの皮で包んだもの以外のバリエーションが、これまた豊富にありすぎるのだ。薄焼き卵で包んだもの、青梗菜やレタスなど葉物野菜で包んだもの、餅米で包んだもの、シューマイの皮を細切りにして上からふわりとかぶせただけのもの「コロリンシュウマイ」のようにそもそも包んでないもの、これらすべてシューマイとして売られている。

皮や包み方でシューマイを定義づけることはできない。

また蒸すことも、シューマイの定義にはならない。

揚げシューマイはもちろんのこと、いったん蒸してからわざわざ焼いて出すシューマイもある。練り物で包まれたシューマイ巻きをおでんに入れることもあれば、シューマイそのものをおでんの具とする店もある。

あえて定義づけるとするならば「肉でも魚介でも野菜でもなんでもありの中身を、何か皮的なもので包むなりかぶせるなり覆うか覆わないかしたものを、蒸すか揚げるか焼くか煮たもの」だろうか。

なんだこりゃあ。

冒頭で触れた「博雅亭」は、中国人街から日本人街に進出してきた中華料理店だった。当時の店主はシューマイを日本人好みに改良することに、とても熱心だったという。

相模湾で捕れすぎた海老を安く仕入れては海老シューマイを作ったり、北海道の貝柱を入れてみたり、グリーンピースを上に飾ってみたりと、今のシューマイの基本はすでに最初からあったのだ。

残念ながら伊勢佐木町にあった本店はとうになく、高島屋にあった売店も今世紀に入ってから閉じた。父も、横浜のおじちゃんも、もういない。だが、博雅亭の作った流れは受け継がれ続けている。なんとも嬉しいことである。

(食ライター じろまるいずみ)

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