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食の達人コラム

国産ウイスキー、世界の頂点に 「ものづくり」極める 世界5大ウイスキーの一角・ジャパニーズ(1)

2017/5/19

麦芽の糖化

 味わいもかなり違う。一般にウイスキーの方が複雑な味わいが感じられる。その違いを生む要因の一つが、原料のデンプンを糖化する方法である。

 酵母はデンプンをブドウ糖、麦芽糖などに分解しないと発酵しないが、焼酎は日本酒と同じく糖化に麹を使用している。麹糖化と麦芽糖化では、糖化液の糖の組成が異なる。私の経験では、麦芽糖化発酵液の方がより複雑で多彩な香味を持つ。

 ウイスキーが通常2回蒸溜したり、数年かけて樽熟成する理由の一つがここにあると考えている。蒸溜液の複雑な味わいを整えるのに2回の蒸溜が、その蒸溜液を熟成させるのに長い時間が必要だからだと。

スコットランドのアードベッグ蒸留所=PIXTA

 かつてスコットランド、エディンバラの大学院で研究していた時、糖組成が酵母の発酵挙動に影響し、味わいの違いを生み出すことを発見した。飲みやすさという観点から見ると、焼酎は口中では滑らかで喉越しも穏和である。一方ウイスキーは、ある種の辛さがある一方で、味わいには奥深さがある。

■ウイスキーの酔いは創造力を駆り立てる?

 ウイスキーで着目したことがある。「酔い心地」である。

 これまで100人を超える人から感想を聞いてきたが、7割以上の人がウイスキーの「覚醒の酔い」を実感されていた。個人的な意見だが、ワインや日本酒で感じる「陶酔の酔い」のように身も心もとろけるような酔いではなく、例えば作家の筆がすすむような酔いが「覚醒の酔い」である。蒸溜後、割水以外何も添加せず、樽に詰めて貯蔵熟成したウイスキーがなぜこのような特徴的な酔いをもたらすのかまだ解明されていない。

ウイスキーは「覚醒の酔い」 創造力を駆り立てる?=PIXTA

 他にもアルコールそのものでは体重が増加しないことが知られている。添加物がないこともその特徴である。さらにウイスキーには樽ポリフェノール由来と考えられる抗酸化力があることも知られてきた。

 ウイスキーは中世には「アクアヴィテ(命の水)」と呼ばれていた。当時は医薬品として用いられていた可能性を想起させる文献もある。ラテン語の「アクアヴィテ」がゲール語の同義語「ウシュケバー」に取って代わり、「ウイスキー」になった。ウイスキーは今でも「命の水」なのだ。

 以上、お話をいくつかご紹介したが、ウイスキーにまつわるエピソードはたくさんある。次回以降、様々な話をお届けする。ウイスキーをかたわらにおいて読んでいただけたら幸甚である。

(サントリースピリッツ社専任シニアスペシャリスト=ウイスキー 三鍋昌春)

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