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食の豆知識

アスパラガス、緑か白か ソフトな缶詰、懐かしい食感

2017/5/10

「ねえ、アスパラ何本くらい食べる?」

 若かりし頃、友人の家に泊まった翌朝、朝食を作りながら彼女が尋ねてきた。キッチンからはバターのいい香り。ははん、朝からアスパラバターを出してくれるつもりだな。アスパラガスは大好きだし、アスパラバターは大好物だ。私はウキウキと「何本でも食べられるよ~。あるだけ出しちゃって」と答えた。

 ほどなく「お待ちどうさま」と運ばれた皿を見て仰天した。え? 白い?

 なんと彼女がバターで炒めていたのは、缶詰のホワイトアスパラだったのだ。しまった、最初に確認すればよかった。グリーンアスパラなら何本でもイケるが、缶詰のホワイトアスパラは大の苦手。私は山盛りのホワイトアスパラを前に、すっかり途方に暮れてしまった。

缶詰のホワイトアスパラを使ったサラダ

 幼い頃、私はとても好き嫌いの激しい子供だったそうだ。朝ごはんに出されたものが、昼になってもまだ飲み込めずに食卓で泣いていたと、母親はよくこぼしていた。

 成長するにつれ嫌いなものがひとつずつなくなり、気づくとなんでも食べるよいこになっていた。いくつか残った嫌いなものは、ベチャベチャのご飯や、甘すぎる煮魚など、調理に由来するものがほとんど。それとて食べられないほど嫌い、という訳ではない。ただ缶詰のホワイトアスパラだけは、どうしても飲み込めなかったのだ。

生のホワイトアスパラとグリーンアスパラ

 昭和の洋食屋のマストアイテムに、缶詰のホワイトアスパラがあったことを覚えておられるだろうか。単品のミックスサラダに、はたまた肉料理の付け合わせに、それはいつもうやうやしく鎮座していた。生まれたときからグリーンアスパラを食べてきた若い方には実感が沸かないかもしれないが、そもそもホワイトが先にあったのだ。いやホワイトしかないという時代があったのだ。

 大正11年に始まったホワイトアスパラ栽培と比べ、グリーンアスパラの歴史は意外に新しい。栽培が増えてきたのは1970年代、ホワイトとグリーンが逆転するのは実に80年代も終わりになってからだ。しかし今では、流通量の大半がグリーンアスパラである。

 ちなみに、グリーンとホワイトは基本的に同じ品種で、芽が出た後、土を盛って日光に当てずに育てると白くなる。缶詰は、ホワイトアスパラを水煮にした物だ。

ホワイトアスパラガスのミラノ風

 面白いことに、古くからアスパラガスを食べてきたヨーロッパでは今でもホワイトが主流。アスパラガス専用鍋や専用トング、目玉焼きをソース代わりに食べる定番料理「ミラノ風」の専用皿まであり、アスパラガスがいかに愛されているかがうかがえる。春の収穫を心待ちにし、出回り始めたらそれっとばかりに大量に詰め込むその様子は、日本のサンマや、イカナゴをめぐる狂想曲のごとくである。

 一方、比較的最近になってアスパラガスを栽培し始めたアメリカやメキシコなどの「アスパラ新興国」は、グリーンが主力。ただし全世界でならすと、グリーン vs ホワイトはほぼ拮抗している。

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