
子供のころに読んだ翻訳ものの本では、バターを塗ったパンのことは「バタつきパン」と訳されていた。小麦粉はメリケン粉、ワインはブドー酒の時代。古い料理書における西洋料理のレシピも、バターは「バタ」と表記され、なんとも外国への憧憬をそそったものだ。
お話の中の登場人物たちがお茶と一緒にいただくバタつきパンは、家でいつも食べるトーストよりずっとおいしそうに思えた。

ではバタつきパンを、人はどのように作るのだろうか。
あまりにも日常的な食べ物の場合、人は自分のやり方だけが正解と思いがちだが、それはバタつきパンにも当てはまる。今回もツイッターで「トーストへのバターの塗り方」を尋ねてみたところ、4つしか設定できない選択肢を飛び越えて、細かいマイルールのリプライをたくさんいただいた。

たとえばこんな調子だ。
・パンの上で溶けていく様子を楽しみ、完全に染み込むのを見届けてから食べる
・焼いている途中にバターの塊を乗せ、もう少しだけ焼き、半溶けバターを楽しむ
・バターをフライパンで溶かしてから、それをパンに吸わせる
・焼いたトーストを冷まし、そこにスライスしたバターを乗せる
・半分だけバターを塗ってしみ込ませ、もう半分は食べながらバターを乗せる

バターひとつになんというマニアック! どの人もみんな、バターを理想の状態にすることに必死である。十人十色、人それぞれに自分だけのバター道があるのだ。
市販のバターには黄色っぽいものと、白っぽいものがあるが、これは牛の食べ物によって決まる。青草をいっぱい食べれば黄色いバター、草以外に豆やコーンを食べれば白いバターとなる。他にも有塩、無塩、発酵、ホイップなどバターには多くの選択肢がある。今日の気分は、どんなバター?
(食ライター じろまるいずみ)