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「奇襲」で勝つビジネス心理戦

せっかく褒めたのに、傷つく人が出る理由とは?

2017/4/4

IYO / PIXTA

■銀座で使われる「究極の褒め言葉」を盗む

たとえば、会社で「会議に呼んでもらえない」という、いじめに近い仕打ちを受けた某大手企業勤務のXさん。彼女には嫌いな上司がいました。その上司に直接文句を言うことはなかったものの、彼女はやってしまったのです。Xさんは嫌いな上司に向かって「そのライバル」を褒めちぎってしまいました。「あの人って仕事できますよね」「頼りになりますよね」と。自分のライバルを褒めまくられた上司が「どうせ俺はだめだよ」と激しい怒りに燃えたのは想像に難くありません。しかし、Xさんはそれに気付くことができなかった。かくしてXさんはその上司から「会議に呼ばれない」という間接いじめでやり返されたのです。

女性同士であれば問題が生じないこともある「周り褒め」ですが、相手が男性の場合、ライバル・友人など「その人の周り」を褒めるのは、かなり危険を伴う行為です。言われた本人にとって、面と向かってけなされる「正の効果」より、周りを褒められる「負の効果」のほうが落ち込みが大きいのです。男性はこのあたりの心理をよく理解しているので、「周り褒め」には用心しますが、女性の皆様はわりと気付かないことが多い様子。どうぞお気を付けくださいませ。

この点、銀座などのいわゆる「高いお酒を出すお店」の女性は、そのあたりの男性心理を心得ていらっしゃるようで、そのトークに「なるほどなあ」と深く感心することがあります。彼女たちは「あの人はすごいんですよ」と周り褒めでお客をいったん落ち込ませておき、そのあと一呼吸置いてから、こう言うのです。

「○○さんのほうがすごいですけどね」

この付加的な一言は効果絶大。言われた本人は天にも舞い上がる心持ちになります。ただのヨイショではなく、いったん下げてからまた持ち上げる「時間差ヨイショ」の大技、これで並の男はイチコロです。

せっかくなので、彼女たちから学びましょう。読者の皆様、周りを褒めてしまったときは、それを終えてから、「○○さんのほうがスゴいですけどね」と本人へのフォローを忘れないように。この一言を付け加えるだけで、怒りを買う可能性は限りなくゼロに近づきます。

……え? どうしても嫌だ? 嫌いな上司にそんなこと死んでも言いたくない? ならばしかたありません。「周りを褒めまくって」本人をへこませる奇襲で思う存分、上司を攻めてください。ただ、その後にどんな仕打ちを受けても私は責任を持ちませんよ。

「奇襲で勝つビジネス心理戦」は火曜更新です。次回は4月11日の予定です。

田中靖浩(たなか・やすひろ)
田中公認会計士事務所所長。東京都立産業技術大学院大学客員教授。
1963年三重県出身。早稲田大学商学部卒。「笑いの取れる会計士」としてセミナー講師や執筆を行う一方、落語家・講談師とのコラボイベントも手がける。著書に「良い値決め 悪い値決め」「米軍式 人を動かすマネジメント」「実学入門 経営がみえる会計」(いずれも日本経済新聞出版社)など

値決めの心理作戦 儲かる一言 損する一言

著者 : 田中 靖浩
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