話しやしぐさの絶妙な「間(ま)」が客を動かす

ついでにお酒ネタをもう一献。広島にビールスタンド重富というお店があります。重富寛さんが経営するこのお店、私が知る限り日本で一番おいしいビールを飲むことができます。出されるのは地ビールでもベルギービールでもありません。きわめてふつうのアサヒ生ビール。しかし重冨さんはビールの注ぎ方だけで味を変えてしまうのです。メニューには「1度注ぎ、2度注ぎ、3度注ぎ、重富注ぎ」。

初心者の多くは「1度注ぎ」を注文し、ゴクッとやってその新鮮な味に驚きます。「ビールって、こんなに美味しかったのか!」と。そして2杯目、変化を求めて3度注ぎを試してみましょう。3度注ぎを注文するとすると、重富さんからこんな声が返ってきます。

「5分ほどお時間いただけますか」

素早く出てきた1度注ぎとちがって、3度注ぎのビールは時間が掛かるようです。この5分の間(ま)がとても重要なんです。待たされる間に「どんな味なんだろう?」と膨らみつづける期待。そして出された3度注ぎは、さっきと全然違う味わい。思わずビールファンは「おおっ」と歓喜の声をあげてしまうのです。ビールのうまさもさることながら、ここでも5分の間(ま)が重要な役割を果たしています。

正攻法はスピード勝負、そして奇襲は間(ま)で勝負。5分を縮めようと努力するのか、それとも5分を味方に付けるのか。あなたは人生と商売に、どんな間(ま)をつくりますか?

「奇襲で勝つビジネス心理戦」は火曜更新です。次回は3月21日の予定です。

田中靖浩(たなか・やすひろ)
田中公認会計士事務所所長。東京都立産業技術大学院大学客員教授。
1963年三重県出身。早稲田大学商学部卒。「笑いの取れる会計士」としてセミナー講師や執筆を行う一方、落語家・講談師とのコラボイベントも手がける。著書に「良い値決め 悪い値決め」「米軍式 人を動かすマネジメント」「実学入門 経営がみえる会計」(いずれも日本経済新聞出版社)など

値決めの心理作戦 儲かる一言 損する一言

著者 : 田中 靖浩
出版 : 日本経済新聞出版社
価格 : 1,512円 (税込み)


ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら
出世ナビ記事アーカイブ一覧
ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら
出世ナビ記事アーカイブ一覧