話しやしぐさの絶妙な「間(ま)」が客を動かす

最近、彼のように上手にヨイショできる人が減ってきました。ヨイショのルーツである噺家さんはよく言います。「落語は間(ま)がすべて」。同じ噺をしているのに、面白い落語家と面白くない落語家がいます。また、あるときは爆笑だったのに、別の場ではまったくウケないことがあります。これらはすべて間(ま)なんですね。

「効率的」であることが優先される近年のビジネス界では、何ごとも短時間で手早く処理することが求められます。そうなると必然的に「間(ま)の悪い」人が増えてくるようです。早いけれど味がない、正しいけれど面白くない、頭は良いけど魅力がない。そんなビジネスサイボーグたちであふれるビジネス界。だからこそ間(ま)で勝負するヨイショの奇襲がきわめて効果的なのです。

間(ま)が大切なのは個人だけではありません。すべてのビジネスにおいてもしかり。みんなそろってスピーディーな接客を心掛ける今だからこそ、一呼吸の間(ま)をおくだけで「おっ」と思わせることができます。

ビールスタンド重富の重富寛さん(写真提供は筆者)

ビールも注ぎ方の「間(ま)」で格段においしくなる

先日、高級ホテルの玄関ロビーで「バーはどこですか?」と訊いたときのこと。ここで「エスカレーターで2階に上がっていただき、その右側です」と案内されるのが間(ま)のない正攻法。しかしそのホテルは違いました。私の名前をきいた後、「ただいまバーに空席を確認してみますので、少々お待ちいただけますか」。そのあと、バーに着いた私に、入り口で迎えてくれた女性はにこやかな笑顔で、こう一言。

「田中さま、お待ちしておりました」

これだけでなんだか上等な気分になってしまい、高い酒をたらふく飲んでしまった私。なんと単純な人間なのでしょう。それにしても、かくも偉大なり、間(ま)の効果。

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