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xiangtao / PIXTA

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上司に意見するなんて、とんでもない。ましてや、しかったら最後、自分の居場所がなくなる。だから、そんなことは考えたこともないというあなた。本当でしょうか?

心の中では「今、正さないと、仕事が停滞する」「プロジェクトの士気が下がりかねない」。そんな思いを抱いたことはあるでしょう。しかし、「自分が憎まれ役になるのは損だ」「強権的な人だから報復が怖い」というあなた。「意見をしたところで、聞く耳を持たない人だから」とあきらめているあなた。そのままスルーしても体制に影響がないことならば構わないかもしれませんが、仕事の成否に関わることならば、見過ごすわけにはいきませんね。

とりわけ、あなたに部下がいる場合でしたらなおさらです。部下はあなたの背中を見て、仕事を覚え成長するからです。業績がアップしたり、コミュニケーションが円滑になったりと、あなたが進言することで、部署のムードが良くなり、上司からも「教えてくれてありがとう」「君のおかげで、助かった」などと感謝されるとしたら、意見をし、時には「しかる形」になるのも必要なことです。

ただし、「しかる」とは、一般に「目下の者の言動のよくない点などを指摘して、強くとがめる」ことですから、「しかる」よりも「意見をする」「進言する」というニュアンスで発言をしましょう。間違っても、「しかる」を超え、「怒り」を爆発させるような物言いは、誰に対しても慎むべきです。

上司に意見をする場合には「言葉を吟味する」「伝えたいことは一つに絞る」「マイナスプラス話法でやんわり伝える」の3点がポイントになります。順を追って説明していきましょう。

言葉選びを間違って怒りを買う人、言葉を吟味して感謝される人

同じような意味を持つ言葉でも、選び方を間違えると、相手は不快感を抱きます。たとえば、なかなか決断ができず指示を出せない上司に「優柔不断で困ります」といったら、怒りを買うのは明らかですが、「思慮深い」と伝えれば、思いは届きますし、自らの言動を正すきっかけにもなるでしょう。

同様に「気が小さい」→「デリケート」、「大ざっぱ」→「大胆」、「細かい」→「気がきく」、「鈍い」→「ゆったりしている」、「短気」→「正義感が強い」、「しゃくし定規」→「まじめ」……などに、変換して伝えるといいでしょう。

言葉を吟味して伝えれば、上司は落ち着いて聞く耳を持ち、その真意も理解します。かえって相手から感謝されることにもつながるはずです。

tkc-taka / PIXTA

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正してほしいことを一つだけ伝える

上司の間違いを正したり意見をしたりするときなど、複数伝えたいことがあったとしても、あれこれ並べ立てるのは避け、一番に正してほしいことを一つだけ伝えましょう。

例:「先ほど部長が提案なさったキャッチコピーはすでに他社が使っておりますし、●●についても、新鮮味がないですし、△△はもうはやらないと思います」

これではあら探しと受け取られても仕方がありません。揚げ足取りのようでもあり、それらが事実だとしても上司は怒りを覚えるでしょう。私でしたら、「私の勘違いかもしれませんが、先ほど部長が提案なさったキャッチコピーは他社が使っていると思うのですが(いかがでしょうか?)」などと、おうかがいを立てるような物言いで一つだけ伝えます。

この場合のポイントは、「私の勘違いかもしれませんが」というひと言です。このひと言がクッションになって、相手にはやわらかく伝わり、考える余裕が生まれます。それがきっかけとなり、関連する事柄も見直すようになるものです。

あなたにも覚えがあるでしょう。ストレートな物言いであれこれ指摘されたら、人間性までも否定されたような気持ちに人はなるのです。ですから上司はもとより、部下や同僚であっても意見や進言をする場合には、本当に正してほしいことを一つだけ、クッションになるような「ひと言」を添えて伝えたほうが、確実に届きます。

マイナスプラス話法でやんわり伝える

自分にとって好ましくないことを伝えられた場合を想定してください。

例:「あなたは仕事が遅い!」→落ち込むのは確実ですね

例:「あなたは丁寧すぎる」→いくらか印象は和らぎますが凹みますね。

例:「何事に対しても丁寧なのは分かりますが、●●については△△したら、より仕事がはかどると思います」→落ち込むよりも、行動を起こすでしょう。

ここで、相手が上司だと仮定して、さらにやんわり伝える話法にすると、「部長、少し、お話しさせていただいてもよろしいでしょうか?」とおうかがいを立て、「部長が思慮深く私たちをご指導してくださるのはうれしいのですが、●●については△△でお願いできないでしょうか? そのほうが素早く動けて、成果も上がると思うのですが」。いかがでしょうか?

そんな物言いは遠まわしで好かない。言いたいことはストレートに伝えるべきだと考える方もいらっしゃるでしょうが、相手を自分だと考えれば、やさしくやわらかく伝えられたほうが真剣にそのことを考えると腑(ふ)に落ちるでしょう。

怒りに任せて伝えれば、あなたの気持ちは晴れるかもしれませんが、軋轢(あつれき)を生むだけです。ビジネスシーンでは間違っていると思えば上司にでも指摘する。上司が忘れていることがあれば、確認をする。仕事を円滑に進めるには、意見することも必要なのです。

次回は、「微妙」「●●感」などで、ごまかさない気持ちの伝え方です。お楽しみに!

「臼井流最高の話し方」は水曜更新です。次回は3月15日の予定です。

臼井 由妃(うすい・ゆき)
ビジネス作家、エッセイスト、講演家、経営者。熱海市観光宣伝大使としても活動中。著作は60冊を超える。最新刊は「今日からできる最高の話し方」(PHP文庫)
公式サイト http://www.usuiyuki.com/

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