変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

会員登録をすると、編集者が厳選した記事やセミナー案内などをメルマガでお届けしますNIKKEIリスキリング会員登録最新情報をチェック

kou / PIXTA

kou / PIXTA

自己紹介の目的は何だと思いますか? 「自分の仕事を知ってもらい、お客様をつかみたい」「スキルやキャリアをアピールして、仕事につなげたい」「魅力をPRして、すてきな人と仲良くなりたい」など、いろいろな思惑があるでしょう。いずれにしても自分の能力や実績、仕事ぶりなどをアピールするのが自己紹介だととらえている人が、多いのではありませんか?

実際、パーティーや勉強会、異業種交流会などで自己紹介をする場では、こうした「自己アピール型」の自己紹介をする方は本当に多いものです。仕事にしてもプライベートの趣味にしても、その思いの深さや情熱は分かりますが、果たしてそんな自己紹介を「素晴らしい」と思う人は、どれほどいるでしょうか?

自己紹介を聞く立場になれば、分かるでしょう。あなたが思うほど、人はあなたのことに関心がありません。初対面であろうと顔見知りであらためて自己紹介をする場合でも、「自己アピール型」の話し手に、関心を示す人を探すのは難しいといえます。それなのに「この話をすればうける」とか「すごいと思ってくれる」などと思ってしまう「自意識過剰」の人はあとを絶ちません。すると「まだしゃべるのかな?」「場をわきまえてほしい」といった不快感を相手に与えてしまうのです。

自己紹介の目的はあなたの氏名を覚えてもらうこと

50人を超える人が集う「異業種交流会」に参加したときのことです。1人1分という約束で順番に自己紹介が始まったのですが、1分で終えた人は1人もいませんでした。名字だけ名乗り名前を忘れる人や、仕事の宣伝を延々とする人、勧誘まがいの発言をする人など続出して、誰一人、私は氏名を覚えることができませんでした。というよりも「覚える気持ち」になれなかったのです。

自己紹介の目的は、氏名を覚えてもらうことです。商品の宣伝やスキルやキャリアのPRは、お互いに氏名を認識してから。自己紹介が終わり、雑談の一つでもしたあとからでいいのです。

なぜ氏名を覚えてもらうことが自己紹介の目的なのでしょうか? それはあなたに興味を抱いたとしても、正しく氏名を覚えていなければ、相手が次の行動に踏み出すのに時間を要したり、面倒だと止めてしまったりして、せっかくの出会いのチャンスを生かすことができなくなるからです。記憶に残るのは「やけに熱く語っていた人」「愛社精神の強い人」「押しが強くて扱いにくそう」というような印象だけです。

私は著作や講演、コンサルタント業などを通じて、月に500人を超える人と新たに出会いますが、フルネームをきちんと名乗る人は数えるほどです。初対面なのにいきなり商品を売り込まれたり、関心を示していないのにサンプルや小冊子を渡されたり。戸惑うことばかりです。なぜ、このような行動をとるのでしょうか?

そこには「私はできる人」「自社の商品はすごい」「(お客様になりそうだから)何としてもこの人をつかまえたい」「(役ににたちそうだから)仲よくしないと損だ」というようなうぬぼれやたくらみがあるといえます。謙虚に徹していたら、ビジネス社会で生き残れないのは事実です。しかし、初対面の自己紹介から、ビジネスの話をぐいぐい盛り込むのは、嫌われる可能性が高いとしかいえません。

EKAKI / PIXTA

EKAKI / PIXTA

自己紹介は1分が原則

人がきちんと聞いていられる時間は、せいぜい1分です。関心のある話でも、3分も語られたら口を挟みたくなるでしょう。自己紹介に口を挟むことはできませんから「基本は1分」と心しておきましょう。そして、にこやかなあいさつとフルネームで始まり、好感を抱いてもらえそうなエピソードを一つ、そしてあいさつしフルネームを名乗って終わるのが原則です。

たとえば私の場合でしたらこんな感じです。

「(笑顔で)こんにちは、臼井由妃と申します。ビジネス書やエッセーの著作、講演のほか、熱海市観光宣伝大使としても活動させていただいております。熱海のグルメやおすすめ宿など、ご興味のある方は、後ほどお声をかけてくださいね。きょうはよろしくお願い致します、臼井由妃でした(お辞儀)」

営業職のビジネスパーソンでしたらこれでいかがでしょう。

「(笑顔で)はじめまして、山田一郎と申します。一郎といいましても、野球には縁がないのですが、シャープな外車を扱っています。ご関心のある方は気軽に話しかけてください。山田一郎でした(お辞儀)」

自分の名前に潜む「しくじり」

いかがでしょうか? こうした自己紹介にすると、氏名を覚えてもらうことができ、いい感じの人という印象を与えるでしょう。1分以内に収まり、相手はもっと話を聞きたい、知りたいとあなたに声を掛けてきます。

なお、自己紹介はゆっくりきちんと伝えるのがコツです。とりわけ氏名については、自分は言い慣れているので、流してしまいがちですから気をつけましょうね。

先の例は複数の人を前にしての自己紹介を想定していますが、一対一や同業者の前、あなたを誰も知らない場での自己紹介など、いくつかのパターンを、あらかじめ決めておくといいでしょう。

次回は、やんわりと上司を叱る、意見する部下の話し方です。お楽しみに!

「臼井流最高の話し方」は水曜更新です。次回は3月8日の予定です。

臼井 由妃(うすい・ゆき)
ビジネス作家、エッセイスト、講演家、経営者。熱海市観光宣伝大使としても活動中。著作は60冊を超える。最新刊は「今日からできる最高の話し方」(PHP文庫)
公式サイト http://www.usuiyuki.com/

新着記事

Follow Us
日経転職版日経ビジネススクールOFFICE PASSexcedo日経TEST

会員登録をすると、編集者が厳選した記事やセミナー案内などをメルマガでお届けしますNIKKEIリスキリング会員登録最新情報をチェック