ではなぜ、昨年あたりから日本の外食シーンでハワイ産パパイアが見られるようになったのか。

ハワイは火山性の土壌で水はけがよく、昼夜に適度な寒暖差があり、パパイア生産の最適地とされる。日系人を中心に1世紀以上にわたってパパイア栽培に取り組み、今やパパイア生産は観光業と並ぶ主要産業として、ハワイ経済の発展には不可欠の存在になっている。ところが1990年代に入り、パパイアが病気に襲われ、生産量が激減。全滅の危機にひんした。
絶滅すれば、多くのパパイア農家が仕事を失うことになる。そこで、何とかハワイのパパイア産業を守ろうと、大学の研究者を交えてパパイア生産者たちが一丸となって病気に強い品種への改良に取り組んだという。

1999年、苦労の末にできあがったのが「レインボー」という新しい品種だ。今は、年間1万トンを生産するパパイアの約95%が「レインボー」が占める。
新しい品種のため、日本へ輸入する手続きが整ったのが2012年末だった。
しかしその間に、病気が蔓延しなかったフィリピンから、古い品種のパパイアの輸入が増えていた。輸送距離が長いことからハワイ産は価格も高く、日本市場に「レインボー」が浸透するきっかけを、なかなか見つけることができないでいた。

フードビジネスでは、食材の仕入れ価格が重要であることは言わずもがなであるが、味や安定供給も価格に勝るとも劣らない重要な要素。実は、品種改良を重ねていくうちに、古い品種の個性だった臭いが薄れ「レインボー」はさっぱり甘い、フローラルな味になっていったという。
個性的な臭みはワイルドでそれなりに味わい深いが、臭みが少なくなることで、デザートだけでなく料理の材料としても使えるようになった。実際、ハワイの日本料理店「和さび ビストロ」では、「レインボー」を茶わん蒸しなど和食の材料として使っており、日本人旅行客を楽しませている。
また、フィリピンの古い品種のパパイアが船便のため、温度管理が不安定だったりする一方、「レインボー」は空輸で、安定供給という面では利があった。「レインボー」の販促・広報を手掛けるハワイ・パパイヤ協会では、品質面のメリットをじっくり、外食やホテルのシェフたちに的を絞って訴求を重ねた。できるだけ無駄を省き、流通コスト削減にも努めたという。

「おいしくて、調理しやすいことが導入の決め手になった」と、「レインボー」を導入したあるホテル関係者は明かす。
あとは、取り扱い量が増えれば価格もさらに下がることになるだろう。今のところは業務用中心だが、小売りの店頭でも「レインボー」を見かけるようになる日は遠くないと期待したい。
やはり「自宅でハワイの朝食を」が憧れである。
(中野栄子)