変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

会員登録をすると、編集者が厳選した記事やセミナー案内などをメルマガでお届けしますNIKKEIリスキリング会員登録最新情報をチェック

tomos / PIXTA

tomos / PIXTA

仕事やプライベートの場で、話し方を巡るトラブルは絶えません。「●●と伝えたよね」に対して「そんな話は聞いていない」と言われる。「説明したじゃないか」と念を押せば、「聞いたけれど、そういう意味だとは思わなかった」と、誤解を受ける。下手をすれば「そんな物言いをしなくてもいいでしょう!」と、反発されて険悪な関係になることもあります。

「言葉づかいがきついのは、性格がきついから」「性格が優柔不断だから、話し方も何を言っているのか分からない」というような話を耳にすることがあります。話し方と性格や人間性は関連性があると、私たちは少なからず考える傾向があり、それがまた話し方の悩みを生む要因にもなっています。

上司との会話ではストレスを感じがち

とりわけ、上司との会話はかみあわないことがあるものです。挙句の果てに「……で、結局何が言いたいの?」といわれる。上司との会話ではだれしも少なからずストレスを感じたことがあるでしょう。

実は私自身、かつて仕事の師と仰いでいた方に話が通じず、「なぜ私の話は通じないのだろう?」ともんもんとしてきた経験があります。社会人としての経験がほとんどないまま、病に倒れた夫に代わって経営者に就いた私には、吃音という悩みがありました。自分が会社のトップであるのに、部下に指示や連絡、命令がうまくできなかったなか、頼りにしていたのは、その方だったのです。恩師ともいえる方に見限られたら、それから先、私はどうやって「報告、連絡、相談,指示」などをしていけばいいのかと、途方に暮れました。

そこで、試行錯誤を重ねた末に、ある答えを見いだしました。それは、「相手の意図を察しながら聴き、質問する」ということです。

あなたは上司と会話をする際、きちんと聴いていますか? 望まれる姿勢は「聞く」のではなく「聴く」です。「聞く」には「聞き流す」というニュアンスが多少なりともありますが、「聴く」は耳をそばだて注意深く一言一句聞き逃さないようにするということです。

「ちゃんと聴いていますよ」と示すしぐさ

聴くときに大切なのは、上司のペースに合わせながらアイコンタクトを取る点です。そうでないと、上司は「きちんと話を聴いてくれているのだろうか?」と不安になります。不安は不信感につながり、あなたが仕事の成果に影響するような発言をしても、聴く耳を持ってくれないということになりかねません。

そして、前回の記事でお話ししたような「あいづち」を打ちながら聴きましょう。すると、「あなたの話をきちんと聴いています」「共感しています」というようなメッセージが伝わり、相手は心地よく話すことができ、上司の意図を察するための手がかりを得ることができます。

次に、上司に語らせるために質問をします。この際に気配りしたいのは、答えがイエスかノーにしかならない「クローズクエスチョン」ではなく、相手が思う存分に話せる「オープンクエスチョン」で行うことです。

たとえば、新規のプロジェクトについて熱弁をふるう上司に質問する場合に「これまでのプロジェクトより、数段難しいですよね」と尋ねたら、「そんなことはない」という返事を招いてしまいますが、「これまでのプロジェクトとの違いはどういう点でしょうか?」と尋ねれば相手は違いや特徴をきちんと伝えてくれるでしょう。オープンクエスチョンを意識するだけでも、上司との会話はスムーズになりお互いの理解度も増します。

hanack / PIXTA

hanack / PIXTA

会話がかみ合わなくなったら、魔法の質問で切り抜けよう

上司の話をきちんと聴きオープンクエスチョンで相手に気持ちよく語らせても、その発言の真意や意味が分からないことがあります。経験豊富な上司と入社したての部下では、そういう事態が生じるのは避けられません。そのとき、「理解したふり」をしたり「うなずき」でごまかしたりすれば、「あいつは何も理解していない」「話をふってもまともな答えが返ってこない」と思われかねません。

上司の発言がいまひとつ理解できなかったり、漠然とした質問を受けたりしたときには「●●とおっしゃいますと?」を会話に入れてみましょう。

上司「このプロジェクトは、わが社の命運がかかっているんだよ」

あなた「命運がかかっていると、おっしゃいますと?(どういうことなのでしょうか)」

上司「売り上げが30%は上がる可能性がある」

あなた「30%とおっしゃいますと?(その根拠はなんだろう)」

上司「他社の技術ではこれはつくれない。簡単にまねができない」

こんな調子で会話が進んで、なぜ命運がかかっているのかがつかめて、あわせて他社との関係も見えてきます。上司の「このプロジェクトには、わが社の命運がかかっているんだよ」という質問に対して、単に「はあ~、そうなんですか」や「それはすごいですね」と返すよりも、はるかに会話がかみ合いますし、情報の共有ができます。

「最近、どう?」が口ぐせの人には

上司や先輩があなたとのコミュニュケーションを求めて「最近、どう?」と話しかけてきたり、しばらくぶりに会う友人から「最近、どう?」というような質問を受けたりすることがありませんか? 共通の話題が見つからないときや近況を知らない場合に「最近、どう?」と質問をする人は多いものです。

その場合には「どうとおっしゃいますと?」や「どうといわれても……」で返すと、突き放す印象を与えます。むしろ「販売状況ですか? 新規の企画の件でしょうか? それ以外の案件ですか?」「仕事のこと? 趣味の釣りのことかな? それとも別のこと?」というように、話の中身を具体的に示すような質問で返すようにしましょう。

「最近、どう?」はプライベートの場では、かなり耳にします。話題がないときに会話の糸口を探る手段として使う人もいますから、そこはきちんとこたえてあげましょう。上司でも同僚や友人でも基本は同じです。会話の意図を察しながら聴く。気持ちよく語らせる。そうすれば互いの理解が増し、あなたの会話が通じない、かみ合わないということも解消されます。

次回は、ポジティブになる「愚痴」のススメです。お楽しみに!

「臼井流最高の話し方」は水曜更新です。次回は2月22日の予定です。

臼井 由妃(うすい・ゆき)
ビジネス作家、エッセイスト、講演家、経営者。熱海市観光宣伝大使としても活動中。著作は60冊を超える。最新刊は「今日からできる最高の話し方」(PHP文庫)
公式サイト http://www.usuiyuki.com/

新着記事

Follow Us
日経転職版日経ビジネススクールOFFICE PASSexcedo日経TEST

会員登録をすると、編集者が厳選した記事やセミナー案内などをメルマガでお届けしますNIKKEIリスキリング会員登録最新情報をチェック