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思い込み排し需要探る

一般用医薬品は1兆円の市場に100社強がひしめく激戦区だ。エーザイの高橋健太郎さん(38)は全国でおよそ1000店舗を持つドラッグストアへの営業を1人で受け持つ。顧客目線に立ち、時に取引先への直言もためらわない営業姿勢で担当チェーンでの売り上げを3年間で2割増やした。

2013年9月、高橋さんは愛知県にある大手ドラッグストア本社にいた。携えた提案書には風邪薬の売り場にエーザイの栄養剤「チョコラBBドリンク」を並べる企画案があった。資料を見た取引先の担当者は「面白い」と好反応を示した。すると翌年から、およそ半数の店で陳列場所が風邪薬の前に移された。

企画案が好評な理由は二つある。顧客目線と提案を裏付ける客観的データだ。

提案の1カ月前に訪れた店で、高橋さんは薬剤師と女性客の会話を耳にした。「風邪なら栄養ドリンクも一緒にどうですか」と、離れた場所に陳列した栄養剤を指さして薦めていた。高橋さんは「体調が悪い時は動きたくないはず」と考えた。最短で買い物を終えるには両商品を共に手に取れる陳列が必要だった。

顧客の目線だけを説いても取引先は動かない。そこで購買記録に着目した。すると「風邪薬と栄養剤を同時に買う割合は想像以上に高かった」。利便性が高まれば販売も増える。顧客と取引先の双方の目線が説得力のある提案へ結実した。

◇     ◇

日用医薬品は長寿ブランドが乱立する激戦区だ。例えば胃腸薬はおよそ400億円の市場に約20ブランドが集中。売上高の差も少ない。テレビCMが大量に流れ「消費者は何を選べばよいか分からない」状態だ。

高橋さんは配属から2年で「チョコラBB」群を前年比25%、胃腸薬「セルベール」は同70%と激戦市場で主力ブランドを順調に伸ばした。差は店頭PRの分かりやすさで生まれる。

消費者目線を磨くべく年に3日は終日、顧客の日常を体感できる場に赴く。15年には高齢者が集まる東京・巣鴨の地蔵通り商店街で気付きを得た。人気の飲食店で、高齢者が次々と揚げ物に箸を伸ばしていた。高齢者は揚げ物を敬遠すると考えていた高橋さんだが「いつまでも食を楽しみたいという思いに触れた」。

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