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hanack / PIXTA

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押しの強い相手からの誘いを断ることができず、困惑したことはありませんか? あるいは、好意からの発言とはいえ、「聞くのに耐えられない」「いただきものを断れない」と思いながらも「ありがとうございます、光栄です」などと、受け取ってしまったことは、誰しもあるでしょう。

「不要です」「関心がありません」と、心のうちをストレートに表現するのは、気楽なことかもしれません。しかし「ノー」を伝えるのは工夫が必要です。はっきり言えばかどが立ちますし、言わずにため込んでいると、ストレスがたまり誤解を招くこともあります。「ノー」が言えないために、人間関係にマイナスになることは多いのです。

「ノー」を言うのは、わがままではない

「ノー」は、相手の発言を受け入れないことではなく、ましてや相手を否定することでもありません。「ノー」と言うことで、言った人も言われた人も嫌な気持ちになるのではありません。よりよい関係を構築するためにこそ、「ノー」の意味がある。まずは、その事実を理解しましょう。

「ノー」を言うのは、わがままなことではありません。能力がないから、「ノー」と言うわけでもありません。

「ノー」で生まれるメリット

きちんと「ノー」と断ることはいくつものメリットがあります。「相手に誠実にありたいという素直な心の表れ」「できることとできないことを明確にする意思表示」「依存や強制から自分の身を守る安全策」「円満で豊かな人間関係を構築するかけがえのない言葉」「正しいことは正しいと言える勇気ある言葉」。それが「ノー」です。

こうしたメリットに気づかずストレスをため込んでいると、相手のことを嫌いになってしまいかねません。自分の都合で「ノー」と言うのではなく、相手を思いやるからこそ断ることができる。そこに焦点をあてましょう。では、具体的にどうしたらいいのか見ていきましょう。

気が乗らない誘いを断るために

恩師や先輩、仕事関係で利害のある方の誘いを断るのは難しいものです。「あなたにとってためになる」「キーパーソンとの出会いをセッテイングするから」などと誘いを受けたら正直、心が動かされるものです。

しかしその日に先約があったり、休養にあてたいと考えたりしている場合には、気乗りするものではありません。無理をすれば誘いに乗れないことはないと思っても、いつも相手の誘いに応じていたら「ひまな人」「人数集めのための頭数」として軽く見られかねません。ですからそこは、はっきり断るべきです。

この際の禁句は「無理です」「絶対にダメです」「興味がありません」というような結論だけを伝えることです。

xiangtao / PIXTA

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全否定式の「ノー」は禁じ手

すると相手は「全否定」された感を抱き、二度と誘ってくれないでしょう。逆を言えば、「縁を切りたい」と思う相手にはこうした対応で遠ざける策を講じるといいのです。

「興味があります」「おもしろそうですね」「素晴らしい企画ですね」というように、内容について関心を示すのもタブーです。相手の気持ちを察すれば、つい話に乗ってしまいがちになりますが、そうなると過度の期待を相手に与え、ペースにのせられ、結果、引っ込みがつかなくなります。

意思表示を明確にする

誘いを断る際には「お誘いをいただき恐縮ですが、今回は遠慮させてください」「お声がけいただきありがとうございます。大変光栄なのですが、今回は参加を見合わせさせてください」と、まずは相手の気持ちを受け止めましょう。それから理由を述べればいいのです。

言い添える理由は、断るときと同様に「忙しいから」「時間がないから」は通用しません。私でしたら「1年前から、●●が決まっていたものですから」「どうしても外せない会議がありまして」「私が主催する集まりが同時間にあるので」と、誘ってくれたあなたも大切な人ですが、「先約を守る」のが、ビジネスパーソンとしてあるべき姿だという姿勢を示します。約束の先延ばしや、どっちつかずの態度が一番いけないのは、言うまでもありません。

予定があるのに仕事を押し付けられたら、どうする?

終業間際に「今からお願いしたいことがあるのだけど」と、上司から仕事を頼まれることがあります。こうした場合、「先輩が(上司は)いつも急に仕事を振るのは、なぜですか?」「部長はいいですよね。仕事を振る人がいて……」などと皮肉とも取れるような発言をするのは、控えるべきです。

私でしたら、「今日は厳しいですが、明日の朝一番にとりかかりますが、いかがでしょうか?」「本当に申し訳ありませんが、今日はお世話になっている方との会食があり、断ることができません。ギリギリまでお手伝いをしますが、残りは明日の午前中に仕上げるということで、納得いただけませんでしょうか?」と、代替案を示しながら断るようにしています。

これは「全面否定」ではなく「相手の立場」を尊重する真摯な態度ですから、決して嫌悪されることはありません。素直に自分の気持ちを確認したら、相手を尊重しながら率直に誠実に断るのです。

「嫌われたらどうしよう」「仲間はずれになったら困る」なんて臆病にならずに、きちんと断るべきときは断る。毅然と「ノー」が言える人は、魅力のある人に映ります。

次回は、「余計なひと言」を、円満な「ひと言」に変える方法です。お楽しみに!

「臼井流最高の話し方」は水曜更新です。次回は1月25日の予定です。
臼井 由妃(うすい・ゆき)
ビジネス作家・エッセイスト・講演家・経営者。熱海市観光宣伝大使としても活動中。著作は60冊を超える。最新刊は「今日からできる最高の話し方」(PHP文庫)
公式サイト http://www.usuiyuki.com/

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