正月に食べたいめでたい美味 カニの王様・タラバガニ
紅白のおめでたい色合いで正月の食卓を華やかにいろどるタラバガニ。足を広げると全長1メートルを超えるものもあるタラバガニの別名はキングクラブ。ズワイガニの繊細な味わいとはまた違い、大きなカニ脚にずっしり詰まった身の食べごたえは「カニの王様」と呼ぶにふさわしい。
「タラバガニ」の名は鱈の漁場でよくとれることにちなんだもの。日本人とタラバガニの出合いにはこんなエピソードが。
明治時代、タラ漁船の船員が仕事をさぼったために海中に沈んでしまった網に、大きなカニがかかっていた。これがタラバガニを食べるようになったきっかけだった。
見た目はカニのように見えるが、タラバガニは実はヤドカリ類と共通した特徴を持つ。よく似たものにアブラガニがあり、アブラガニがタラバガニと偽って販売されていることもあるのでご注意を。
タラバガニとアブラガニの見分け方はふたつある。ひとつは体色で生のときならタラバガニは暗紫色、アブラガニが青紫色をしている。ゆでてしまうとどちらも赤くなり見分けにくくなるが、甲羅の真ん中にあるトゲの数で見分けることができる。タラバガニが6つ。アブラガニが4つ。ちなみに根室近海でとれる花咲ガニもタラバガニの仲間だ。
タラバガニのおいしい食べ方はなんといってもずっしり身が入ったカニ足にかぶりつくこと。プリプリで甘みもあり、カルシウムが豊富なことも魅力だ。絶妙な塩加減で茹で上げられたものは何もつけなくてもそのままでおいしい。
新鮮なものは刺身もいい。氷水につけると身が縮みパッと花が咲いたようになる。焼きガニにすると香りがたち、炊き込んでカニ飯にしても、ほぐしてトマトクリームのパスタにしてもおいしい。北海道では卵を「カニ子」と呼び塩辛にする。
もしタラバガニをまるごと一匹ゆでたものを食べる機会があれば試してほしいのが「ふんどし」だ。「ふんどし」とはお腹の三角の部分の中身をとりだしたもの。
弾力のある噛み応えと濃いカニエキスがしみだす独特の味わいがたまらない、知る人ぞ知る珍味なのだ。もちろん花咲ガニや毛ガニでも「ふんどし」が楽しめる。
刺身で花咲き、ゆでて、焼いて、最後は珍味の「ふんどし」まで。正月はカニを一匹まるごと味わい尽くしてみてはいかが?
(日本の旅ライター 吉野りり花)
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