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IT長者はなぜつまずいた?

この時期「天然氷の蔵元」ではそろそろ氷の「切り出し作業」が始まる。南アルプスの麓。凍えるような八ケ岳おろしが吹きすさぶ中、「天然氷職人」の高橋秀治さんが60キロもある氷の塊をせっせと運んでいる姿が目に浮かぶ。

高橋さんの前職はIT(情報技術)人材を養成する学校経営者。バブル経済全盛の1980年代後半。「これからはITしかない!」。パソコンのキーボードに触ったこともなかった文系大学生は、知識ゼロからパソコンを独学で習得、卒業と同時に起業した。

事業は右肩上がりで成長を続け、首都圏、関西圏と大都市を中心に多くの生徒を集め、従業員数も200人を超えた。年間売り上げも数十億円。「若きIT長者の一人」として「栄華」を誇っていた、のだが……。

東日本大震災で暗転、破産へ

高橋「40代半ばまでの20年ほど、そりゃあもうかりました……ところが思いもよらぬ、2011年3月の東日本大震災の1年後、破産して全て失いました……」

梶原「被災?」

高橋「直接ではありませんが……年間収入の7割が3~4月に集中する学校経営には決定的なダメージでした。入学者は激減。『この先どうなるんだろう』という重苦しい空気。それが在校生たちの『将来の夢のため学ぼう』という意欲をもそいだのか、退学者が続出……。IT技術者派遣もやっていましたが多くが派遣先から帰されて」

梶原「リーマンショックどころではない……」

高橋「私はありったけのキャッシュを注ぎ込みました。それも尽きた1年後。なんとか生徒、スタッフの引受先を探せたところでゲームセットでした。債権者会議、裁判、そして私は無一文。女房には『離婚してくれ』と言いましたが『ふざけないでよ』と存外元気だったのが救いでした」

その奥さんが高橋さんを「天然氷職人」に導くこととなった。

意外に高収益のかき氷

高橋「就職先を探してぷらぷらしていた11月のことでした。女房が突然『谷中のかき氷を食べたい』というんです。かき氷で気が晴れるなら安いもんだと、行ってみたら1杯900円! それなのに40分待ち? 2度ビックリです」

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