触って感じて、酢の歴史を学ぶ ミツカンミュージアム
愛知県半田市にあるミツカンミュージアム。1986年にオープンした酢の総合博物館「酢の里」を2015年11月にリニューアルして以来、予約制の入館は、毎週末、ほぼ「満員御礼」が続く人気ぶりだ。なぜそれほどまでに多くの人を魅了するのか。実際に足を運んでみた。
ミツカンは、1804年創業。初代中野又左衛門が江戸に起こったすしブームに目を付け、米酢ではなく、酒粕を使った粕酢の製造に本格的に乗り出す。海運に恵まれた半田の地勢を生かし、江戸に大量の粕酢を売り込み、現在の礎を作った。
そんなミツカンの歴史と醸造技術、食文化を壮大なスケールで紹介するのが、ミツカンミュージアムだ。ただ見るだけではなく、触れたり、肌で感じたりと「実体験」できるしかけが随所に配されているのが特徴だ。
内部は全部で5つのゾーンに別れる。最初の「大地の蔵」では、江戸時代、そして現在の酢の醸造技術を紹介する。木の道具を使った昔ながらの醸造や実際に菌膜が張り、発酵が進んでいく様子などを見ることができる。
中が見えない木樽への酢の詰め具合を、木槌でたたき、音の違い聞き取ることで確認する。
次は「風の回廊」。ミツカン創業の地、半田の町を紹介する。
クライマックスは「時の蔵」。ミツカンの変革と挑戦の歴史を紹介する。
ホールには半田から江戸まで酢を運んだ「弁才船」を約20メートルの規模で再現、いかにスケール大きく江戸に打って出たかを肌で感じることができる。
最後は「弁才船」の甲板に立ち、大画面で半田から江戸へのみちのりを体験する。映像だけでなく、嵐、そしてしけの遠州灘を肌身で感じさせる演出は、テーマパークのようなスケールの大きさだ。
「水のシアター」では、食といのちのつながりを、美しい映像で紹介する。
最後の「光の庭」は、明るい開放的な空間ですしや鍋など酢を使った料理を体験できる。粘土を使ってにぎりずし造りに挑戦したり、食にまつわるクイズをエクササイズしながら答えたり…子どもたちが喜ぶ仕掛けが満載だ。
インスタント写真を使って、自分の顔が入ったオリジナルラベルの味ぽんを作ることもできる。
大仕掛けの弁才船はもちろんだが、あちこちに押したり引いたり回したり…手や体を動かして体験するコーナーが用意されていて、子どもたちが大喜びする姿が目に浮かぶ。
それでいて、1回25人まで、90分のコース制になっていて「人が多くて近寄れなかった」にしない工夫がなされているところが人気の秘訣なのだろうか。
予約は、ホームページ(http://www.mizkan.co.jp/mim/)からのネット予約あるいは電話で受け付けている。
(渡辺智哉)
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