佐助のサバなれずし なれずしとへしこのいいとこどり
探訪:若狭湾の味(4)
若狹湾岸に限らず、福井県ではサバが好んで食べられている。小浜では「浜焼きサバ」と呼ばれるサバを丸ごと1尾串刺しにして焼くものは、大野や勝山など山間部では「半夏生サバ」と呼ばれ、やはり名物になっている。
そしてサバのなれずし。ご飯を使い、サバを乳酸発酵させる保存食で、鯖街道のほぼ中間点に位置する朽木では、しめサバを使った若狭湾のサバずしと琵琶湖のフナのなれずしと並んで、サバのなれずしが売られていた。
勝山では、2月の左義長祭のときだけ、サバなれずしを食べるのだという。
朽木も勝山も、そして若狹湾岸も基本は生サバからなれずしを作るのだが、サバ養殖が始まった小浜市の田烏地区にはちょっと変わったサバなれずしがある。サバのぬか漬け・へしこを使ったなれずしだ。
田烏の民宿「佐助」は、伝統的なへしこ作りで知られる。そんな自慢のへしこを水で塩抜きし、なれずしにしたのが「佐助のサバのなれずし」だ。
フナほどではないにしろ、なれずしには特有の生臭さがあり、好き嫌いがある。また、へしこも強いうまみ成分を持つが、そもそもが塩漬け。強い塩気を好まない人も多い。そんななれずしとへしこの「いいとこどり」をしているのが、佐助のサバのなれずしだ。
自家製のへしことともに食べ比べる。塩味が和らいだへしこはうまみをしっかりと味わえ、乳酸発酵特有の飯の酸味と合わせて、とてもまろやかなうまみを感じる。勝山のなれずしもかなりクセのないなれずしだったが、やはりへしこならではのうまみと合わさることで、抜群に味が広がる。
焼くとまた、表情を変えるのも佐助のさばのなれずしの特徴だ。
焼くことで、飯の酸味が抑えられ、米ならでは甘味が引き立つ。生では味わうことのできなかった味わいを楽しめる。
地元では唯一無二と言われている佐助のサバなれずし。サバ好き、へしこ好き、なれずし好きならぜひ一度食べてほしい逸品だ。
(渡辺智哉)
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