しょっぱくてすっぱい、昔ながらの梅干し 若狭町の梅
探訪:若狭湾の味(2)
日本海につながる5つの湖が連なる、国指定の名勝・三方五湖を擁する福井県若狭町は、日本海側を代表する梅の産地だ。
三方五湖の一番奥に位置する三方湖沿岸の西田地区は、日本海側ながら温暖な気候で、湖岸は一面の梅林になっている。
同町の梅は「福井梅」と呼ばれ、天保年間以来の長い歴史を誇る。実の片側にほんのりと赤みがさした梅干し用の「紅映(べにさし)」と梅酒に使われる「剣先(けんさき)」が代表的な銘柄になる。
若狹の梅干しの魅力は「昔ながらの味」。今では塩分濃度10%を切るような減塩梅干しも登場しているが、ここではしっかりとしょっぱい梅干しが多い。シソをしっかり揉み込んだ、自然の赤みもまた魅力だ。
梅干しだけではない。はちみつに漬けた甘い梅干しもある。シソで巻いた甘露煮も。おやつ感覚の梅だ。
そして紅ショウガ。牛丼屋のカウンターに山積みされた真っ赤な紅ショウガに慣れ切った東京もんにとっては、ショウガをまるごと梅酢に漬け込んであるのが新鮮に映る。ミョウガの梅酢漬けとともに、やさしく深い味わいを楽しむ。
梅シロップは焼酎、ソーダとともに梅チューハイに。酸味と甘味のハーモニーで、ついつい飲み過ぎる。
梅びしおは、梅干しの種を取り、塩抜きして、砂糖、かつおだし、シソを加えて、じっくりと炊きあげたもの。炊きたてのご飯にのせて、お茶づけに、ドレッシングの素材に、そのままなめて酒のつまみに…多様な食べ方ができる。
若狭町では、交流と体験を目的にした「農村民泊」も行っている。梅干しづくりなど豊かな自然の中で農業を体験できる。夜になれば、コイなど湖の魚で、地元の方と酒を酌み交わすのも楽しい。サバやカニ、若狹がれいなど海の恵みにも事欠かない。
朝ご飯は梅干しと焼きへしこがメインディッシュだ。
若狭湾を代表する観光スポットのひとつ梅丈岳山頂公園から見渡す日本海と三方五湖も絶景だ。
美しい眺めとおいしい料理に恵まれた若狭町に、梅干しを買いに出かけてみてはいかがだろうか。
(渡辺智哉)
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