バージンオイスター カキ好き垂涎の味、禁断の初体験
「海のミルク」と呼ばれるほど栄養豊富なカキ。その味は育った海の環境で決まると言われる。南半球のカキ、北半球のカキ、日本のカキ…それぞれふるさとの海が違えば、おどろくほどに味も違うのだ。
世界のカキを食べ比べてみると、同じカキなのにこんなに味が変わるのかと驚くことだろう。もちろん生育時期によっても味が変わるが、私が食べたものは日本産のものは肉厚で香りがよく、タスマニア産の「キャッツアイ」はほおばれば口の中に濃い海の香りが広がり、シアトル産のパシフィックオイスターはクリームソースを食べたのかと錯覚するくらいにクリーミーでなめらかだった。
日本では冬においしくなる真ガキ、夏に旬を迎える岩ガキの2種類がおなじみだが、我々が食しているもののほとんどは養殖の真ガキだ。
北海道の厚岸、三陸、三重県の的矢湾など産地も色々だが、海の環境によって細長いもの、丸みをおびたものなど形も変わる。
ところで今、カキ好きの間で注目を集めるカキがあることをご存じだろうか。その名も「バージンオイスター」、つまり「処女ガキ」。まだ一度も卵を産んだことのないカキのことだ。この話題のカキを味わうべく、広島のかなわ水産のものを入手した。
小さな瓶に詰まったバージンオイスターは広島の大黒神島深浦の清浄海域で育てられたもの。カキは通常海中の固形物に付着してから18カ月から24カ月たってから収穫されるが、バージンオイスターは6カ月から11カ月のうちに収穫される若々しいカキだ。大きさは2センチ弱で、通常のカキとくらべると非常に小ぶり。これを洗わずにそのままいただく。
お好みでレモンをしぼっていただこう。フレッシュで、カキ特有の苦みが少なく、ヒラヒラとやわらかい。若くて新鮮で、甘く、そして海そのものを味わっているような爽やかな後味が舌に残る。
これが魅惑の「処女の味」なのか――。カキ好き垂涎の"禁断"の味わい、これは一度試してみる価値ありだ。
(日本の旅ライター 吉野りり花)
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