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会話をしていて、この人は「仕事ができる」「能力がある」「心ひかれる」と、感じるときはありませんか? 初対面で名刺を交換した際に、「一流企業にお勤めだから頭がいいのだろう」と捉えたり、肩書を見て「偉い人」と感じるときはあるでしょう。

一流ブランドのスーツやいかにも高級そうな靴を身につけていれば、「お金持ちに違いない」と思う方もいるでしょうし、余裕がある立ち振る舞いから、「育ちの良い方」と感じる。そういう受け止め方は、ありますね。

しかし、「仕事ができる」「能力がある」「心ひかれる」と感じるのは、そうした条件とは別のものだと、私は考えます。

一流企業の名刺がなければ、相手にされない。肩書がなければ、信用されない。

一流ブランドの服や小物を身につけていなければ、仕事ができない。

決して、そんなことはありません。

私は、毎月500人を超える方と新たに出会いますが、初対面で「仕事ができる人に違いない」「仲良くなりたい」と魅力を感じるのは、外見が特別いい人やすごい肩書の持ち主ではありません。もちろんどこから見ても有能な人はいますが、彼らに共通するのは「信頼感」を抱く話し方をしているということです。

逆をいえば、どんなに素晴らしいキャリアやスキルを持っている人であっても「信頼されない話し方」をしていれば、ビジネスの場で成果を出すのが難しいだけでなく、プライベートでも、豊かな人間関係を構築するのは厳しくなります。

信頼される人は、意志の強さを明確に表す

「信頼感」はどこから生まれるのでしょうか? 約束の時間に遅れない、仕事の納期を守る、嘘をつかない、きちんとした言葉遣いをしている、ムダ話をしないなどは、人が信頼を寄せる基本条件です。

「信頼される話し方」以前に、これらができていなければ、どんなに話し方を学んでも「上滑り」で説得力はありません。まずはビジネスパーソンとしての基本姿勢ができているかを、確認しましょう。利害関係で自分の方が上だから、少々甘えてもいいなんてことは、ビジネスの世界では許されません。

「信頼される人」は、自分の意志や主張、判断力を持っています。それらを、話し方で明確に表します。彼らは意志が強いですから、目の前に困難が立ちはだかっても、想定外のトラブルに見舞われても、逃げずに取り組みます。おじけづいて発言ができないとか、周囲の人に流されることはありません。生き方の軸がぶれないのです。

あなたにも経験があると思いますが、「こんなことを言ったら嫌われるかもしれない」「仲間はずれになるのが怖い」などという理由からあいまいな物言いをして、相手に期待感を与えた結果、誤解が生じ窮地に陥る。また、消極的な発言に終始して、周囲から評価されない。それでは、自ら「信頼感」を喪失させているようなものです。

「リーダーシップ」を発揮するために

「信頼される話し方」ができる人は、周囲の人を動かし、リーダーシップを発揮することができます。彼らの話し方は、わかりやすさと前向きさが魅力です。

具体的に彼らがどんな話し方をしているのか、見ていきましょう。

1.要点から整理して話す

「結論→理由→補足説明」と、信頼感を抱く人の話し方は、分かりやすく整理されています。たとえば会議や打ち合わせの席で、「私はこの販促案を推します」と、結論を先に伝え、「なぜならば他の選択肢に比べ、コストが半分ですむからです」と理由を述べ、「コストと効果をそれぞれの案件別に比較した資料をご覧ください」と、補足説明をあとにする。

また伝えたいことが複数あれば、「きょうはお伝えしたいことが3つあります」などと、相手に聞く姿勢を促すために「数字」を示すのもいいでしょう。

2.語尾を明確にする

せっかく素晴らしい提案や話をしても、語尾が不明瞭ですと台無しになります。語尾には、話し手の意思が反映されるものです。自信がなくても不安材料があったとしても、「私はこう考えます」「私はこういたします」と、語尾をはっきりさせましょう。

「こう思うんですけれど……」「うまくいくはずです」などと、語尾をにごすのは相手の顔色をうかがい、出方を探っているようで、不快感を与えるでしょう。これでは、きちんとした自己主張にはなりません。

3.「できない」「やりたくない」など「ない発言」はやめる

仕事に追われ、時間に追われ、正直疲れ果てている時は誰しもあります。働く主婦の方ならば、仕事に育児、家事とその負担は想像を超えます。

そんなとき上司から「あすまでにこの書類をまとめてくれ」と指示があったとしましょう。あなたは納期が迫った仕事を複数抱えています。どれもが大切な仕事で優先順位をつけるのも難しい。そんなときすぐに「できない」「無理です」とやりたくない意思表示をしますか?

私でしたら、「上司からの頼まれごとは本当にあすまで片付けなければいけないのだろうか?」と考えます。そのうえで「恐れ入りますが、今、○○と○○の仕事を抱えておりあすまでに納めなければいけませんので、そのあとに取り組ませていただきたいのですが、いかがでしょうか?」と提案をします。「これならできる」という代案を、提示するのです。

仮に無謀な指示だとしても「できない」「やりたくない」とは、口が裂けてもいいません。「致しかねます」「大変申し上げにくいのですが、ご意向に沿いかねるかと思います」と、「ない」がついた言葉を避けてお話しします。このように話せば明確な意思が伝わりますし、代案を提示すれば前向きな話になります。相手との人間関係にヒビが入ることはありません。

これらの3つのポイントをおさえて会話をすれば、周囲から「あの人の話を聞くとやる気が出る」と言われるようになります。「信頼」という無形の財産を、あなたは得ることができるのです。

ぜひ参考にしていただき、意志の強さをスマートに出した話し方をしてくださいね。

 「臼井流最高の話し方」は水曜更新です。次回は12月14日の予定です。

[2016年11月22日公開のBizCOLLEGEの記事を再構成]

臼井 由妃(うすい・ゆき)
1958年東京生まれ。健康プラザコーワ、ドクターユキオフィス代表取締役。理学博士、健康医科学博士、MBA、行政書士、宅地建物取引士、栄養士。33歳で結婚後、病身の夫の後を継ぎ会社経営に携わる。次々にヒット商品を開発し、独自のビジネス手法により通販業界で成功をおさめる。日本テレビ「マネーの虎」に出演。経営者、講演者、経営コンサルタントとして活動する傍ら、難関資格を取得した勉強法も注目される。ビジネス作家としても活躍。著作は50冊を超える。

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