東京の区民球場が埼玉に 「越境立地」の事情を探る千葉には都立霊園 用地確保難しく

東京都中央区が埼玉県三郷市の江戸川沿いに移した区民球場
東京都中央区が埼玉県三郷市の江戸川沿いに移した区民球場
東京都や23区の施設は当然、都内にあると思われている。ところがごく一部、都外に設置せざるをえなかったケースもみられる。周辺県に立地を頼る施設の事情を探った。

都心から北東方向に20キロほど離れた埼玉県三郷市。江戸川沿いに40面ほどの野球場がつらなり、草野球やソフトボールを楽しむ愛好者が集まる。うち2面には「中央区」の貼り紙がある。2015年5月、東京都中央区が区民球場を三郷に移した。区内に球場が3カ所あったが、そのなかの「晴海運動場」を廃止した。都有地である晴海運動場は20年東京五輪の選手村の用地となるため、区が都から借りつづけることができなくなった。

区スポーツ課は「野球は人気で、2カ所だけでは足りない」と話す。代替施設を探したが、23区内にはみつからなかった。港区なども三郷で球場を確保しており、中央区も追随した。臨海部のマンションを中心に今後、人口が増える見込み。同課は「近くで区民が運動できる環境を整えたい」とするが、都心での施設確保は悩ましい問題だ。

東京都が管理している都立公園・霊園のうち、1カ所だけ都外の施設がある。千葉県松戸市の八柱(やはしら)霊園で、105ヘクタールの敷地に数万の墓がたつ。青山霊園(東京・港)の4倍の広さがあり、マイカーでの墓参者も目立つ。

八柱霊園は1935年(昭和10年)に開園した。都公園緑地部によると「郊外につくろうとしたが、東京の東側はすでに宅地化が進んでいた」ため、都内で適地を探せなかった。当時の千葉県八柱村で土地を確保。その経緯から、都民に加え、八柱村の後身である松戸市の市民も利用できる。

火葬場も日常生活に不可欠だが用地確保が難しい。高齢化による火葬場の不足に備え、東京都世田谷区や目黒区は区外に目を付けた。大田区などと共同で臨海斎場(東京・大田)を開設。住民感情に配慮し、住宅地から離れた倉庫街にある。

都民が毎日使う水道水は、奥多摩町から山梨県にかけた水源林からきている。1901年(明治34年)に、当時の東京府が皇室が管理する「御料林」を譲り受けた。水源林の全面積の6割にあたる約1万4000ヘクタールの巨大な都有地は、甲州市など山梨県内にある。都は「東京水」のブランドで水道水の品質をPRするが、多くは甲州産といえる。

水源林の都有地の多くは山梨県内にある(甲州市)
中央区立の全寮制「宇佐美学園」は静岡県伊東市に


■ほかにもある区外施設
23区が区外に持つ施設として、体の弱い小学生らが生活する全寮制の学校がある。中央区は静岡県伊東市に区立の「宇佐美学園」を持つ。かつては23区の大半が運営していたが、財政難などを理由に多くが閉鎖した。
都公園緑地部によると、八柱霊園は東京で初めて「霊園」という名がついた施設だという。今では一般的だが、それまでは「墓地」が多かった。八柱には、柔道家の嘉納治五郎、詩人の西条八十ら有名人も眠る。