金型踏んづけて柿の種、試行錯誤の柿チョコ 誕生秘話
世の中にはいったい誰が最初に考えたのか、不思議でならない食べ物が多々存在する。猛毒を持つふぐの卵巣を糠漬けにしたものなどはその極みだが、冬になると時々目にするあの食べ物だって相当に不思議だ。
甘いのか辛いのかわからないアレ。
そう、柿の種にチョコをかけた「柿チョコ」だ。
「柿の種」の元祖といえば新潟の米菓メーカー「浪花屋製菓」だが、柿の種が生まれたのは偶然の産物だった。
創業者があられを作るための小判型の金型をうっかり踏みつぶしてしまい、元に戻らなかったため、そのままあられを作ったところ、あの形に。形が柿の種に似ているということで、売り出されたのだ。
その浪花屋製菓が平成6年に世に送り出したのが「柿チョコ」。しかしまた、なぜピリ辛の柿の種にチョコをかけるという発想になったのだろうか。
実はきっかけは、KIOSKとの商談の中での担当者の一言だった。「柿の種とチョコレートはよく合うから、チョコレート掛けしてみたら」。
当時、柿の種にチョコレートをからめた洋菓子はあったものの、それは駅の売店で気軽に買えるような菓子ではなかった。ならば作ってみようということで商品開発がはじまった。
とはいえ、すぐに納得のいく柿チョコが作れたわけではない。柿の種に合うおいしいチョコレートを探すことから始まり、コストの高いチョコレートをどのくらいの量かけるのか、試行錯誤が続いた。
柿の種の味や食感をちゃんと残しつつ、まんべんなく全体にチョコをかける。この絶妙なバランスが完成したのがオリジナルの「柿チョコ スイート」。以降、「ホワイト」、「カフェオレ」、「きなこ」と味を増やし、平成21年に「イチゴ味」、平成26年には限定発売の新潟ならではの「笹だんご味」が発売された。
発売当初、世の中からの反応はつれなかった。「キワモノ」「ゲテモノ」扱いでまったく受け入れられない。
しかしその後女性ファッション誌にとりあげられ、徐々に口コミで広がり、人気に。「素敵なミスマッチ」が人々の心をとらえたのだ。
柿チョコは品質を維持するため、涼しい時期だけ販売される。柿チョコのシーズンは冬、まさにこれから。季節限定の"ミスマッチ"の味をお楽しみあれ。
(日本の旅ライター 吉野りり花)
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