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業界5社が統合し、国内最大の総合住生活企業LIXIL(リクシル)が誕生して5年。およそ150の国と地域、約300の事業会社で働く従業員は8万人にもなります。そんな巨大企業の本丸で、人事・組織戦略を担うグループリーダーの仕事哲学とは。

「自分の思いを仕事にのせる」

――8万人が働くグローバル企業の人と組織を考える

私がLIXILにきて、まもなく4年になります。現在のLIXILは2011年に5つの事業会社が一つになり形づくられました。サッシやバスルームをはじめ数多くの分野で高い国内シェアを誇るとともに、海外でも「Water Technology製品」シェア首位など、日本発のグローバル企業として、世界の人々の暮らしを多方面から支えています。

私が担っているのは人事です。入社時はリーダーシップトレーニングの実施や海外エグゼクティブ向け研修の立ち上げといった人材開発を。その後、「LIXIL VALUES」を全世界へどう展開するか、LIXILを「強くて、良い」会社にするための組織開発などに取り組んできました。

そして現在は、世界の従業員数約8万人という巨大な組織で、「ONE LIXIL」が持つべきグローバル資格制度、経営トップが行う組織・人材の議論の場など、人事関連のグローバル共通プラットフォームづくりに奔走する日々です。とても充実しています。

――目指すは、人事のプロフェッショナル

私は今年40歳。LIXILは4社目です。この会社には、人事のプロフェッショナルになるために転職しました。実は20代の頃は「結婚したら仕事は辞めようかな」という程度にしかキャリアを考えていませんでした。

そんな私がこうして人事のプロを目指して働くようになるまでには、いくつかのきっかけがありました。ひとつは、前職の外資系コンサルティング会社で仕事が面白いと感じるようになったこと。もう一つは、MBA(経営学修士)で学んだことです。

――31歳で外資系コンサルティング会社の採用リーダーに

外資系コンサルティング会社には20代半ばで入り、8年間在籍。初めて人事や採用の仕事に携わったのがこの会社でした。入社して4年ほどして採用部門のリーダーになりました。31歳の時です。

管理職になり、本業の採用業務を推進しながら、目の前の部下の成長という課題に向き合うことになりました。マネジャーになった当初、私の思いは「まず意見を聞こう」「相手に考えさせよう」でした。

しかしある日、部下の意見に耳を傾けようと問いかけたところ「わからないから答えを聞いている」と返されたのです。思いがけない返答に驚きました。人はどうしたらモチベーションをもって働けるのか、マネジメントの役割とは何かを深く考える機会になりました。

「部下」はひとくくりではない。一人ひとり違う。だから人によって、任せたほうがよかったり、煙たがられるくらいアドバイスする必要があったりする。個々を見て対応することが大事であること、人から嫌われるのを恐れてはいけないことなどを、身をもって学びました。

――MBAを通じて過去のキャリアに名前が付き、未来が見えた

やがて7年が過ぎました。人事の仕事にも慣れ、チームメンバーの個性や長所も見えるようになり、マネジメントの経験も身についてきた頃、MBA取得のためにビジネススクールに通い始めました。社内にMBAホルダーが多かったこともあり、自然な選択でした。

今思えば、これまでの自分のキャリアに名前を付けにいったとも、これからどう生きていくのかを見つけにいったとも言える、貴重な2年間になりました。優秀な仲間と切磋琢磨(せっさたくま)し、「人事のプロを目指す」という将来像がクリアになり、その結果、LIXILで働く今につながっています。

平日の昼間に働きながら、夜と土曜日にMBAに通い、課題やグループワークをこなす生活は決して楽ではありませんでした。MBAに通うことにより時間的な制約は一時的に増えましたが、卒業後、次のアクセルをより強く踏み込めたように思います。

――ミッシングパーツを埋めながらキャリアを重ねる

目指すべきものが決まれば、欠けているところ(ミッシングパーツ)を探して埋めていくという道筋が見えます。それが社内にあれば転職する必要はないと思いますが、私の場合、人事として違う組織に行ったほうが、より目指すキャリアに近づけると考えました。

LIXILは様々な世代の従業員が働いていて、かつ、日本発の新しいグローバル企業です。とても魅力的な組織だと思いました。グローバル化を志向する過程で経験できることは数多くあると思いましたし、これまで学んだことをこの会社のために役立てたいと思いました。

――お互いの仕事を認め合い、関係を築く

実は人事という仕事にとって、転職のリスクは小さくありません。全社員の顔、キャリア、性格など、あらゆる情報が頭に入っていた環境から、まったく新しい顔ぶれの環境に入り仕事をしていかねばなりません。

前職とLIXILとの社風の違いにより、初めは戸惑うこともありました。しかし「とにかく仕事で成果を出し、組織をより良い方向に変えるために役に立とう」という思いが勝り、その思いがモチベーションになりました。新しい環境といっても、人対人のこと。顔を合わせて話し、お互いの仕事を認め合っていくことで関係を築いていきました。

――出産はキャリアのブレーキではなく、ジャンプアップの機会

昨年秋から今春まで、第1子出産のために産休・育休を取りました。初めての取得でしたが、弊社のダイバーシティー担当者が作成した「ままっぷ」というワーキングマザーのキャリア形成サポートツールが大活躍しました。

妊娠から復職後まで、上司とどのようなコミュニケーションが必要か、申請すべき書類は何かなどを整理したマップに基づいてアクションを起こし、スムーズに産休に入り、復職することができました。

出産直後は心身ともに辛く「半年で職場に復帰するのは難しいかも」と思ったこともありましたが、「産むのはあなたしかできないけれど、育てるのは皆でできるから」という母の言葉に助けられました。夫の協力にも支えられ、今では海外出張にも出かけています。

人にはいくつもの役割があるという「ライフロール」の理論の通り、出産によって私には母という役割が増えました。しかし、増えた代わりに何かの役割を手放す必要はなく、人生はもっと欲張りでよいのだと実感しています。働く女性にとって、出産はブレーキではなく、ジャンプアップのための機会。そう思います。

――楽しくてワクワクした人生を送りたい!

かつては「こういうリーダーになりたい」という理想像がありましたが、出産を経て「こう生きていきたい」という、ありたい人間像を描くようになりました。人生は一度きりなので、仕事もプライベートも、楽しくワクワクしていたいと考えています。

そのためには、常に自分で選びとることが不可欠。働き続けるためには、自分がどの部分で貢献できるのか、存在意義を自ら考え、モチベーションの種を自分で見つけるようにしています。

そして、失敗を恐れないことが大切です。私は「あの人に言われたからこうなった」という考え方をしないようにしています。自分で決めて、失敗する。それならば、もし転んでも後悔はしません。

失敗することを恐れるのは、誰でも同じです。人はきれいに整えられた答えを望みがちです。ノウハウはある程度必要ですが、泥臭さや青臭さも必要だと思います。大事なのは仕事に思いをのせること。思いがのっていると自分が楽しいですし、周囲もワクワクします。そういう環境をつくりながら、働き続けていきたいです。

岡田絢美さん(おかだ・あやみ)
LIXIL 組織開発部グループリーダー
信託銀行、電機メーカー、外資系コンサルティング会社を経て、2013年に人事部門の管理職としてLIXILへ。15年から現職。早稲田大学大学院にてMBA(経営学修士)を取得。一児の母。宮崎県生まれ。

●取材後記

霞が関にあるLIXIL本社。窓からは国会議事堂や首相官邸が望めました。取材の席に岡田さんが持ってきてくれたのは、1本のペン。「これは、自分がLIXILの社長になったら就任演説でどんなメッセージを発信するか、というリーダーシップトレーニングの優勝記念品です。社長を目の前に『このたびLIXILグループの社長に就任した岡田絢美です』と語り始めるという面白い経験でした(笑)」。そうそうたるメンバーを前にしても、失敗を恐れず、ワクワクしながら語る岡田さんの姿が目に浮かびます。「仕事に自分の思いをのせる」ことは、どこでも誰でもできること。忘れずに心に留めておきたい言葉です。

LIXILのホームページ http://www.lixil.co.jp

[2016年11月10日公開のクラブニッキィの記事を再構成]

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