味は絶品、価格は庶民派 香箱ガニ、魅惑の内子とミソ
冬到来、カニの季節がやってきた。
カニといえばまずはカニ身を連想するが、子(卵)がおいしいカニがある。香箱ガニだ。
日本海「冬の味覚」の代表選手ズワイガニは、富山より西の各地で11月6日に解禁日を迎えた。石川県の加能ガニ、香箱ガニも同日、解禁されたばかりだ。
加能ガニとはオスのズワイガニのこと。加賀、能登でとれるカニだからこう呼ばれる。
一方、香箱ガニはメスのズワイガニ。鳥取で親ガニ、福井でセイコガニ、京都ではコッペガニと呼ばれるもので、オスにくらべ小さく安価だが、これがきわめて美味なのだ。一度食べれば、小さな身に凝縮された濃厚なコクと旨みにノックアウトされる。
金沢で「香箱ガニ」という名前をはじめて聞いた時「なんて古都らしい雅な名前だろう」と心ときめかせた。だが、実はこの名前の由来は「子をば食う」からきているのだとか。
ほかにも金沢の方言で小さくかわいいものを「こうばく」というから等、由来は諸説あるが、香箱ガニはまさしく「子を食べる」カニなのだ。
お腹に抱いた外子はカニの卵。プチプチシャキシャキの不思議な食感も珍しいが、味わうなら断然内子。甲羅をパカッとあけるとびっしり入ったオレンジ色の内子(未成熟な卵)は絶品。これはオスのズワイガニでは味わえない。
甲羅に内子とミソとカニ足をきれいに盛り付けた甲羅盛を味わえば、幸せをかみしめずにはいられないし、カニ身と内子をまぜたカニ丼を豪快にかきこむもいい。いいダシが出るカニなので「味噌汁にするのが一番」と地元の人は言う。
金沢ではおでんにだってカニを入れる。甲羅にカニ身や内子やカニミソを詰めておでん種にした「かに面」は他の地域ではまずお目にかかれない。
目で愛でて、子をば喰い、ダシを味わい、おでんでも。香箱ガニの解漁期は、12月29日までのわずか2カ月たらず。このチャンスを逃さずに味わおう。
(日本の旅ライター 吉野りり花)
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