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職場がヤバい! 不正に走る普通の人たち

不正に走る「普通の人たち」 会社の数字、安易に汚す 流創株式会社代表取締役 前田康二郎(1)

2017/3/5

PIXTA
 会社の不正は、どのような心理状態、どのような組織体制で発生しやすいのか。また発生したとき、口止めされたとき、強要されそうになったとき、それぞれどのように対応すればよいのか。経理の専門家として数多くの経験を重ねてきた筆者が、不正に走る普通の人たちの実態を具体的に紹介します。

会計不正や粉飾に単独犯はあり得ない

 不正会計、不正経理、粉飾決算……。いろいろな言われ方がありますが、これまでも、今も、そしてこれからも、組織ぐるみの不正は行われ続けることでしょう。

 「会社の売上や利益の数字をいじる」不正に単独犯はあり得るのでしょうか。私の経験からすれば、それはまずないと思います。なぜなら、組織の数字は簡単に不正できない仕組みになっているからです。つまり「共犯者」が必要なのです。組織では、仮に誰かが不正な数字を申請しても、あるいは後から意図的に操作をしても、通常は、社内に二重、三重のチェック機能があります。そのほかにも税理士や、上場企業であれば会計士などの外部のチェックが入ります。

 冷静に考えればわかりますが、一兵卒にすぎない社員が単独で、自分の上司や役員、社長、士業の先生を手のひらの上で転がすようにして騙すことなど絶対に無理。二重、三重のチェックをすり抜けるには、2人以上の「共犯」が必要になります。

 このように「会社の売上や利益の数字をいじる」不正というのは、単独犯でも可能な横領や着服といった「会社のお金を盗む」不正よりもハードルが高くなります。

 たとえば、私がある会社の管理職だとして、架空の3000円の打ち合わせ代の領収書を作って申請したらどうでしょう。3000円程度なら自分で決裁が可能かもしれませんし、社長に提出しても、普段の品行に問題がなければ、信頼関係上、根掘り葉掘り聞かれることなく承認してくれるでしょう。毎月1枚それを繰り返し、1年経てばちょっとしたへそくりにもなることでしょう。

 一方で、もし私が架空の仕訳を入れて会計データを操作したらどうなるでしょうか。会計データは経理部の社員で共有されていますから、売上や利益が突然変わったことに違和感を覚える人が出てきます。そして、税理士や会計士のチェックが入ります。当然、その人たちによって根拠のない仕訳はピックアップされていきます。社長も全体の数字を見ます。「たくさんの目」をかいくぐらないと、会計データ、帳簿の不正というのはできないのです。その全員が「騙される」ということは、通常困難であることがおわかりいただけるでしょう。

 結局、不正事件は、各人のチェックミスで見抜けなかったというよりは、本来はけん制し合うはずの社内外のチェック体制に何らかの事情で調整が入った、と考えるのが自然なのかもしれません。では、何のために、そこまでして不正をしなければならないのでしょうか。

周囲を巻き込む“くだらない”理由

 経理的観点から見れば、会社の決算数値が赤字に転落する、あるいは赤字が何期か続くと、銀行の審査基準が厳しくなり、「借入金などの運転資金が調達できなくなるのでは」という懸念が生じてきます。そのため、粉飾して黒字に見せるというような「会社の存続」「従業員の生活保障」などの現実的な理由が想定されます。

 しかし、昨今の不正会計事件の顛末を見ていると、そのような、会社にとっての死活問題とも言えるような理由が出てこないものもあります。「確かに悪い数字だけれど、普通に開示しても問題なかったのでは?」「なぜわざわざ複雑にいじったのだろう?」という疑問が残るものがあるのです。そして、その代わりに出てくる情報といえば、単なる社内の人間関係や自分の虚栄心のためだけに「会社の数字」をいじった、あるいは自分の手は汚さず他人にいじらせた、というような理由ばかりです。

 「あいつの部署に負けたら出世できない」
 「自分の出身部署の数字がこの程度では困る」
 「自分の代で赤字になど、恥ずかしくてできない」

 本人にとっては人生の一大事かもしれませんが、他人から見ればどうでもいいようなことで多くの社員や取引業者の人生を狂わせ、市場を混乱させる不正を行ったのではないかと思うのです。

 そのような人たちは、「自分は特別な人間だから、それくらいやってもいいのだ」と思っているのでしょうが、実はその反対で、「普通の人間」だから、そのようなことをしてしまったのです。

不正にはまる「普通の人」の思考法

 会社の数字をいじってはいけないということなど、社会人であれば誰でも知っていることです。実力と分相応の環境にいれば、誰もそのようなことはしません。しかし、条件が変わると、「普通の人」と「特別な人」の差が出てくるのです。

 特別な人というのは、有事や緊急の時などに、まず「合法的にこの危機を乗り切れる選択肢はないだろうか」と必死で考えます。一方、普通の人は、「やばい、どうしよう。違法だけど帳簿の数字をいじることくらいしかもう手立てがないだろう」という発想しか持ち合わせていません。違法だとわかっているなら罪の意識があるのではないか、と思うかもしれませんが、「お金を盗む」のに比べ「帳簿の数字をいじる」ということは、現物を盗んでいない分、普通の人には罪の意識が薄くなります。だから、大義のない、利己的な理由で、平気で数字をいじってしまうのです。

 しかし特別な人は違います。会社の数字をいじることが、その会社の商品、サービス、従業員、ブランド......全ての信用を一瞬にして失墜させてしまうことを知っています。特別な人は、一番簡単で一番信用を失う方法などは選択しないのです。

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