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ムチャ振りの技術

なぜ「あの人」は仕事を抱え込むのか 8つの特徴 経営コンサルタント、セレブレイン代表取締役 高城幸司(3)

2017/1/29

PIXTA

現場では優秀だった人が、「使えない人」になる仕組み

 仕事は振るべきと理解していても、世の中には、自分だけで抱え込んでしまう人がたくさんいます。

 「上からどんどんムチャ振りをされて、かなり無理して働いている。けれど、それをどこに振れというんだ。部下も後輩も少ないうえに、彼らだってかなり無理をして働いているんだ」

 長期の不況に苦しんだ日本企業が、従業員の採用をかなり抑えてきたために、このような愚痴をこぼしたくなる人が多いことは理解できます。

 ただし、周囲を見回せば、どんどんと周囲に仕事を振っている人もいます。「でも、下にどんどん仕事を振っているやつらは、部下や後輩から激しく不満を持たれていて、人望がまったくない。そんなマネはしたくない」

 この言い分も間違いありません。仕事を振る人のうちのかなりが「振り下手」で、ムチャなスケジュール、内容で仕事を振って周囲の反感を買っています。ただし、一方でごくわずかとはいえ、「振り上手」がいて、組織全体をうまく回しているのです。

 この連載は、ムチャ振りですらも適切に行える「振り上手」を目指すものですが、それ以前に仕事を抱え込む人は、そもそも「振る」という選択肢自体を持てないでいます。まずは、ここを解決する必要があります。

 先にも簡単に説明したように、仕事を抱え込んでしまう人は、キャリアを積むのが難しくなります。

 「自分の能力の限界まで昇進したものの、その後、その地位では使えない、または無能な存在になる」というピーターの法則があります。

 「いち社員としては優秀だったので管理職に出世したけれど、その地位では使えない人になってしまう」「あの人は課長としてはすごく優秀だったけど、部長になった途端にダメになった」。会社員なら誰もが、よく耳にしますよね。

 つまり現場で有能な人が登用されやすいとして、「現場で必要とされる能力」と「管理をする立場で必要になる能力」とでは大きな違いがあるので、無能な管理者が生まれてしまうのです。

 これが組織全体で連鎖していくと、各階層で優秀な人が出世する→次についたポジションで「使えない人」になる→組織の各階層が「使えない人」だらけになる、という不都合が起きてしまいます。そのため、上のポジションで活躍できる能力を示さない限り、出世させないというのが解決方法の1つになるわけです。

 仕事のレベルが上がれば、それまでのやり方を続けていると、途中で行き詰まることもあるでしょう。ごくシンプルに言うと、現場レベルの仕事は、自分の手を動かすこと、上のレベルの仕事は、人を動かすことです。

 たとえば、引き受けた仕事ができなかったとき、つまり新しく目の前に現れた山に登れなかったときに、「1つ前のレベルの山は登れた」ことに気づきます。こうして初めて、自分が登れる山の高さの限界を知ることができるのです。

 仕事を抱え込む人は、山が高くなれば、登り方そのものを変える必要、つまり仕事を手放す必要があるということに気がついていないため、次のレベルの山も(これまでの働き方で)きっと登れると思いながらも、今の仕事で手一杯なことを理由に実際には登ろうともしていません。

 それでいながら、「今は仕事が詰まっていてできませんが、やらせてもらえればできます」と言われても、そんな人に大きな仕事を任せることなどできません。「本気になったらすごい」と言う人が、本当にできるかどうかは疑問が残るからです。

 そのような人たちには、「それって自分の仕事を『振れ』ということだよ」と言いたくなります。

振れない人には8つの特徴がある

 振る側は、結果や成果を求めますが、どのように進めるかはお任せということが多いでしょう。少し乱暴ではありますが、相手がどのようにやろうと、そのプロセスはどうでもよかったりします。なぜなら、本来的に仕事は結果がすべてだからです。

 振る側がプロセスを見たいと考えるケースが、例外として2パターンあります。

 1つ目は、振られた人がその仕事をできない可能性があると考えるとき。「この仕事、お願いね」と振りつつ、「その都度、進捗を教えて」と言うのは、プロセスを管理しないと不安だから、また育成をしないといけないという思いがあるからです。

 2つ目は、仕事のスパンが長い場合。今日明日の納期であれば、プロセスをチェックする余裕はありませんが、3年がかりのプロジェクトともなれば、さすがに途中経過を見ておきたいものでしょう。

 しかし、これらの条件以外、つまり比較的スパンが短く、この人に振れば大丈夫だと思える仕事であれば、たいていの人は、「じゃ、後はよろしくね」です。「任せた仕事は全部君のところで完結してね」です。

 自分でやろうが、さらに後輩に任せようが、どちらでもいいから、とにかく完結させてくれればいい。つまり「再委託をしてはいけない」という前提条件が含まれているケースというのは、意外と少ないものです。

 もちろん、会社対会社の場合は、コンプライアンス上、「再委託はダメ」というケースもあります。しかし通常は、たとえば会社内での仕事のやり取りだったりすると、任せた仕事が「再委託禁止」になっているケースは少ないでしょう。

 振った人間からすれば、相手が仕事を抱え込んだまま前に進めずにいるのを見ると、「受け取ったボールをもっと誰かに渡せばいいのに」と思うのです。それゆえ、仕事が予定通りに終わらない場合、おそらくこう聞くはずです。

 「なんでできなかったの?」

 こう問われると、振られた側は、「仕事がパンパンで、本当に厳しくて……」など、忙しすぎたことを理由にします。その際、「ああ、そうだったんだあ。それは大変だったね」と同情されるのを期待していることすらあります。

 しかし、振った人間がそんな返答をすることは、まずありません。口にするかどうかはともかく、本音はこうです。

 「だったらそれ、最初に言ってよ」

 「それでも受けたんだから、誰かに任せてでも、うまくまとめてほしかったよ」

 ただし、特に古いタイプの日本企業では、「振る」という行為がネガティブにとらえられるケースもあります。そういう会社では、上司から頼まれた仕事を勝手に同僚や後輩に再委託すると、「なんと無責任なやつだ、なんて勝手なやつだ」と思われてしまうリスクもあるでしょう。

 さらに、作業的な仕事、それ以上は細分化できないような仕事(すぐ後に説明します)は、ピンポイントで「お前、やれ」と依頼している場合もあって、それを他人に丸投げすると、怒られることもあるでしょう。

 そういうわけで、自分の周囲がどういう空気か、上司がどういう性格の人物か、どういう仕事かなどについては、注意を必要とするのですが、理由を正しく説明して「振る」ことをきちんと報告しておけば、おそらく問題はないでしょう。

 フルーツメールが2008年に実施した「部下に求めることランキング」でも、「ホウレンソウ(報告・連絡・相談)をきちんとする」が全体の18.1%で1位となっています。

 仕事を振る側からすれば、「振れない人」に振ってしまうと、仕事が回らなくなる危険性が生じます。

 そして、たいへん厄介なことに、振れるタイプか振れないタイプかは、パッと見ではなかなかわからないものです。

 しかし、経験を積み上げていくと、「この人は抱え込むタイプだな」「振るのが下手なタイプってこういう人かも」というのが徐々にわかってくるようになります。それは見た目や性格ではなく、仕事に対する取り組み方、考え方の中に込められていることが多いものです。

 振る立場の人は、普段から相手の仕事ぶりをよく観察しておくといいでしょう。特に、次に挙げる8つのタイプの人物は要注意です。仕事を抱え込み、パンクする可能性を見越したほうがよさそうです。

1.仕事の切り出し(分解)ができない
2.ゴールを決めていない
3.断られる恐怖にとらわれている
4.単純化できない
5.他人に手柄を取られたくない
6.忙しい状態の自分に酔っている
7.コントロールフリーク
8.人に借りをつくりたくない

 いかがでしょうか。思い当たる節があるのではないでしょうか

◇   ◇   ◇

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高城幸司(たかぎ・こうじ)
経営コンサルタント。セレブレイン代表取締役。1964年東京生まれ。86年同志社大学卒業後、リクルートに入社。6年連続トップセールスに輝き、伝説の営業マンとして社内外から注目される。起業・独立の情報誌「アントレ」を創刊して編集長を務めたのち独立。現在は人事コンサルティング会社セレブレインをはじめ、3つの会社を経営する。

[この記事は2014年7月22日の日経Bizアカデミーに掲載したものです]

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