現場では優秀だった人が、「使えない人」になる仕組み
仕事は振るべきと理解していても、世の中には、自分だけで抱え込んでしまう人がたくさんいます。
「上からどんどんムチャ振りをされて、かなり無理して働いている。けれど、それをどこに振れというんだ。部下も後輩も少ないうえに、彼らだってかなり無理をして働いているんだ」
長期の不況に苦しんだ日本企業が、従業員の採用をかなり抑えてきたために、このような愚痴をこぼしたくなる人が多いことは理解できます。
ただし、周囲を見回せば、どんどんと周囲に仕事を振っている人もいます。「でも、下にどんどん仕事を振っているやつらは、部下や後輩から激しく不満を持たれていて、人望がまったくない。そんなマネはしたくない」
この言い分も間違いありません。仕事を振る人のうちのかなりが「振り下手」で、ムチャなスケジュール、内容で仕事を振って周囲の反感を買っています。ただし、一方でごくわずかとはいえ、「振り上手」がいて、組織全体をうまく回しているのです。
この連載は、ムチャ振りですらも適切に行える「振り上手」を目指すものですが、それ以前に仕事を抱え込む人は、そもそも「振る」という選択肢自体を持てないでいます。まずは、ここを解決する必要があります。
先にも簡単に説明したように、仕事を抱え込んでしまう人は、キャリアを積むのが難しくなります。
「自分の能力の限界まで昇進したものの、その後、その地位では使えない、または無能な存在になる」というピーターの法則があります。
「いち社員としては優秀だったので管理職に出世したけれど、その地位では使えない人になってしまう」「あの人は課長としてはすごく優秀だったけど、部長になった途端にダメになった」。会社員なら誰もが、よく耳にしますよね。
つまり現場で有能な人が登用されやすいとして、「現場で必要とされる能力」と「管理をする立場で必要になる能力」とでは大きな違いがあるので、無能な管理者が生まれてしまうのです。